数学女子はSEになり、やがてチームを信頼し凄腕のプロマネになる――土本光恵さん:「プロジェクトマネジャー」の極意(2/3 ページ)
IT系のプロジェクトマネジャーというと、気苦労が多く“自分には向かない”と敬遠してしまう人もいるかもしれない。しかし、その仕事を楽しめる人がいるのも事実だ。10年近くプロマネを務めている“プロ”に、その極意を聞いてみた。
仕事で学んだ「最初から100点を目指さない」
プロジェクトマネジャーというと、交渉ごとや指示出しなど“気苦労が絶えない”立場というイメージを持つ人は多いだろう。実際に土本さんも難しい状況に直面することは多いという。
「アウトソーシングとは、今まで他の人がやっていた業務を引き継ぐということ。相手からすれば“仕事を奪われる”わけですから、穏便に話が進まないことだってあります。とはいえ、下手に出過ぎてもうまくいきません。こういった失敗をした経験は少なくないですし、コミュニケーションは細心の注意を払っていますね」(土本さん)
そんな土本さんがプロジェクトを進める上で特に気を付けているポイントがある。それは「“最初から”100点を目指さない」ということだ。プロジェクトマネジャーをなったばかりのころは“頑張ればできる、完璧に仕事をこなして評価されたい”と考えていたが、経験を積むうちに考えが変わったそうだ。
「自分のレベルより高い案件や、厳しい進捗状況のプロジェクトをバトンタッチされることが増える中で、“最初から無理して背伸びせず、まずは必須条件をクリアする”と考えるようになりました。理想を追い求めるあまり、要件や納期を満たせなかったとなれば意味がありません。常に変化するプロジェクトの現状と最低限守るべきライン、そして理想のラインを見極めることが大切だと思っています」(土本さん)
難しい仕事でも断らず、“無理です”と言わないことを信条としている土本さん。ベストを尽くすために「理想」は理想と割り切る――決してネガティブな考えではないことが分かるだろう。
「システムはずっと動いているのが当たり前」ではない
もちろん、このほかにもプロジェクトにはさまざまな苦難がある。インフラを管理する立場として、休日でもトラブルの連絡が来れば、情報収集や対応に追われたり、クライアント先に向かわなければならないこともあるという。地震などの災害が起きたときはなおさらだ。「プライベートな予定があっても、システム稼働に影響が出ていないかなどの確認を優先しなければならず、地震を恨めしく思ったこともありますね」と土本さん。
苦難は多いものの、プロジェクトを遂行し、最後にクライアントから感謝されたときに仕事のやりがいを感じるそうだ。
「ベタですが、クライアントの方から“ありがとう”と言ってもらったときに『やってよかったな』と感じますね。中には『システムなんてずっと動いているのが当たり前』『運用できて当たり前』と言う方もいますが、その裏にはトラブルが起きないように頑張っている人たちがいる。決して簡単なことではないのです」(土本さん)
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