コラム
2004/04/23 19:55 更新

国内代表者に聞くオープンソースの今:
Tomcat、Antなどを抱えるJa-Jakartaプロジェクト、田中良浩氏コラム

Javaに関わるソフトを多数抱えるJa-Jakartaプロジェクト。翻訳を機に設立された同プロジェクトは、エンタープライズ用途の製品を中心に扱い、ますます業界への影響力を高めている。

Linuxチャンネル連載「国内代表者に聞くオープンソースの今」。ここでは、Tomcat、AntなどJavaに関わる多数のプロジェクトを抱える「Ja-Jakartaプロジェクト」で活躍されている田中良浩氏にコラムを執筆いただいた。

Ja-Jakartaプロジェクト始動のきっかけ

 ネットワークとの親和性の高さを強みとしてインターネットの隆盛と共に発展してきたJavaは、まさに「ネットの申し子」であると言える。そして、もうひとつの特徴であるマルチプラットフォーム性と相まって、オープンソースの世界における地位も着実に前進させているともいえるだろう。

このJavaによって開発されたオープンソースの標準ともいえる製品を数多く輩出している「Apache Jakarta プロジェクト」の日本開発者とユーザーの集まりが「Ja-Jakarta(ジェーエージャカルタ)プロジェクト」である。われわれ「Ja-Jakartaプロジェクト」は、いずれの企業や組織にもまったく所属することのない完全に独立した非営利団体として活動している。

 初期(2000年)の活動は、Tomcat 3の英文マニュアルを日本語に翻訳するメーリングリストであった。当時、日本の各所で日本語化が行われていたが、それらの人的資源を統一しようという動きが発端となりプロジェクトが始動した。

Jakarta製品の国際化を支える

 Jakartaプロジェクトの製品は、今やJavaによるシステム構築にとって無くてはならない存在になっている。プロジェクト成立当初のTomcatは国際化対応が不十分であり、日本語環境における動作にも支障があった。そのためマニュアルの翻訳を行う一方で、サーブレットAPI仕様の国際化対応を求めたり、Tomcatのソースコードを国際化してJakartaプロジェクトにフィードバックする作業へと発展させる必要があった。対象製品をさらに拡大し、現在に至っている。そして現在の主な活動は、次の通りとなっている。

1. Jakarta製品マニュアルの翻訳

2. Jakarta製品の国際化

3. Jakarta製品の日本語化

4. Jakarta製品の日本における普及促進

5. 翻訳支援ソフトウェアの開発とシステム化

 また、翻訳作業や国際化作業が特に活発に行われているのは、次の製品だ。

a. Tomcat5.0

b. Velocity1.3.1

c. Ant1.6.1

d. Turbine2.1

e. JMeter2.0

f. Struts1.1

g. Commons

 日本におけるほかの多くのオープンソースコミュニティがそうであるように、Ja-Jakartaプロジェクトも「本家」(Apache Jakarta プロジェクト)の下部組織ではないが、上記活動のうち「2.」と「3.」の成果は本家に直接フィードバックするようにしている。ASCII圏のJakarta開発者にとって国際化の作業はとても骨が折れるようであり、これを促進させるためにはやはり非ASCII圏の力が不可欠である。

 製品の日本語化を独自に行って日本版パッチとして配布しているケースも他では見られるが、ソースコードとメッセージリソースを改版した場合はすべての成果物を取り込んでもらうよう本家に働きかけている。全世界の開発者、利用者が共有できる形にすることを我々は目標としている。この方針は、国、言語ごとに派生した製品が出回ることを防ぎ、国際化の技術や知識そのものを世界の開発者と共有することも促進するものだ。国際化を最初から意識して言語自体が作られているJavaだからこそ、この方針による成果は大きいものになっている。

翻訳を支援するツールの拡充

 我々の活動のもうひとつの特徴として、翻訳を支援するソフトウェアツールの整備も行おうとしていることが挙げられる。

 Javaでは、決められた規則に則ったコメントをソースコードに記述しておくことで、使用法を解説したHTMLファイルをそのソースコードを基に出力することが可能である(JavaDoc)。この機能を利用し、ソースコード上の英語コメントを削除することなく日本語訳コメントを追加し、そのソースコードを基に、「英語のみ」「日本語のみ」「日英併記」という3通りのJavaDocを出力できるようなツールを独自に作成している。

 校正段階においてこの機能を利用することで、日本語訳の品質向上と校正作業の効率化を図っているのだ。

 またソースコードのみならず、XML文書として作成されたマニュアルも原文、訳文併記の形に翻訳し、XSLTを使ってHTMLファイルに変換することで、やはり3通りの出力を可能としている。

 これら翻訳支援ツールの開発自体を近々プロジェクト化して日本の開発者たちと共有し、現時点のツールが持つ課題の克服や新機能の追加を行っていくことも計画している。

学術界への働きかけ

 このような活動拠点がインターネットであることは言うまでもないが、日本中に散在する開発者たちと分散、協業するため、自身のDebian GNU/Linuxサーバを持ち、メーリングリストはもちろんのこと、Apache HTTPサーバ、CVS、OpenSSH、Tomcatなどを駆使して翻訳、開発の効率化を図っている。

 これらの分散、協業による活動をさまざまな角度から現在分析しており、学会の研究会で近々報告する予定だ。この研究を通じて、オープンソースコミュニティにおける活動が学術界においてさらに深く認知されることを狙っている。

今後の展望

 Ant、Log4j、Strutsなど、Jakartaプロジェクトを代表していた製品が次々とJakartaを卒業し、Apache直下のプロジェクト(TLP:Top Level Project)へと移行している。また、JBoss、Eclipse、ObjectWeb、CodeHausなど後発のJavaオープンソースプロジェクトも注目されはじめており、「Jakartaと言えばJavaのオープンソースソフトウェアの代名詞」という状況は過去の話になりつつある(そうとはいえ、Tomcatを始めとしたJakarta製品は他のオープンソースプロジェクトでも利用されており、Jakarta製品が利用されなくなったという訳ではない)。

また、Jakartaプロジェクトの上位であるApacheプロジェクト傘下には、XMLプロジェクト、Webサービスプロジェクトなど、デファクトスタンダードとなっているプロジェクトがJakartaと並んで軒を連ねており、Apacheプロジェクト全体がエンタープライズJavaの領域において重要な地位を築いていることは確かだ。

 従来からの活動を充実させることもさることながら、これらの変化に対応するため、日本においてもApache Software Foundation全体の製品を網羅すべく複数のコミュニティが連携して活動していくことが望まれる。これは、製品の利用ユーザにとってのみならず、開発者同士の情報共有を促進させる上でも重要なことではないかと、筆者は考えるようになってきている。国内のオープンソースコミュニティと良い協力関係を築き、日本のオープンソース発展に寄与することが今後のいちばんの望みである。まず手始めに、日本版Apacheポータルサイトの構築を模索してみる予定だ。

現状の「Ja-Jakartaプロジェクト」は、人的資源が充実しているとはお世辞にも言えない。この記事をきっかけにして我々の活動にご協力いただける方が現れることを切に望んでいる。

関連リンク
▼Ja-Jakartaプロジェクト
▼Linuxチャンネル

[田中良浩,ITmedia]

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