ZDNet コラム
2004/04/08 23:02 更新

Opinion:
顧客を不快にさせるMSのSoftware Assuranceプラン

いまだに多くの顧客が、MicrosoftのSoftware Assuranceライセンス契約にためらいを見せている。

 Windowsに関連するセキュリティの欠陥が次々と明らかになっているが、Microsoftはそれでもまだ不十分と言わんばかりに、顧客に不快感を与えるとともに顧客の懐を寂しくさせる新たな手段を考えついたようだ。

 今回の問題は、Microsoftの「Software Assurance」プログラムに関するものだ。これは、「Windows Licensing 6.0」の一部を構成する有料プログラムであり、「ユーザーが自動的に新技術にアクセスできるようにし、ソフトウェアを効率的に配備・運用するのに役立つ特典、サポート、ツール、トレーニングを提供するもの」と同社は説明する。

 Microsoftによると、多くの顧客のアップグレードサイクルが短くなっており、このプログラムによって顧客の購入プロセスは簡素化されるという。また、サブスクリプション方式でソフトウェアを販売するというMicrosoftの戦略を補強するものでもあるそうだ。立派な理屈だ。

 だが実際には、このソフトウェアメンテナンス/アップグレードプログラムは、既存のWindowsソフトウェアを最新版にアップグレードするようにという強いプレッシャーを顧客に与えるものなのだ。しかも残された時間はわずかだ。Microsoftの大手顧客との契約で2004年7月までに更新が予定されているものは、該当する契約の3分の1にすぎない。

 締め切りまでに決断をしなかった顧客には、高いアップグレード料金を請求され、製品の値引きが適用されないというペナルティが科せられる。その最大の被害者は、Microsoftのビジネスの中核をなす中小規模の企業だ。ライセンス料の増加に耐えるほどの資金力がないからだ。

 WindowsサーバOSを1年半〜2年(Microsoftの平均的な製品サイクル)ごとにアップグレードする必要があるというユーザーは少ない。ちなみに、筆者の勤務するコンサルティング会社の顧客の多くは、Windows NTあるいはWindows 2000をまだ運用しており、特に不都合を感じていない。Microsoft製以外のメールシステムを運用しているユーザーの場合は、アップグレードの必要はほとんどなく、そうしたいとも思っていない。もちろん、Microsoftのメールサーバ「Exchange」は、特定のOSバージョンに結び付いている。

 ほとんどの企業は、ファイルやプリンタを共有するためにファイルサーバを使用している。Linuxは、Windowsサーバに代わるセキュアで信頼性の高いサーバを無償で提供している。その結果、MicrosoftベースのサーバからLinuxなどのプラットフォームへの乗り換える動きが盛んになっている。

 Windowsサーバソフトウェアに関して言えば、以前とほとんど機能が変わらないOSに追加費用を払わされるというのは納得しにくい。あなたは上司にその理由を説明できるだろうか。

 顧客がSoftware Assuranceプランに躊躇する理由はまだある。Microsoftには、製品アップグレードをサポートするとして費用を徴収しながら、結局アップグレードを実施しなかった前歴があるのだ。同社は「SQL Server」のアップグレード(コードネームはYukon)をサポートするという名目で顧客に費用を請求してきたが、そのアップグレードは2005年に延期されることになった。つまり、顧客は二度払いさせられたわけである(最初のライセンスの費用、今度はアップグレードの権利を得るための費用)。顧客にしてみれば空約束のためにお金を払わされたようなものだ。既にお金を払ってしまった顧客のために、出荷が再び延期されることのないよう願うばかりだ。

 顧客に十分な価値を提供するのであれば、Software Assuranceも結構だ。しかしその約束を果たせないのであれば、顧客はWindows以外の選択肢(例えばLinux)を検討してみようという気になるだろう。現在、Linuxは最も成長著しいOSである。

 3年前、当社にはLinuxサーバは1台しかなく、当社の顧客でLinuxを話題にしていたのは5%にも満たなかった。今日、当社のサーバの3分の1がLinuxで動作しており、当社の顧客の半数が実際の業務でLinuxを運用しているか、Linuxを戦略プランの一部として位置付けている。

 Microsoftの最近の発表によれば、「Longhorn」のコードネームで呼ばれる同社の次世代OSのリリースは2006年以降になる見通しだ。つまり、Windowsの大幅改良版が登場するまでユーザーは、少なくともあと2年待たなければならないということだ。

 別の言い方をすれば、ユーザーにとっては代替プラットフォームを試してみる、あるいは思い切ってWindowsをリプレースするための期間が2年間あるということだ。これは、約束したソフトウェアを提供せず、Microsoftの独占を支持する顧客を不安にさせるようなプランにも悪い影響を与えるだろう。

 だが悪いことばかりではない。今後もWindowsでいくと決めたユーザーは、Microsoftと値引き交渉をする上で武器を手にしたわけである。収入の約4分の1をライセンス料に依存している同社にとって、これは大きな問題だ。

 ユーザーにとって最大の武器が「選択肢」――すなわちWindows専用コンピュータやメンテナンス料という重荷に縛られていないオープンソースのサーバOSを採用するという選択肢である。ユーザーは現在、ライセンス料の値下げを迫るか、Windowsを完全に捨てるかという選択肢を手に入れたのだ。

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[Ian Altman,ITmedia]

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