ケーススタディ
2004/03/16 19:16 更新


「地球規模企業」ソニーを支える情報システムはハブ&スポーク型

ガートナージャパンは企業システムにおける課題の1つとなっているアプリケーション統合について提言するカンファレンス「Application Integration And Web Services 2004」を都内で開催した

 ガートナージャパンは3月16日から2日間、企業システムにおける課題の1つとなっているアプリケーション統合について提言するカンファレンス「Application Integration And Web Services 2004」を都内で開催した。

 初日のゲスト基調講演として、ソニーグローバルソリューションズのプロジェクトマネジメント事業部ディレクター、大野豊氏が講演、全世界的にビジネスを展開するソニーが、アプリケーション統合にどう取り組んでいるかについて説明した。

 講演の冒頭、大野氏は「企業の競争力改善にITがどう貢献できるかがテーマ」と話す。

 ご存知の通り、ソニーのビジネスは時代の歩みとともに変化を遂げてきている。象徴的商品を挙げると、1968年のトリニトロン、1975年のベータマックス、1979年のウォークマン、1990年代には、バイオ、プレイステーションとなり、変遷がうかがえる。同社はソニーグループの成長の軌跡を、「志」「技」「創」「拡」の4つのキーワードを用いて説明した。

 2002年の売上高が連結ベースで7兆5000億円、従業員は16万人という巨大企業ながら、日本、欧州、米国での売上高はほぼ同比率。バランスの取れた本当の意味でのグローバル企業と言ってもいい。

サプライチェーンの変遷

 メーカーであるソニーにとって、ビジネスの変化は必ずと言っていいほど工場に反映される。その意味で、生産体制を定義するサプライチェーンシステムが、ビジネス成功への生命線と言っていい。

 グローバル企業として文字通り、地球全体に製造拠点を持つ同社。タイ、マレーシア、中国といったアジア地区、ブラジルや米国などのアメリカ大陸、さらに欧州と分散する生産拠点は、それぞれが独立して運用されているわけではない。ヘッドクオーターである日本を中心に、製品の生産は情報システムによって制御されている。

 90年代のソニーのサプライチェーンの特徴は、月次だった製販サイクルが週次へと改善されたこと。だが、対象となる製品はビデオなどに限定され、「チェーン」に関わるのはソニーのグループ企業までに留まっていた。基本的なアーキテクチャはレガシーシステムで、週次バッチを基本としていた。

 一方、大野氏は、2000年以降のシステムのあり方について、「顧客やサプライヤーとB2B連携した上での日次オペレーションの実践」と話す。

 また、サプライチェーンシステムとして、主要製品すべてをカバーし、日次で処理していく。ソニーに限らず、小売店なども含めて連携しあうサプライチェーンシステムは、ERPやオープン系ソフトウェアおよびハードウェア、Webなどで構成される。

 一般に、サプライチェーンシステム上で製品を生産する場合、過去データなどを考慮した上で需要予測を行い、必要な生産台数の算出と既存在庫とのすり合わせなどを済ませた上で、工場などに対して生産計画を渡す。工場は、計画で指示された数量の製品を決められた期日までに生産していく。当然、作り過ぎても足りなくても良くないわけだが、計画が最適ならば、ソニー全体として、保有在庫を削減することができる。

 そして、こうした需要予測や生産計画は、サイクルが短い方が精度が上がることは言うまでもない。一般に、月次、週次とサイクルが設定されてきたサプライチェーンだが、現在は多くの企業が日次オペレーションの実現へと向かっている。

ビジネスは複雑でもITはシンプルに

 「ビジネスは変革を続ける。でもこれを支えるITはシンプルであるべき」(大野氏)

 複雑化するソニーのビジネスを支える情報システムとして求められたのは、スピード経営、グローバル経営をサポートすること。そして、コストダウンやセキュリティの強化はもちろん、BPRも当然求められていた。

 その結果、採用されたのは、ハブ&スポーク型のシステムだ。一般に、ハブ&スポークシステムでは、部門などで分かれる複数のシステムを相互接続するために、各システム間でそれぞれインタフェースを持つのではなく、ハブを利用する。

 このため、従来の方法ならばn:nのインタフェースが必要だったものが、n:1で済むようになる。つまり、各システムは、ハブへの1本のインタフェースを持つだけで、システム全体と連携できる。これは丁度、航空会社の路線図と似ている。

ハブ&スポークのメリットとデメリット

 システムやアプリケーションをハブ&スポーク型で統合することによるメリットは多い。

 まず、インタフェースの数がずっと少なくなることによるコストの削減効果がある。より安く、より早く、よりシンプルにシステムを統合できる。

 また、システム的な変更はハブの部分にのみ反映すればいいため、管理および機能を集約できる。そのほか、ハブが異なるプロトコルなどを吸収することで異種システムを接続しやすい、データのディレード転送機能などによりビジネスに求められる俊敏性などにも対応することができるなども挙げられる。

 だが、大野氏は「ハブ&スポークは決してメリットばかりではない」と釘を刺した。それは、ソニーのグローバルなビジネスを支えるシステムが、ハブに集約されるようになるため、そこが「超ミッションクリティカル」になることだという。

 同様に、パフォーマンスの悪化なども、会社としてのビジネスに広く影響が及ぶ可能性があるため、非常に気を使っているという。また、8000に上るインタフェースをしっかりサポートすることも言うまでもなく重要としている。

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[怒賀新也,ITmedia]

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