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2004/05/31 21:57 更新


開発者獲得の努力を続けるSun

Sun Microsystemsは6月末のJavaOneカンファレンスを前に、ツールの改良などを通じて開発者を引き付け、アプリケーションサーバ分野での地歩を固めていく構えだ。

 Sun Microsystemsは、今後も開発コミュニティへの訴求に注力すべく、「Java Web Services Developer Pack 1.4」のアップグレードを先ごろリリースした。さらに同社は、J2EE(Java 2 Enterprise Edition)用の「Java System Application Server 7」の新バージョンも発表、無償ダウンロードの形で提供している。

 SunでJava Webサービス/ツールのマーケティングを担当するジョー・ケラー副社長は、「当社は今後も、開発者をJavaプラットフォームに引きつける取り組みに力を入れる。最新仕様に関連するリファレンスインプリメンテーションとソフトウェア開発キットをリリースし、さらにこれらを製品に組み込むとともに、アプリケーションサーバ分野に投入するつもりだ」と語る。

 Java Web Services Developer Pack(Java WSDP)の早期アクセス版は、「Web Services Interoperability Organization(WS-I)Basic Profile 1.1」をサポートするほか、SOAP(Simple Object Access Protocol)、WSDL(Web Services Definition Language)、UDDI(Universal Description, Discover and Integration)、XMLなどのWebサービス標準をサポートする。

 ケラー氏によると、このリリースの基本的な狙いは、J2EE 1.4を利用したエンタープライズレベルのWebサービスとサービス志向アーキテクチャ(SOA)の開発を容易にすることにある。

 Sunはここ数年、Java技術を幅広い開発者ベースにとって使いやすいものにするという方針を表明してきた。

 同社は昨年の「JavaOne」イベントで、1000万人の開発者を引きつける取り組みを通じてJavaコミュニティを拡大するという計画を発表した。先週のSunの発表は、6月末の「2004 JavaOne」カンファレンスを目前に控えて弾みをつけるのが狙いだとみる業界関係者もいる。

 Sunは先週、自社の開発プラットフォームにUML(Unified Modeling Language)を統合すると発表した。

 Sunによると、今回発表されたJ2EEアプリケーションサーバの新リリースでは、スケーラビリティが改善され、100個を超えるCPUに対応するリファレンスアーキテクチャを備えるほか、99.999%(ファイブナイン)の可用性を実現するという。

 「今回のリリースでは、当社がSolarisで行った取り組み、つまりスケーラビリティに関する本格的な取り組みの成果をJavaに取り入れることにも注力した。このリリースは、100 CPUを超える拡張を可能にするロードバランシングシステムをJ2EEに提供することができたという点で、当社にとって大きなマイルストーンとなるもの」とケラー氏は説明する。

 さらにSunによると、新サーバは広範なWebサポートを提供し、Apache TomcatやMicrosoftのIISなどのサーバ、OracleおよびIBMのデータベースをサポートするという。

 業界関係者の多くは、SunをBEA SystemsやIBMといった主要ライバルの下位にランクしているが、Sunではアプリケーションサーバ分野で同社は大幅な前進を遂げたとしている。昨年の夏以来のダウンロード数は130万を超えているという。

 「多くの人々が当社のアプリケーションサーバを商用配備で利用し始めている」とケラー氏は話す。

 コネティカット州スタンフォードにあるMeta Groupの調査担当副社長トーマス・マーフィー氏によると、Sunが開発分野で積極的な役割を果たそうとしているのは素晴らしいことだと評価する。

 マーフィー氏によると、Sunのアプリケーションサーバは、まだあまり勢いがないという。

 「確かにダウンロード数は多く、無償なので開発作業で利用している人もいるだろうが、多くの人々にとっては、BEAのWebLogicやIBMのWebSphereからSunの製品に乗り換える直接的な理由は見当たらない。コストモデルとしては優れているが、多くの人々は乗り換えが無料を意味するものではないと考えており、Sunのアプリケーションサーバをサポートするツールも少ないという状況であり、Sunは厳しい戦いを覚悟しなければならない」(マーフィー氏)

 「Sunは開発者と経営幹部にアピールする強力な技術力と力強いメッセージを示す必要がある」と同氏は指摘する。

 「価格に関するメッセージは経営幹部向けだ。開発者向けには、Sunはツールを改良したものの、この分野ではまだ目を見張るようなものを持っていない」と同氏は付け加える。

 Sunのケラー氏によると、J2SE(Java 2 Standard Edition)関連の次期リリースは、6月末にサンフランシスコで開かれるJavaOneに登場するという。「Tiger」のコードネームで呼ばれるこのリリースはまだベータ段階で、出荷予定はJavaOneで発表される。

 今回の年次カンファレンスでは、J2EEの次期バージョンの詳細とロードマップも披露される予定だ。「新しいツールの提供という意味でマイルストーンとなるJava Studio CreatorもJavaOneで発表する」とケラー氏は付け加えている。