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2004/04/07 16:02 更新


「オープンソースの方が安くつくわけではない」とMS幹部

Microsoftのシェアードソース担当幹部は、オープンソースモデルの有用性を認めつつも、フリーソフトが商用ソフトを駆逐することはないと主張する。(IDG)

 従来型の商業モデルでソフトを販売するMicrosoftは、こと人気が高まっているオープンソース運動に関しては、一部のコミュニティーではみ出し者と見られてきた。だが同社は、自分たちにはオープンソースモデルにおいても居場所があり、オープンソースは必ずしも「Windowsより安い」ということにはならないと主張する。最近のOpen Source Business Conferenceで、Microsoftのシェアードソースプログラム担当マネジャー、ジェイソン・マテュソー氏に共有ソース、Linux、Windowsについて話を聞いた。

――Microsoftのシェアードソースプログラムと、そのオープンソースとの関係について説明し、同プログラムを通じて入手できるコードの例をいくつか挙げてください。

マテュソー氏 当社はWindows 2000/XP、Windows Server 2003のすべてのバージョン、すべてのサービスパック、すべてのβ版を(シェアードソースプログラムを通じて)提供しています。わずか数行ではなく、1億行を優に超えるソフトウェアコードです。純粋に量だけで言えば、おそらく間違いなく、今日の業界において最大規模のソース共有でしょう。「それはソフトが大きすぎるからだ」と言う人もいるでしょうが、当社のソフトは長い時間をかけて後方互換性や技術の成長などに対応しています。その点について議論できることはたくさんありますが、本題からそれるのでやめておきましょう。このプログラムは参照を許可するものです。コードの閲覧はできますが、改変は認められていません。これはオープンソースライセンスではなく、シェアードソースライセンスなのです。ここで主眼となっているのは、利用者がソースコードを手にするということです。

――参照許可というのは、利用者が閲覧にお金を払っていないということですか?

マテュソー氏 そうです。利用者は1セントも払っていません。彼らは既存のサポート契約・サービスを利用し、バイナリ形式のソフトにお金を払っています。ですが、コードの閲覧に関しては利用料はかかりません。当社は2001年5月から、3年間シェアードソースプログラムを実施しています。

――あなたはプレゼンテーションで、ソースコードの改変を望む人はごくわずかだと言いましたが。

マテュソー氏 Linuxユーザーに話を聞いた場合でも、ソースコードの改変はおろか、閲覧を望む人は非常に少ないでしょう。

――オープンソースはMicrosoftへの反逆だと思っていますか?

マテュソー氏 いえ。私としてはオープンソースは、ソフトを書く手段として優れた開発モデルであり、そこから非常に興味深い技術が生まれてきたと考えています。オープンソースモデルには、かなり多くのビジネス戦略が適用されてきたと思います。

――最近あるMicrosoftの殊勲エンジニアから、オープンソースを通してすべてが無料になったら、どうやってソフト産業を成り立たせるのかと聞かれました。その記事が掲載された後、MicrosoftがInternet Explorer(IE)を無料でリリースしていることを指摘するメールが届くようになりました。

マテュソー氏 バイナリをリリースすることとソースをリリースすることは違います。Microsoftだけでなく、ソフト企業は開発者コミュニティーやユーザーコミュニティーを取り込むために、常に技術を無償でリリースしています。ゲームソフトの「DOOM」を覚えていますか? DOOMの提供元は最初の3レベルまでを世界中の希望者に無償で配布し、ほかのゲームをプレイする機会をしのぐほど市場に浸透させ、それから次の7レベルあるいは10レベルに料金を課しました。われわれが何かを無償で提供するのは、コミュニティーを取り込むためです。これはソフト産業の長年の伝統です。オープンソースと比べると、現実に人々は自分のソフトを好きなやり方でライセンスする権利を持ち、またこのビジネスモデルを追求するという選択は、彼らが持つ選択肢の1つなのです。

――最終段階ではどうなるのでしょうか? 誰もがソフトはタダで提供されるものだと思うようになったら、何を売らなくてはならないでしょうか?

マテュソー氏 ソフトはタダではありません。今のLinuxは本当にタダでしょうか? どのソフトに関しても、私がソフトを商用に実装する場合、私が求めるリスク緩和要因が提供されます。ハードとソフトが一緒にテストされたか、関連するサービスパートナーがいるか、後方互換性は組み込まれているか、参照可能な戦略ロードマップはあるか、サービスレベル契約を結べるサポート窓口はあるか、といった要因です。顧客はこうしたビジネス上の要望を持っており、これらの要望は至極もっともなものです。Red Hatは売上高の20%を研究開発にあてていると言っています。ほかのソフト会社も同様です。Microsoftの場合、この割合はおよそ17%です。どうしてそんなことをするのでしょうか? ソフトがタダなら、なぜソフト会社は売上の20%をソフトに還元するのでしょう? それはソフトに付加価値を付けているからです。各社はハードとソフトをテストし、サービスレベル契約のできるサポート窓口を提供しています。これらは、顧客満足度を高めるために必要な投資なのです。もしあなたがRed Hat Advanced Serverと、これらのリスク緩和要因を求めるなら、サーバ1台ごとに料金を払い、監査条項を受け入れることになります。ソースコードの改変はできないでしょう。これはあなたとRed Hatの間の業務契約なのです。

――Red Hatの製品を購入したら、結局Windowsを買った場合よりコストは安くつくのでしょうか?

マテュソー氏 そうではありません。当社が目にした調査ではすべて、実際はそうではなく、当社の方が優れた価値を提供しているという結論が下されています。その理由は、コストを考える――単純な製品価格だけを考えないでください。こうした価格は今や、Red Hatのサーバライセンスモデルとほぼ同等と当社は考えています――場合、実際はTCO(総所有コスト)が大きな額になるからです。ソフトはソリューション全体のコストの3〜5%を占める傾向があります。60〜70%は管理と維持のコストです。Windowsの統合型の革新により、当社は多額のTCOを、競合他社よりも大きく引き下げられると考えています。ですから、Microsoft技術を基盤にしたソフトソリューションでは、関連するコスト全体を抑えることができます。

――ですが、フリーソフトが商用ソフトを駆逐するとは思わないのですか?

マテュソー氏 思いませんね。

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