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2004/04/18 20:33 更新


日本大学に見る「1CD Linux」の導入事例

日本大学の船橋キャンパスの中にある図書館では、LindowsCD SmileがインストールされたPCが使われている。国内でも初となるLindowsCD Smileの導入の経緯について、日本大学理工学部の伴 周一博士に聞いた

 4月16日、まだ桜が残る日本大学の船橋キャンパスに日本大学理工学部の伴 周一博士(理学)を訪ね、この4月から図書館に導入されたLindowsCD Smileについてその経緯などを聞いた。なお、ライブドアによると、LindowsCD Smileの導入事例は日本大学が初だという。

伴 周一博士

今回話を聞いた伴 周一博士。現在の主な研究テーマは「希土類金属ー遷移金属間化合物およびその水素化物の磁性に関する研究」だという

ITmedia はじめに、伴さんはどのような研究をされているのですか?

 コンピュータとは全く無縁の感がありますが、物理学で、磁石に関係する材料について研究しています。放射線を使って物質の中で電子がどう回っているかなどを調べたりしています。パソコン関係のことは個人的にも非常に好きです。助手時代に新入生向けに開講されているコンピュータリテラシーの科目を手伝ったことで、今でも同じ科目を担当しています。

ITmedia Lindowsのことは以前からよくご存知だったのですか?

 私の同僚に大久保(注:大久保尚紀博士)という人間がいるのですが、この者もコンピュータが非常に好きで、海外でLindowsが発表された時から興味を持っていました。その後、LindowsCDというCD-ROMブートが可能な製品が出て、これならウイルスも心配なくなるんじゃないかと思い、何かに使えないかなと話していました。

ITmedia 今回LindowsCD Smileを導入した経緯について教えてください。

 先ほどお話ししたような流れの中、日本大学理工学部情報教育研究センターの2004-2005年度公募制研究助成金(学内研究助成金)に、「ウイルス無感染LindowsCDコンピュータの学内利用の調査研究」という名目で調査するという趣旨を申請しました。申請を行ったのが去年の終わりごろですね。万が一ポシャったらまわりに迷惑をかけてしまうので、私一人で申請しました(笑)。これは導入におけるノウハウ・学内利用における運営側・利用側の調査を行うことを主とし、これが認められたことで一気に導入の運びとなりました。

ITmedia 実質的な作業は伴さん一人で行うことになったわけですね。ちなみに、助成金はどれくらい出たのですか?

 約100万円ですね。

ITmedia 助成金の使用内訳はどういった感じですか?

 助成金の多くはハードに費やされています。今回は11台(研究室での検証用に1台)導入しています。ハードのスペックはCPUがCerelon/2.40GHz、メモリがDDR400の512Mバイトです。当然ながらHDDは搭載していません。また、ディスプレイは全てTFT液晶です。購入したハードは3月末に現在の場所に設置しました。

学生たち

OSの違いを特に気にせずWebブラウジングを楽しむ学生たち

なぜLindowsは採用されたか?

ITmedia 同じCD-ROMブートが可能なものには、KNOPPIXなどもありますが、こちらは検討されましたか?

 うちの学生の多くはWindowsは使えますが、Linuxは限られた学科の限られた部分でしか使われていないのが現状です。そういった状況で、「Linuxではこうなんだよ」などと説明するのは手間ですので、WindowsとLinuxの中間に位置するようなLindowsのほうが利用の垣根が低くできるのではないかと判断しました。

 Linuxでなければ、Windowsでなければ、またはMacOSでなければといったことは、今回のケースに関しては、あまり意味を持たない気がします。公平に判断できる部分、例えば価格であるとか、特定用途における扱い易さなどで選ぶことが大事です。今回の場合では、図書館における使用が検索を主に考えればよく、機能を限定したコンピュータをできるだけ安価に導入するということが大事な点でした。

ITmedia 先ほど設置されたPCを拝見しましたが、LindowsCD Smileが導入されていますよね? 申請時はLindowsCDで出していたが、設置のタイミングで「LindowsCD Smile」がリリースされたからこちらに変更したということでしょうか?

 そうですね。私が目指していた「無管理、無管制」という観点で考えると、「LindowsCD Smile」でもよかったということです。USBメモリに設定を簡単に退避できる点など、今後の広がりにも期待できる製品だと思います。

ITmedia 導入されている「LindowsCD Smile」は通常のものからカスタマイズしてありました。一見したところ、壁紙の変更のほか、Webブラウザのホームページを学内イントラにしてありますね。あとはチャットのショートカットを削ったくらいでしょうか。これは伴さんが行ったのですか?

 いえ、「LindowsCD Smile」を導入することを決定した段階で、ライブドアにコンタクトを取り、この部分をお願いしました。そのほかの変更点としては、DHCPを使わず、固定IPを振ってあるほか、シャットダウン時にCD-ROMがイジェクトされないようになっています。メールの機能も残していますが、日本大学ではWebベースのメールを利用していますので、こちらも削ってもよいかなとは思いました。

PC

カスタマイズされた「LindowsCD Smile」(クリックで拡大します)

ITmedia 管理側からはどういった意見が寄せられていますか?

 図書館は情報センターからも少し離れていて、専門家もすぐにはこれない立地です。また、不特定多数の学生教職員が使用するPCの管理は非常に難しく、昨今のコンピュータウイルスに対する対策を考えると実務者の苦難は大きなものです。こういった場所には、できるだけ管理の必要のないものが望ましく、その意味では今回導入した製品はそれに合致しているため、非常に好評です。

 また、世ではLinuxを巧みに使える人ばかりではなく、普通のところで普通に使う、コンピュータが必要です。その点で、家電感覚の導入・管理ができるLindowsCD Smileは非常に優れていると思います。何しろ、何も考えずに電源ボタンを押して電源を切れるんですからね。

学生はOSを気にしない

ITmedia 設置されたPCの横には使用感などに関するアンケート用紙が設置してありますね。学生からはどんな声が出ていますか?

 面白がっている学生も一部にはいますが、何だかよく分かっていない学生がほとんどですね。面白がっている学生というのはある程度知識があり、システム的なことを質問してきたりします。分からない学生は「これでいい」という感じの声が多いですね。これは大事な点だと思います。OSが何であるかはそれほど意識していないということですから。

 自分の好きなソフト、例えばCADのソフトをインストールできない、といった意見もありましたね。Jw_cadやOpenOffice.orgなど、学生が利用しそうなソフトを入れたカスタマイズ版の「LindowsDVD」などをライブドアにお願いしてみる価値がありそうですね。

ITmedia セキュリティに関してですが、実は今日、私は特に入館証なども申請せず図書館に入り、PCを勝手に使っていました。ログインせずとも使えてしまうこの状態は、誰が使っているか分からないという点で意味非常に危険だと思いますが、この点はどうお考えですか?

 確かに、この図書館はプロキシなどを介さず、直接外部に出ることができるネットワークになっています。各教室に引かれているネットワークは外部に出るときにIDとパスワードを入力するシステムになっています。将来的には、このネットワークと統合させることで、学内ネットワークの外に被害を及ぼすような行為は防げるでしょうね。

ITmedia 今後の展開は何か考えておられますか?

 各個人のデータをUSBメモリ側に持たせ、それを読み込んで各サービスを利用可能にできればと考えています。大学が提供するのはいわゆる「ガワ」だけで、個人情報の管理は個人に委ねるという流れになるのではないでしょうか。



関連リンク
▼日本大学理工学部
▼ライブドア

[西尾泰三,ITmedia]

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