インタビュー
2004/03/19 21:49 更新
Interview:
レジを通らなくていいデパート、Sybaseの情報管理技術がベースに
Sybaseの上級副社長で、ワールドワイドフィールドオペレーションズのトーマス・フォルク氏に話を聞いた。ソフトウェアベンダーは、データソースやOSの種類や、格納場所といった違いを吸収するレイヤーを設けるといったシステム的な対応を提案するケースが多く見られる
企業の情報システムでは現在、ユーザーが必要なデータに、時間や場所、端末に関わらずアクセスできる仕事環境をいかに提供し、労働生産性の向上を図るかがテーマとなっている。それを実現するために、ソフトウェアベンダーは、データソースやOSの種類や、格納場所といった違いを吸収するレイヤーを設けるといったシステム的な対応を提案するケースが多く見られる。
米Sybaseも2003年の終わりに、「Unwired Enterprise」を発表、企業システムをフロントエンドから基幹システムまで、ワイヤレスで連携させることで、企業の業務の効率化を促していく。
来日した米Sybaseの上級副社長で、ワールドワイドフィールドオペレーションズのトーマス・フォルク氏に話を聞いた。
HP出身というフォルク氏。「HPでソフトウェアとハードウェアを理解した上でSybaseに来られたことは良かった」と振り返った。
ITmedia Unwired Enterpriseについて、改めて意図などを教えてください。
フォルク Sybaseは、ユーザー企業に対して「情報管理」をもう一度提供しなおしたいと考えています。それは、Wiredであるオンラインユーザーと、モバイルユーザーの両方をつなげたところに成り立つものです。どこでも、どんな端末からでも、データにアクセスできる企業情報管理インフラを提供します。ユーザーは、統合された情報インフラ上で柔軟に情報を共有し、ビジネス上の意思決定に利用していくわけです。
たとえ、ユーザーが企業内にいたとしても、携帯端末などを持ったモバイルユーザーである場面はあります。こうした場面でも、Replication Serverなどを利用して、柔軟にデータにアクセスできる環境を整えなくてはなりません。情報の流動性を強化しなくてはならないのです。Sybaseはこれを「Information Liqudity」として、提唱してきました。
ITmedia Sybaseと言えばリレーショナル・データベース(RDBMS)というイメージがかつてはありました。Unwired Enterpriseを推進する一方、SybaseはRDBMSから身を引こうとしていると考えてよいでしょうか。
フォルク RDBMSは企業の情報管理ソリューションの中で鍵となる1つです。Sybaseとしては、今後もこの分野で製品の提供を続けて行きます。決して「リレーショナルデータベース離れ」という方向に進んでいるわけではありません。
ITmedia ユーザーの視点から見た場合、米国では、企業はどのような問題を抱えていますか。また、Sybaseとして、どのような解決方法を提案しますか。
フォルク Information Managementについて、ユーザーが抱える問題は日米特別な違いはありません。特に最近は、毎年たくさんのデータが増加している状況です。そして、そうしたデータの95%は、ビジネスに使われていないと言われています。
小売り、サービス、セールスといった業種において、モバイルユーザーがオンラインユーザーと同じように情報にアクセスできるような状況を作ることをSybaseとして推進していきます。
プラットフォームを隠蔽した情報管理基盤
現在、Sybaseはモバイルデータベース市場で70%を超えるシェアを獲得しています。これは、異機種混在環境への対応力が強いというわれわれの製品の特徴があっての結果です。ユーザーは、既存のデータを利用したまま情報を共有するシステムを構築できることで、これまでの投資を無駄にしなくて済むのです。
これは、Sybaseの戦略の最も重要なポイントと関連しています。われわれは、モバイルデータベースにおけるプラットフォームの違いを隠蔽し、どのようなソースのデータでも共存し、連携するために、仮想レイヤーのようなイメージの層をユーザーのプラットフォーム上に構築します。これが、Unwired Enterpriseを実践していく上での鍵となるテクノロジーなのです。
ITmedia SAPの中小規模企業向けパッケージ「Business One」がSybaseのデータベース上に実装されると聞きました。今後も、他社ベンダーとの協業は強化していきますか?
フォルク 今後もパートナーとの協業体制は強化します。2月の終わりには、salesforce.comとの提携関係を強化することを発表しました。
CRMサービスを展開するsalesforce.comとSybaseは、Sybase IQとSybase Replication Serverを含むSybaseの技術とsalesforce.comの統合を推進する計画を発表しました。
これにより、salesforce.comのオンデマンドCRMサービスから、Sybase IQの分析エンジンに、リアルタイムの顧客データを取り入れることができます。また、技術の統合により、顧客の行動パターンと分布を分析し、リアルタイムの意思決定を促すことで、ビジネスチャンスを最大限に活かすことができるようになります。また、Sybase Replication Serverの採用により、データ移行の簡素化やデータベースのダウンタイムを低減することができます。
レジを通る必要のないデパート
ITmedia サイベースの今後を示す上で、アピールしたいユーザー事例はありますか。
フォルク 韓国のヒュンダイ・デパートです。販売担当者はそれぞれ、携帯端末を持っており、客はレジに並ばなくても商品を購入できます。また、同じ端末から、販売担当者が在庫情報を入力し、センターサーバのデータを更新したり、過去のデータを参照することもできます。このシステムに、Sybaseの技術が使われているのです。
今後は、RFIDによるロジスティクスの効率性の向上など、新しい技術による変革にも注目しています。
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[聞き手:怒賀新也,ITmedia]
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