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2004/05/28 18:27 更新

:ケーススタディ
Linuxでホスティングサービスを展開する富士総研、Windowsのメリットも認識

Linuxを自社のホスティングサービス「TEXIV」に採用している富士総合研究所に話を聞いた。

 みずほフィナンシャルグループ傘下の富士総合研究所は、ホスティングサービス「 TEXIV(テキシブ)」を展開している。データセンターソリューションとして提供される同システムは、Red Hat Enterprise Linuxベースで構築されている。TEXIVにおいて、Linuxはどのように運用されているのか。同社システム技術本部、生産技術本部の主事システムエンジニアを務める松井賢氏、同部次長の藤井智明氏に話を聞いた。

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富士総研主事システムエンジニアの松井賢氏

 富士総合研究所は1989年設立に設立されて以来、芙蓉グループ系のコンピュータ企業との合併を何度か経験。2002年10月に、会社分割により、調査研究部門、経営情報部門、年金コンサルティング業務などがみずほ総合研究所に統合、再編され、「新生」富士総合研究所として、現在の体制が始まった。

ITmedia TEXIVのシステム構成と、Red Hat Enterprise Linuxを採用した理由を教えてください。

松井 Webサーバとして、20〜30台のラックマウント型のサーバマシンが稼動しています。ソフトウェアは、データベースがOracle、アプリケーションサーバはWebSphereです。OSは、Red Hat Enterprise Linux AS (Ver2.1)が稼動しています。その前は、Red Hat Linux 7.2でした。

 Red Hat Enterprise Linux ASを導入した理由は、Webサーバのホスティングで事例が多く、Apache+Red Hatという組み合わせに安心感があったことです。Linuxを選択したことによるOSのコストの低さという意味では、それほどのメリットはありませんでした。サービスをしていく上で、商用製品をホスティングすることが多くなっているため、その製品を環境的にサポートしているかという点は、大きなポイントと言えます。

ITmedia Windowsという選択肢は考えましたか?

松井 機能面での良し悪しはともかく、社内にUNIXの技術者が多かったことがLinuxを選んだ直接の理由になりました。ただし、Linuxベースでシステムを構成する場合の最大の問題点は、デバイスの互換性です。ソフトウェアによって、動くものがあったり動かないものがあったりします。Windowsではこういうことはまず見かけません。互換性を誰が保証するのかという問題が、Linuxにはついて回ります。

 例えば、ファイバーチャネルなどのストレージ、クラスタリングソフトなどで、特定の製品が稼動しないことがありました。これは、ベンダー企業の間で協力して解決してほしい。今まではユーザーからの要望は通らなかったが、今後はレッドハットにも期待したい。

ITmedia 20〜30台のサーバ分のライセンスコストと、人員を割いて、Red Hat Enterpriseを採用するメリットは何でしょうか? 

松井 Linuxを使うということは、システム周りの管理などを自分の力でやるということです。Windowsならばマイクロソフトに投げてしまえるメンテナンス作業も、「力わざ」でこなすことになります。ライセンスとランニングコストを合わせたトータルで見た場合、現状ではWindowsベースにした方が、コスト効率が高いのではないかと思っています。

 もちろん、世の中のフリーウェアが使いやすいこと、情報が得やすいというオープンソースのメリットも認識はしています。今後は、オープンソースの集まりであるという点から、アップデートの問題や、ビジネスロジックをどう定義するかという点での改善があってほしいです。

ITmedia 今後のシステム展開についてどう考えていますか?

松井 今後について具体的な予定は特に決まっていませんが、ポリシーはあります。それは、異種製品を混在させることは避け、インタフェースへのシステム的な依存状態を回避するということです。そのため、変更するとすれば、Linuxならば、バージョンアップを一括して行うことになります。また、一気にWindowsなどのほかのプラットフォームに載せ変えるという選択肢もあると考えています。



[聞き手:怒賀新也、木田佳克,ITmedia]

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