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2004/05/31 22:32 更新

基調講演:
「インターネットは自信の構築が必要」、米RSA Securityシュネル上級副社長

都内ホテルで「RSA Conference 2004 JAPAN」が開かれ、米RSA Securityのスコット・シュネル上級副社長が基調講演を行った。論文「IT Doesn't Matter」を引き出して反論。セキュリティがインターネットに自信を持たせると話した。

 5月31日、都内ホテルで「RSA Conference 2004 JAPAN」が開かれ、米RSA Securityのスコット・シュネル上級副社長が「インターネットの将来を支える情報セキュリティ」と題した基調講演を行った。

 同氏は昨年5月「Harvard Business Review」に掲載されたニコラス・G・カーの論文「IT Doesn't Matter」を引き出し、Arrogant Of The Present(現在の傲慢)だ、と反論した。プロセッシングや帯域などを見て、ITはユビキタス化(偏在化)し、もはや競争力を生み出さなくなったとするカー氏に見解を一蹴する。同氏によれば、「IT Doesn't Matter」は今でもCIOやCEOの集まるカンファレンスで話題に上がっているという。

 この論文には、ITはすでに偏在化し電気などと同じようにビジネス戦略を必要とするようなものではなくなったなどと書かれており、IT業界に盛んな議論を呼んだ。

スコット・シュネル氏

インターネットは自信がない。これを取り戻すのはセキュリティだと話すシュネル上級副社長


 「彼(カー氏)が見落としているのは、ビジネスプロセスなどで変化が起きていることだ。ITはプロセッシングや帯域で見るものじゃない。アプリケーションそのものだ」と、シュネル上級副社長。同氏が「現在の傲慢」と呼ぶ、狭い時間(瞬間)でITを捉えることが、将来のビジョンを持てなくすると述べる。

 同氏はこの後、鉄道や自動車といった今やインフラとなった例を挙げ、これらインフラも長い時間を掛けて、技術が進歩しユビキタス化した点を指摘するのに多くの時間をさいた。現時点だけを見て、ITが革新を生まない偏在化したインフラとして捉える見方を否定したかったのだろう。

 「インターネットの発展はこれらと似通っている」(同氏)

 だが、インターネットには、これらに異なる側面が1つあるという。それはインターネットを使っている率は80%を上回るものの、ビジネス取引に利用している率が20%程度にとどまっている点だと同氏。鉄道や自動車は貨物などビジネスの輸送の大半を支えていることに比べると、確かに小さい。

 シュネル上級副社長は「多くは取引に利用していない。なぜか? 答えは、自信がないからだ」と結論付けた。「ビジネスをやっている企業への信頼、テクノロジーへの信頼、こらが鉄道などとは異なっている」。

 その自信を取り戻すためのエンジンとなるのが、セキュリティだというのが同氏の主張だ。そのためには、セキュリティに関する教育が必要となり、経営者はセキュリティに責任を持たなければならない。また、セキュリティ業界は、脅威を強調したり過小評価するようなことではいけないという。技術的な革新を継続させていくことも重要だ。

 「私たちの業界はインターネットを新しい革新に引っ張っていく力を持っている。セキュリティの革新を引っ張って行きたい」(シュネル上級副社長)

[ITmedia]

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