AWSの一番手目指すアイレット:田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)
Amazon Web Servicesのプレミアパートナーとなった中小企業のアイレット。齋藤CEOは「AWSの運用や保守では負けない」と鼻息が荒い。
パートナーとの協業がカギ
cloudpackの売り方にも工夫を凝らす。ユーザーに分かりやすい商品を揃える一方で、AWSに関するさまざまな情報を積極的に発信する。「こんなことが可能になる」といった新しい活用もTwitterやメールマガジンなどで発信する。AWSの活用事例も自社サイトで紹介する。「事例は日本で一番多い」(齋藤CEO)。同社のAWSエバンジェリスト2人が全国を回ってAWS活用の啓蒙活動を行っており、こうした中から新規案件の獲得にもつながっている。
パートナー企業との協業も推進する。「顧客のニーズにあった商品を開発するためだ」(齋藤CEO)。最近用意したトレンドマイクロのセキュリティ商品とcloudpackを組み合わせたサービスは、その1つになる。「1つの商材に仕立てるもの」(齋藤CEO)で、GMOグローバルサインとSSL認証書利用サポート、フルブライトとECサイト構築オープンソース「EC-CUBE」を設定した専用サーバープランを提供する。
アイレットのAWSに関する基本的な戦略は、AWSにない機能をいち早く提供すること。「一番手にやることが重要。世の中に当社のことを知ってもらえる」(齋藤CEO)。トレンドマイクロのセキュリティ商品を組み合わせたものは、その典型的なケースになる。2012年3月に、AWSが提供する専用線「AWS Direct Connect」とNTT東日本の「フレッツ光」などを利用した、クラウドとの拠点間接続サービスを開始した。
実は、AWSはこのサービスをシンガポールなど海外で提供しているが、日本ではサポートをしてなかったという(編注:日本向けサービスではインポート/エクスポート機能のみサポートされていない)。AWSがいずれ日本市場でサポートする可能性があるが、齋藤CEOは「そんなことは気にしていない」という。AWSがサポートしたら、その先を進むサービスを開発すればいい、という考えだ。
実は、同社がAWSのプレミアパートナーに認定される際、AWSでビジネスパートナー支援を担当するテレンス・ワイズ氏から「スピード感がある会社」と評価されたという。「まさに当社が目指していること」と、齋藤CEOは喜ぶ。
一期一会
36歳になる齋藤CEOは、20歳でシステム会社に入社した。その後、「インターネット関連の開発をしたい」と思って、マーケティング会社に移籍し、ゴルフ場予約システムなどの開発に携わった。そこで、システム開発の新しいビジネスモデルを学んだことが、アイレットのクラウド事業に生かされている。予約システムの経験を、蓄積したシステム開発とサーバ運用の技術に取り込み、クラウドをベースにしたストック型ビジネスにしたことだ。
齋藤CEOは運用・保守にこだわり、OSから分かる技術者集団を形成してきたという。そのために、「最初にやることが大切」とし、常に新しいことに意欲的に挑戦してきた。加えて、「社員一人一人が目立つようなスターチームにしたい」。システム開発で個人名が前に出るのは珍しいことだが、そうすることでユーザーから指名されることにもなるだろう。売り上げも2012年6月期の4億5000万円から2013年6月期は大きく伸びたという。これからも齋藤CEOの夢は膨らむ。
「田中克己の『ニッポンのIT企業』」 連載の過去記事はこちらをチェック!
関連記事
- 田中克己の「ニッポンのIT企業」:“素人集団”が強みに 基幹システムを自社開発するハンズラボ
- 田中克己の「ニッポンのIT企業」:ベンチャー魂を再び! ERPコンサルへと事業強化を図るテクノス
- 田中克己の「ニッポンのIT企業」:ビッグデータが追い風に データ分析のプロ集団を率いるブレインパッド
- 田中克己の「ニッポンのIT企業」:人月ビジネスを捨て、成功報酬型モデルへの転換を
- 田中克己の「ニッポンのIT企業」:持ち株会社でIT企業を結集、新技術活用に挑む 豆蔵OSHD
- 田中克己の「ニッポンのIT企業」:遠隔地を結ぶ仕組みで新市場を創出 ブイキューブ
- 田中克己の「ニッポンのIT企業」:アマゾン・クラウドに賭けるサーバーワークス
- 田中克己の「ニッポンのIT企業」:独自のITサービスで医療費の適正化に挑む広島のシステム会社
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.