Itanium® 2 プロセッサでRISCをリプレース――インテルの確信に迫る

 インテルは11月に、ハイエンドに対応した64ビットプロセッサであるインテル® Itanium® プロセッサファミリ(IPF)の最新版「Itanium® 2 プロセッサ1.6GHz/9MB L3キャッシュ」を投入すると発表した。これは、コードネーム「Madison 9M」として知られていたもの。最上位モデルは、クロック周波数が1.6GHz、L3キャッシュ9MB、フロントサイドバスは400Mhz、マルチプロセッサ(MP)対応となっている。ここでは、RISCプロセッサやメインフレームの牙城を崩しつつあるインテルのItanium 2 プロセッサの性能を、ユーザーの採用動向を交えて紹介する。


Itanium 2 プロセッサを手に話す徳永氏

 インテルのプラットフォームマーケティング、プログラムマネジャーを務める徳永貴士氏は、「RISC系プロセッサベースのシステムはもちろん、メインフレームが稼動する基幹システムもIPFで置き換える」と話す。現状、多くの企業で稼動しているRISC系プロセッサを置き換え、データベースやERPなど、性能の高さが厳しく求められる企業システム向けに、IPFを提供していくことがインテルの戦略の柱となる。

 また、先日、日本電気株式会社がメインフレーム向け「ACOSアーキテクチャ」をIPFに最適化したことを発表しており、メインフレームのリプレースという狙いも現実味を帯びてきた。

 実際に、米Procter & Gambleをはじめ、米国のフォーチュン100社の約40%が既に基幹業務分野を中心にItanium 2 プロセッサを採用(インテル調べ)。日本でも、カシオ計算機株式会社、カブドットコム証券株式会社、株式会社ジェイティービー、株式会社損害保険ジャパンといった大手企業がItanium プロセッサ・ベースのソリューションに移行した。

 また、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の領域でも、スーパーコンピュータの性能ランキング「Top500」の内3分の2がインテル・アーキテクチャベースを占め、内83システムがIPFを採用と発表された。特に米航空宇宙局(NASA)がItanium 2 プロセッサを10,000基以上積んだスーパーコンピュータをプロジェクト「Columbia」で採用した。同システムは、日本電気株式会社のスーパーコンピュータが稼動している「地球シミュレータ」が記録した35.86TFLOPS(持続性能)を上回る51.87TFLOPSをマークし、Itanium 2 プロセッサの処理性能の高さを裏付けた。

費用対効果に優位性

 最新版のItanium 2 プロセッサで注目すべきポイントは価格性能比だ。TPCによるRISCプロセッサとの性能比較において、4プロセッサ搭載システム対比の場合、Itanium 2 プロセッサ1.60GHz/9Mを4基搭載し、126ギガバイトのメモリを使用したHP Integrity Server rx4640*は、16万1217tpmCを記録した。1tpmC当たりの価格性能比は3.94ドルだ。

 一方で、IBMのPower5* 1.9GHzプロセッサを4基、128ギガバイトのメモリを使用したIBM p5 570*の価格性能比は5.62ドルに止まっており、Itanium 2 プロセッサベースのシステムが30%上回った。[出典:インテル]

 また、Itanium 2 プロセッサは、Windows*、Linux*環境でSQL Serverや日本オラクル社などのオープン系のデータベースのトランザクション処理を比較する検証でも、最高レベルの性能を発揮している。アプリケーションの稼動検証を比較するベンチマークとしてSAP社の「SAP SD 3Tier ベンチーマーク」では、初めて1万ユーザーを超えるスコアを叩き出した。

 具体的な性能面に目を移しても、Itanium 2 プロセッサは、データバス上でのエラー回復や、CPUやメモリーの故障を検出し、OSに通知する自己診断機能としてMachine Check Architecture(MCA)を実装しているほか、不良データの封じ込めなど、企業の基幹システムとして稼動するための信頼性を確保していることに注目できる。

 スケーラビリティでもRISC系プロセッサに対して差別化を図った。RISC系サーバの多くは、1つのサーバに搭載できるプロセッサ数は64〜128CPU程度が上限になっている。一方、Itanium 2 プロセッサでは、最大512CPUのSMPシステムの構築が可能だ。これが、NASAをはじめ、非常に高い処理能力が要求されるHPC(High Performance Computing)の分野でも、Itanium 2 プロセッサが採用されている理由と言える。

 一方、これまで、Itanium 2 プロセッサが普及するためのハードルとして、対応アプリケーションの数が少ない点を指摘する声があった。実際にインテルもこの課題の解決に全力を注いだという。その結果、Itanium 2 プロセッサに最適化されたアプリケーションの数は、2003年度末の時点での1000程度から、2004年11月現在で2100以上にまで増加した。

 パフォーマンスに加え、スケーラビリティや信頼性の向上、対応アプリケーションの増加を図ったことで、価格性能比でRISC系サーバを大きく上回るItanium 2 プロセッサは、企業の基幹システムを支える選択肢として、ますます存在感を高めていきそうだ。

2005年「Montecito」でさらなる飛躍

 インテルは、2005年後半に「開発コード名:Montecito」の投入を予定している。Montecitoは、1つのプロセッサ上に2つのコアを持つデュアルコアを実現するもの。今回発表されたItanium 2 プロセッサ1.60GHz/9MBと比較して、パフォーマンスが1.5倍以上向上する予定で、L3キャッシュは2.5倍の24MBへと拡大する予定だ。

 さらに、マルチスレッディングにより、1ソケット当たり4スレッドを同時実行できるようになる。キャッシュエラーのリスクを削減する「開発コード名:Pellston」テクノロジ、仮想化機能によりサーバ統合をより簡単にする「開発コード名:Silvervale」テクノロジも実装される。

 インテルは自社のロードマップで、2006年には「Montvale」、さらには、マルチコアをサポートする「Tukwila」を投入することを明らかにしており、技術革新のけん引役としての自負が伺える。

IPFの今後のロードマップ

インテル® Xeon™と共に64ビット環境を相互補完

 Itanium 2 プロセッサは、ハイエンドの基幹システムを支える製品として2001年の発表された。名実ともに、インテルは、オープンテクノロジーによる64ビット環境の提供をリードしてきた。そして、同社は、従来の32ビットコンピューティングの世界でも、64ビット化を進めようとしている。

 Itanium2 プロセッサには、IA-32ベースのアプリケーションを稼動させるためのエミュレーション機能として「IA-32 エグゼキューション・レイヤ(EL)が提供されており、32ビットと64ビットアプリケーションの世界を橋渡ししている。

 一方、6月には、IA-32のアーキテクチャを64ビットに拡張する「インテル® 2 エクステンデットメモリ64テクノロジ(EM64T)」を採用したXeon プロセッサを発表した。Xeon プロセッサは、企業の多くの分野でシステムを支える32ビットプロセッサだ。EM64Tを利用することで、32ビットプロセッサで稼動しているシステムを、アプリケーションの互換性を維持したまま、64ビットメモリ環境へと移行させることが可能になる。

 こうした技術により、「32ビットと64ビットアーキテクチャの断絶」を懸念するユーザーが、安心して64ビットの世界への第一歩を踏み出すことができるわけだ。

IPFとXeonが64ビット環境を相互に補完する。

[ITmedia]


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