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2004/04/19 12:29 更新


目には目を、スパムにはスパムを……?

迷惑なスパムに気の利いた返信で仕返ししているサイト運営者がいる。この人物の返信をまとめた書籍が発行されるのだが、タダで読めるものに金を払うのか疑問視する向きも。(IDG)

 これまでにスパム業者に仕返しの返事を書いて、困らせてやろうと思ったことはないだろうか? うそみたいな投機のチャンスについて詳しく尋ねたり、本当は身体のどの部分が大きすぎる(あるいは小さすぎる)のか訂正してやったり、バイアグラなんて必要ないと説明したいと気持ちになったことはないだろうか?

 ジョナサン・ランド氏はこうしたスパムに返信を書き、それを自分の運営するspamletters.comに掲載している。5月にはランド氏の文書をまとめた書籍「Spam Letters」が、No Starch Pressから15ドルで発行される。

 この本の報道資料で「洗練された言葉の魔術師」として紹介されたランド氏は、2000年11月にこのサイトを立ち上げた。現在ではランド氏の返信を添えたスパムの例が200以上掲載されており、1日の平均アクセス数は2000〜2500に上る。

スパム送信者への返信

 返信はおかしな内容のものが多く、長くて退屈な文章からおちゃらけたものまでさまざまだ。例えば口笛を吹くと光るキーチェーンの広告(“もう決して鍵をなくさない”)には、ずっと優れた活用案を提案している。「どうして貴社が特定の言葉に反応する小型デバイスを作れないのかを理解できない。例えば『靴下!』と言えば、だだっ広い家の中でも靴下がセットで見つかるとか。『トランプのセット!』と呼べば、カードが1枚なくなって、トランプが使えなくなることは二度とない。(もちろん)自宅で夕食会を開けば、たちまち安っぽいダンスパーティか、湾岸戦争時のバグダッドへの夜間侵攻の映像のようになってしまうが」

 一番おもしろいメールは、たいてい身体の一部を大きくしたり小さくしたりする商品を扱うスパム業者に向けて返信したもので、ここには載せられない類のユーモアがちりばめられている。

 ランド氏は実際にこうしたスパムに返信しているが、ほとんどのスパムは返信先のアドレスが偽物か、ほかのアドレスになりすましている。

 「大半は無効なアドレスだ。実在の人のところまで届くかどうかを考えた上で、攻撃する相手を選び出している」と同氏。

 実際にメールが届いた相手の中には、ナイジェリア外交官と称して、「あなただけが頼り」と隠し資金回収の手助けを求めてくる人物もいる。ランド氏によると、こうしたスパム業者は合法的な取引関係にあると思わせようとして、実在のアドレスを使い、「ほぼ全員に返信する」という。同氏のサイトには、次第に困惑を見せるナイジェリア人(あるいは偽ナイジェリア人)とのビジネス上のやり取りが長々と掲載されている。

 ここ最近のスパムは返信アドレスが本物であることが多いが、そのアドレスは他人になりすましたものだ。そのアドレスの実際の所有者は、スパム業者の新たな犠牲者にされている。ランド氏は、こうした人たちからは一度も返信をもらっていないと話す。恐らく同氏の返信もスパムなのだと考えて、削除しているだけなのだろう。

Webページを書籍化して売れるのか?

 いくらサイト上のコンテンツが面白いといっても、この書籍には「既に無料で読めるものになぜ金を払うのか?」という自明の疑問が残る。

 多くの人にとっては、座ってくつろぎながら紙で読めるようになる。そしてこの書籍は編集がうまい。

 「私のサイトを探索するには、長い時間がかかるだろう。コンピュータ上でやることがたくさんあると、私はしまいには嫌になってしまう」とランド氏は述べ、さらに「本はサイトよりもずっと素晴らしい形態だ」と付け加えた。

 約100通(オンラインにある返信の半分)の選定に当たって、書籍編集者は熟読するのに適した文章を選ぶのに作業の大半を費やした。そしてNo Starchの編集が加わったことで、同氏の文章の質が向上したことをランド氏は認めている。

 この書籍には、Webサイトには載っていないスパム対策のアドバイスも含まれている。

 ランド氏によると、「まさしく基本的な」内容だが、同氏が守っているとはとても言えないような助言が1つ含まれている――「スパムには絶対に返信するな」

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