コラム
2004/04/15 00:03 更新

国内代表者に聞くオープンソースの今:
Sambaの現状と今後の展開:太田俊哉氏コラム

オープンソースから生まれた、Windows系OS互換のファイル/プリント・サーバ機能、およびNTドメイン管理機能を提供するソフト「Samba」は、普及の段階を越え、次の極みへと登ろうとしている。

Linuxチャンネル連載「国内代表者に聞くオープンソースの今」。ここでは、設立から4年が過ぎた日本Sambaユーザ会の代表幹事として活動されている太田俊哉氏にコラムを執筆いただいた。


Sambaとは何か

 Sambaは、*BSDやLinuxなどのUNIX系OSにおいてWindows系OS互換のファイル/プリント・サーバ機能、およびNTドメイン管理機能を提供する、GPLライセンスのフリーソフトウェアである。Sambaでファイルサーバを適切に構築すると、Microsoftのライセンス不要でファイルサーバが運用できるため、NASサーバやネットワーク接続型ハードディスクなどに広く使われている。現在の開発は、SAMBA TEAMによって行なわれている。

日本語版とオリジナル版

 日本におけるSambaは、オリジナル版と日本語版の2つが流通している。これは、オリジナル版は、日本語Windowsが存在する環境では、日本語Windowsマシンとの互換性が低く、一部の日本語処理がうまくいかなかったためである。そのため、日本語を処理するためのパッチが作成された。さらに、日本語環境における種々の問題に対応したり、機能強化するために、オリジナル版に手を加えた日本語版を、日本Sambaユーザ会がリリースするようになった。現在日本語版は、日本Sambaユーザ会を中心としてメンテナンスを行なっている。

オリジナル版の現行バージョン

 現在Sambaは、Windows2000互換を目指している3.0系列がメインストリームである。2004年3月上旬現在、3.0.2aが最新である。1つ前のメジャーバージョンは2.2.8aであるが、これはすでに保守状態になっている。

日本語版の現状:2.2系列について

 現在日本語が正しく処理できるのは、オリジナル版の2.2.8aをベースにしている日本語版である。これは、オリジナル版に、日本語環境での諸問題への対応、バグフィックス、機能強化を行なったものである。たとえば、日本語Windowsでは「π」というファイルがあると、「Π」(ギリシャ文字πの大文字)というファイルを作ることができない。このような日本語処理への追従などをあげることができる。

 一方、オリジナル版では2.2.8a以降の各種バグフィックスがCVS上に存在している。次のバージョンのリリースはまだであるが、CVS上のバグフィックスを取り込んだ次の日本語版を作成するため作業を開始しつつある。

日本語版の現状:3.0系列について

 オリジナル版最新である3.0系列は、2.2系列から大幅に機能が強化され、Windows 2000 server互換を目指している。すでに英語圏のディストリビューションでは広く使われ始めている。しかし、日本語環境では、コード変換の機能が2.2系列と互換がないためいくつかの問題が発生する。さらに、ドキュメント等の翻訳も全然進んでいない。

 しかし、3.0系列は、日本語版を作る予定はない。Samba 3.0 系列ではネットワーク上の文字コードがWindows NT系OSと同じUnicodeベースとなったことなどにより、Samba 2.2時代にあった日本語処理の問題点の多くが解消されている。これを踏まえ、オリジナル版で、日本語環境が正しく処理ができるようにすることに注力する方向で作業を進めているためである。ミラクル・リナックスでもIPAの受託事業として国際化を目指したSambaの改良とドキュメントの翻訳を行なっているが、この成果もオリジナル版にフィードバックすることを目標としている。そのための1ステップとして、国際化対応をした3.0系列のSambaが公開された。このバージョンでは英語版で問題になっている箇所が各所で治っていて、ドキュメントの翻訳もかなり行なわれている。

ユーザ会の予定

 Sambaはすでに広く使われているコンポーネントである。普及という段階は一段落付いたもの、と言えるだろう。書籍や雑誌、Web等にも数多くのリソースがあり、最低限の知識については広く行き渡ってきていると言えるだろう。

 Sambaの普及や開発を目的として、日本Sambaユーザ会を設立して設立して4年が過ぎた。ただ、人的リソース等の問題もあり、なかなかうまく運営できないこともあった。しかし、各所でのセミナーやwebページの維持管理、メーリングリストの運営など、Sambaの普及や日本語版の開発に、一定の成果は出せたと思う。これから先は各種リソースの許す範囲で、webでの情報公開、メーリングリストの維持管理など、普及のための支援を行なっていく予定である。

 さらに、Sambaが広く使われている現状を鑑み、セキュリティインシデントに対する迅速な対応も図っていきたい。残念ながら、Sambaも過去にはセキュリティに問題を起こしたことがある。より安心して利用できるように、各種機関と連携を取りながら、セキュリティ問題に対応していく予定である。Sambaに関する過去のセキュリティ情報については、関連リンクをご覧いただきたい。

開発/サポートの予定

 現行バージョンである3.0系列は、日本語環境への対応に問題があるなど、普及はこれからと言える。この点でのサポートを考えていきたい。前述のようにミラクル・リナックスによる作業が最終段階に入っているが、これをベースに、日本での普及の支援をしていく予定である。

 もちろん最終的な目標は、オリジナル版が真に国際化され、すべての言語環境で問題なく使えるようになることである。そのために、日本からもSamba Teamにメンバーとして参加し、また、本家の開発者向けメーリングリストでも、日本からの要求を行なっている。ただ、やはり言語の壁は厚く、なかなかうまく意志疎通ができない場合もある。Sambaに興味があり、英語が堪能な方のご支援が頂ければ幸いである。

 また、2.2系列も、一般ユーザーだけではなく、組み込み(NAS)機器などを含めて広く使われてきている。こちらの方の保守も引き続き、可能な限り行なっていきたい。

関連リンク
▼日本Sambaユーザ会
▼SAMBA Web Pages
▼SAMBA TNG
▼Sambaにおけるセキュリティ対策
▼Linuxチャンネル

[太田俊哉,ITmedia]

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