特集
2004/03/16 15:38 更新

第七回
なぜSharePoint Portal Server 2003を導入するのか(後編) (1/2)

Microsoft Office SharePoint Portal Server 2003(SPS)によってもたらされる、高度な社内の情報活用シーン。今回は、「情報の共有」という側面から、SPSの活用シーンを考えてみる。

 「なぜSPSを導入するのか」と題された後編の今回は、SPSが企業内に散在する情報や知識をいかに効率よく共有し活用するかを紹介する。必要な情報を関係者全員に伝達し共有するということは、円滑な作業進行のためにビジネスの現場では必要不可欠である。と同時に、それは最終目的ではない。メンバーが、与えられた情報をもとにして本来の業務を遂行するための一つの手段と言えよう。それだけに、「共有する」ことに手間や時間を費やし、業務に支障をきたすわけにはいかない。

 企業には大勢の人間が存在し、さまざまな業務を行っている。複数の人間がかかわる業務では、会議を開催したり、決定事項の周知をこまめに行うことが欠かせない。

 企画書やマーケティング資料などの各種ドキュメント、関係者に伝えるべき情報など通達するためには、これまではファイルサーバなど共有のエリアに格納し、格納したことを全員に通知するといった方法が取られていたのではないだろうか。つまり、発信者はパブリックな場に情報を展開し、受信したユーザーがメールの内容を読み、サーバにアクセスして初めて情報が伝わるのだ。言い換えると、受信側の能動的な行動を待たなければならず、「この受信者にこの情報を知ってもらう」という要求が叶えられるかどうかは、受信者次第なのだ。

 さらに言えば、社内のあらゆる場所から集められる情報は、やみくもに全員に配信すればよいというものではない。例えば、新技術についての詳細情報は、技術部門の人間が見ることでより意味を持つようになる。市場の動向についての最新レポートは、営業部門やマーケティング部の担当者が必要とするだろうし、また経営陣にとっても重要な情報であるだろう。

 情報を受け取る側のユーザーにとっても、手元に届く膨大な情報のうち、どれが自分にとって有用な情報なのか判断するためには一度自分で目を通し、その上で初めて必要かそうでないかを見極めなければならない。それでは業務の効率を低下させかねないだけでなく、本当に必要な情報を見逃す危険性も否定できない。

「対象ユーザー」で情報発信を最適化

 情報というものは、適材適所に配信されることで、初めて有効活用が可能となるのだ。それは、「対象ユーザー」というSPSの新機能によって実現できる。

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画面1■全社員が閲覧したポータルページ。


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画面2■役員が閲覧したポータルページ。全社員用のページと比較すると、製品の売上状況を図示するグラフのWebパーツが追加されている。


 対象ユーザーとは、SPSのポータルページ上に展開されるコンテンツの配布先として登録する、ユーザーのリストだ。このリストは、Active Directoryを活用した既存の配布リストやセキュリティグループ、ユーザープロファイルの情報などに基づいて、ユーザーを抽出するためのルールを設定することで作成される。

 さらに、作成したルールを組み合わせることも可能なので、きめ細かなプッシュ型の情報配信を実現できる。

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画面3■対象ユーザーを指定することで、コンテンツの配信を行うべきユーザーを決定できる。さまざまなユーザープロファイルを組み合わせて、対象ユーザーを作成する。


 対象ユーザーは、作成後コンパイルという作業をすることで初めて有効となる。コンパイルの実行は、スケジュールを設定して定期的、自動的に行えるので、例えばActive Directoryからスキーマ情報のインポートを行った後に対象ユーザーのコンパイルを自動的に行う、というようにスケジューリングしておくことで、常に情報の整合性を保つことができる。

 上の画面のように、Webパーツ単位、エリア単位、またアイテム単位でそれぞれ対象ユーザーの設定は可能だ。特定の分野の社外ニュースや、会社の経営に関する重大な情報を、特定の人やグループだけに提供するといった柔軟な使い方ができる。

 さらに、対象ユーザーに向けたコンテンツに対して行われた変更は、各ユーザーの個人用サイトに通知される。情報を送信して終わり、ではなく、きめ細かいフォローアップの機能も用意されているのだ。

 必要な情報を、必要とする人に提供する。対象ユーザーの機能を利用すると、情報を発信する側にとっては配信する対象を自ら決定できるというメリットがある。しかも、操作は通常のコンテンツ追加の操作に加えて、対象ユーザーを選択するというワンアクションが加わるだけなので、特別なトレーニングも要しない。情報の配信者は、いつも通りの操作を行う延長上で、ストレスなく対象ユーザーの機能を使いこなせるのだ。

 一方、情報を受け取る側からすると、ポータルページに表示された情報は、確実に自分に対して向けられたものである。重要な情報は取りこぼされることなく、配信するべきユーザーに伝えられるであろう。

 ポータルページ上のコンテンツに対象ユーザーの機能を利用することで得られるメリットは、これだけではない。情報を閲覧できるユーザーを絞り込むことは、同時に配信するべきでないユーザーから情報を守ることにもつながる。SPSは情報の発信側、受信側双方のユーザーの利便性を損なうことなく、セキュアなサイトを構築し、高度な機密保持までをも実現するのである。

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[佐々木 優美子,ITmedia]

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