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2004/03/29 15:55 更新


ネットワーク側でもスパムメール対策を、オープンウェーブが製品投入

米Openwaveは、エンドユーザー側でのフィルタリングだけに頼るのではなく、ネットワーク側でスパム対策を行うための製品「Openwave Edge Gx」を発表した。

 「今やインターネット上を流れる電子メールのうち55%がスパムであり、全世界で30億ドルもの損失をもたらしている」(米Openwaveのメッセージング製品グループゼネラルマネージャ、リチャード・ウォン氏)。

 同氏が指摘するとおり、スパムメールの量は増加の一途をたどっており、特に米国では深刻な問題となっている。米国の場合、今年1月1日より包括的なスパム対策法「CAN-SPAM法」が施行されたが、残念ながら効力を上げているとは言いがたい。その現状を「これでI "Can" Spam法だ」とウォン氏は指摘する。

 Openwaveではこの問題を解決するために、サービスプロバイダー向けに、ネットワーク側でスパム対策を行うための製品「Openwave Edge Gx」をリリースした。同社はかねてより、キャリア向けのメッセージング製品を提供してきたが、Openwave Edge Gxにはそこで蓄積した技術やノウハウも反映されているという。

オープンウェーブの3氏

左からOpenwaveのウォン氏と日本法人の開発担当松岡氏、営業担当の南氏

 もちろん、既に市場には複数のスパム対策製品が投入されている。最近ではウイルス対策製品やセキュリティゲートウェイが同種の機能を搭載する傾向も顕著になってきた。では、Openwave Edge Gxは何が違うのか。

 ウォン氏によるとこれまでのスパム対策製品は、基本的にエンドユーザー側のフィルタ任せだった。これに対しOpenwave Edge Gxは、「(ネットワーク)エッジでのスパム防止とコンテントフィルタリング、エンドユーザーによるコントロールという、3つの層からなるアーキテクチャを採用し、できるだけ早い段階で不正なメッセージを食い止めるもの」だという。

単純なフィルタリング以外の方法で解決を

 そのためにOpenwage Edge Gxは、いくつかユニークな技術をサポートしていると、同社の日本法人であるオープンウェーブシステムズの松岡信也氏(テクニカルアカウントサービス本部 ディレクター)は言う。その1つが、ビヘイビア(振る舞い)に基づく絞込みだ。「メールの中身や個々の語句ではなく、振る舞いに基づいてスパムと思しきものをふるい落とす。たとえば、あるアドレスから一度に大量のメールを送信しようとしている場合は、その割合によってはコネクションを切断し、スパム送信をブロックする」という。不正な(あるいは偽造された)IPアドレスからの接続を防止することも可能だ。

 もちろん、スパム送信者側も最近ではあの手この手を使って、フィルタリングをかいくぐろうと試みている。その1つに、一定の時間ごとに送信元IPアドレスを変えながら、スパムメールを送りつける手法があるが、Openwaveではその対抗機能として「ターピッティング」と呼ばれる手法を提供する。これは、スパムメールと思しきメールをブロック(リジェクト)する代わりに到達を遅らせる、という技術だ。これには、「本当は有効なメッセージに対する誤検出の影響を抑えるというメリットもある」(ウォン氏)。

 Openwave Edge Gxはまた、スパム送信者がターゲットとなる電子メールアドレスを収集する「ハーベスティング」という手法に対抗するための機能をサポートした。悪質なスパム送信者の場合、受け取り手が「同様のメールを二度と送信してこないように」と断りのメールを送ることによって、かえって、それが生きているメールアドレスであると判断させる材料を与えてしまう。そういった事態を防ぐためにOpenwave Edge Gxは、いわばメールを受け取った「振り」をして送信者をだますことができるという。

 一連のプロアクティブな手法をネットワークのエッジ側で提供することによって、「スパムの8割5分は防げる」(松岡氏)。これに、BrightMailやCloudmarkといったパートナー企業が提供するコンテンツフィルタリング機能(これが、従来のいわゆる“スパム対策製品”だ)と、エンドユーザーが自ら定義するホワイトリスト/ブラックリストを組み合わせることによって、効率的にスパムをブロックする仕組みだ。

 Openwaveではこの製品を、まずサービスプロバイダーなどに提供していく。というのも、「電子メールはユーザーにとって第一のアプリケーション」(ウォン氏)。電子メールサービスの使い勝手が、顧客がISPを選択する大きな理由になるからだ。

 その次には、自社で電子メールシステムを運用する企業にも提供していく計画である。「ISPやキャリア以外に、企業独自のメールサーバでOpenwage Edge Gxを利用してもらうため、マニュアルやユーザーインタフェースの改良といった準備を進めている。また当初は、信頼性を重視してSolarisをサポートするが、ゆくゆくはLinux版も提供する方針だ」(オープンウェーブシステムズの営業本部アカウントマネージャ、南秀治氏)。ただ、価格は要問い合わせとなる。

 今後は、外部からの不正なメールをブロックするだけでなく、内部からの情報漏えいを防ぐための機能を追加する方針で、現在開発を進めている最中という。さらに、企業コンプライアンスの観点から求められる監査・チェック機能もサポートしていく方針だ。これらの機能を通じて、「メッセージセキュリティスイート」を実現していきたいという。

 「昔は仕事では郵便を使っていたが、今ではインターネットの電子メールを利用するようになった。だが残念ながら電子メールには、郵便ほどの信頼性がない。われわれはエッジ向けに高いセキュリティを実現するソリューションを提供することによって、この問題を解決していく」(ウォン氏)。

 また、スパムメールの問題は1社だけ、1国だけで解決できるものではない。それを踏まえてOpenwaveは、スパムをはじめとするメッセージングの不正使用の解決に向けた組織「MAAWG(Messaging Anti-Abuse Working Group)」を結成している。この組織には同社のほか、Bell、IIJなどが設立メンバーとして参加した。MAAWGは今年5月にワシントンで会合を開催し、スパム対策技術について討論する予定だ。またそれに先立ち、日本国内のISP数社がMAAWGに参加する見込みという。

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[高橋睦美,ITmedia]

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