ケーススタディ
2004/02/23 21:46:00 更新


ヨーロッパの動物感染症対策にRFID、家畜識別を電子化

EUは動物感染症の頻発に対応し、欧州産食肉製品の安全性と品質標準を守るため、新たな方針を示している。動物感染症対策にRFIDがますます利用されそうだ。

 欧州連合(EU)は動物感染症の頻発に対応し、欧州産食肉製品の安全性と品質標準を守るため、新たな方針を示している。これに伴い、欧州閣僚理事会は、RFID(無線周波数識別)を利用して、羊やヤギを電子識別し、登録するシステムを導入する法律を採択した。

 ロイヤルフィリップスエレクトロニクスの半導体部門は、スペインやイタリアで試験プロジェクトを実施し、動物の追跡管理へのRFID技術の応用にすでに成功している。

 現在、BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)、FMD(口蹄疫)、スクレイピー(羊の伝染性海綿状脳症)など、家畜における動物感染症が発生しているため、食肉製品への消費者の関心が高まっており、食肉の出所や品質に関する懸念が高まっている。

 このため、動物に関する必要なデータを記録する電子動物追跡管理が、識別ソリューション市場で急激に拡大しつつある。RFIDチップは特に有望な市場と見込まれているという。

 動物のRFID標準「ISO 11784/85」は既に広く普及している。2002年4月に完了したIDEA(International Institute for Democracy and Electoral Assistance:国際民主化選挙支援機構)のRFID動物追跡実験を受けて、欧州閣僚理事会では2003年末、RFID技術を利用して、ヨーロッパ全域で個別の電子タグを羊やヤギに付けることを要求する法律が採択された。

 同法律に基づき、羊やヤギの頭数が60万頭を超える加盟各国では、ISO標準11784/85に準拠するICタグの付与が任意で実施されており、移行期間を経た2008年1月1日以降は義務付けられる。カナダでも2005年1月1日から電子タグが義務付けられるという。また、最近BSEが発生した米国も、動物への電子タグ埋め込みを義務付けることを検討中だ。

 例えば、スペインフィリップス セミコンダクターズが開発したHITAG S ICは、読み取り可能な距離が長く、変調深度が高いため、大量の電子雑音や障害に耐えることができる。

 2003年春には、スペインの畜産農家の団体であるFEVEXが、HITAG Sを利用した新しい牛の追跡システムを提案した。同システムでは、化学物質や湿度に強い22mm×4mm幅のガラスチューブにICを収め、それを牛の蹄のすぐ上に注入する。

 電子識別は、地下に埋め込まれた読み取りアンテナを通して、ゲートや入口など牧場や畜舎内の都合のよい場所で行う。

[ITmedia]

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