IDG ケーススタディ
2004/05/06 15:47 更新


オープンソース移行でコスト削減に成功――Weather.comの場合 (1/2)

気象データの情報サイトWeather.comは、金銭的な理由で4年前からオープンソースへの乗り換えを検討。当時は全面的にプロプライエタリソフトを採用していたが、今ではOS、Webサーバソフトにオープンソース製品を導入している。(IDG)

 Weather Channel Interactiveが運営する24時間テレビチャンネルのオンライン版Weather.comは、4年前まではプロプライエタリな商用ソフトを全面的に採用し、地図、予報、1時間ごとの気象データといった情報を毎日数百万ページ提供していた。

 今では、荒れた天候の日には5000万ページ以上が利用されるようになったが、ほとんどをオープンソースのソフトと一般的なハードでまかなっている。新しいアーキテクチャに移行したことで、Weather.comはITコストを3分の1削減し、Webサイトの処理能力を30%増強した。

 ダン・アグロノウCIO(最高情報責任者)は、「道理に合うのであれば、当社は今後もオープンソースという選択肢を検討する」と話す。その理由は単純で、商用ソフトベンダーが自分の都合からオープンソースをめぐるFUD(恐怖、不安、疑念)をまき散らしているにもかかわらず、多くのオープンソース製品は非常によく機能し、商用製品の約半分のコストで導入・運用できるからだ。

 アグロノウ氏は、かつてIBMの販売担当者に「IBMのWebSphereアプリケーションサーバと正式なサポートプログラムを捨ててオープンソースを選べば、職を失うことになるだろう」と警告されたことを思い出す。

 Weather.com入社前に、IBMで14年間技術プロジェクトマネジャーを務めたアグロノウ氏は「NetscapeからApacheへ、あるいはWebSphereからTomcat(アプリケーションサーバ)への乗り換えはどうやっても不可能だというFUDを山ほど聞かされた。しかしそれを試してみても、ベンダーが言ったことなんて起こらなかった」と語る。

 「商用ソフトを使うよりもオープンソースソフトの方がサポート面で優れていると、私は身をもって知っている」と同氏は言い添えた。

OSをLinuxに

 しかし、技術的な問題がなかったわけではない。Weather.comは2001年、WebSphereの採用は続けていたが、金銭的な理由からOSを変更。SunのSolarisを搭載したSun 420Rサーバから、Linux搭載のIBM xServer 330に移行した。この時に問題の1つが浮上した。

 Weather.comのチーフアーキテクト、ジョン・バデネル氏は当時を思い出しながら次のように語った。「インストールスクリプトが機能しなかったり、GUIがつながらなかったりで、適切な管理ができなかった。2つのプラットフォームの間には細かな違いがいろいろあって、Linux上で完全には機能しなかった。動作が停止するようなことはなかったが、面倒な初期設定なしで導入できるものでもなかった」

 システム管理者、開発者、アーキテクト23人で構成されるWeather.comのチームは、IBMと協力してこうした不整合をすべて解決した。この過程を通して、チームのメンバーはオープンソースの専門家として自信をつけスキルを伸ばした。そしてWeather.comはSunのサーバから乗り換えることで数十万ドルの費用を節約したとバデネル氏は話す。「Linuxシステムへの移行費用は、一部では文字通りけた違いに安かった。50万ドルのマシンを5万ドルのマシンに置き換えたのだ」と同氏。

Tomcat対WebSphere

 IntelベースのLinuxマシンへの移行が成功したことに味をしめ、Weather.comのITチームはWebSphereと置き換えるオープンソースアプリケーションサーバを模索し始めた。ここでも大きな動機になったのはコストの削減だ。このほか、ややこしい環境を単純にし、多機能で複雑なWebSphereの運用に伴う間接費を削るという動機もあった。

 Weather.comのトラフィック負荷が着実に増加し、2002年1月の吹雪の期間に1日当たり1800万以上のページビュー(PV)に急増したとき、WebSphere搭載サーバには負荷に耐えられない兆候が現れ、たびたび再起動が必要となった。

 「当社のWebサイトは大規模で、非常に多くのヒット数を誇っている。しかし、複雑な処理を大量に実行しているわけではない。トランザクションを扱っていないため、ユーザーはデータを受信するわけで、送信するわけではない。だから当社は、WebSphereで実際に使える機能の4分の3を使っていなかった。その規模での導入と管理だけでも、間接費がかかっていた」(バデネル氏)

 またWeather.comのソフト開発者は、WebSphereが扱いにくく動作が遅いことにも気が付いた。次善策として、彼らはよく別のツールを使ってアプリケーションを開発し、それをWebSphereアプリケーションサーバに移植していた。

 Weather.comのインターネットアプリケーション開発チームの責任者、ジェフ・カニンガム氏は当時のことを次のように話す。「WebSphereがリソースをすべて使ってしまうため、WebSphereとIDE(統合開発環境)を動作させるのは難しかった。WebSphereは設定をDB2に保存しているので、マシン上でDB2のインスタンスを動作させなければならず、こうした間接費をすべて抱える羽目になっていた。実際、動作も遅かった。開発のためにTomcatを使い出したのは、ずっと速かったからだ」

 また、IBMの対応にも問題があった。「けんかを売られたようなものだ」とWeather.comの上級システム管理監督者のジョイ・レイノルズ氏。IBMのWebSphere開発者はWeather.comのITチームと緊密に連携してそれまでの性能問題を解決してきたため、Weather.comのソフトコードを熟知している。レイノルズ氏によると、「IBMのスタッフは『あなた方が自力でできるとは思わない。結局はWebSphereを使い続け、サポート料を支払うだろう』と主張した」という(IBMは本稿に対するコメントを避けた)。

 しかし開発スタッフはくじけなかった。「当社には非常に明晰な人たちがいる。彼らと商売を続けたいのなら、ほんのささいなことで食ってかかるのは危険だ」とレイノルズ氏は指摘する。

 さらに、Weather.comの開発者はTomcatを導入済みで、それ故にレイノルズ氏は「オープンソースコミュニティーがわれわれの疑問によい答えを返してくれると既に知っていた。われわれは盲目ではなかったのだ」と話す。

 カニンガム氏によると、Caucho TechnologyのResin、Hewlett-Packard(HP)やGemStone Systemsの製品など、開発チームは幾つかのオープンソースアプリケーションサーバを検討した。「ある時には、マシンに3つか4つの製品を載せていた」と同氏。

 しかしチームメンバーのほとんどがTomcatを気に入ったため、各都市の気象データを動的に提供する「各地の天気」ページの新版で、Tomcatを使ったパイロットテストを行うことにした。開発チームはテストに向けて、WebSphereとTomcatを切り替えられるようサーバを設定しておいた。

 「このページを立ち上げた時、Tomcatがかなり速いことに気付いた。このページのPVは全体PVの60%近くに上っているため、その時Tomcatへの乗り換えに踏み切ることを決めた。かたずを飲んで見守っていたが、うまく機能した。それ以来、後戻りをしたことはない」とバドネル氏。

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