IBMと真っ向勝負? MSが「コグニティブ」に本腰、勝算は?:Weekly Memo(2/2 ページ)
マイクロソフトがAI分野の新たな取り組みとして「コグニティブサービス」を始動した。「コグニティブ」と言えばIBMが先行してビジネス展開しているが、果たして真っ向勝負となるか?
先行するIBMに対する勝算は?
AIは今、最も注目される技術として、世界の名だたるIT関連企業や組織が研究開発に取り組んでいる。その中でも「マイクロソフトは最先端を行っている」と洪氏は胸を張る。だが、とりわけAIのビジネス活用では、IBMが「コグニティブビジネス」と銘打って実績を上げつつある「IBM Watson」の印象が強い。しかもマイクロソフトは今回、IBMがかねてビジネスの代名詞として使ってきた「コグニティブ」という言葉を、自らのサービス名に適用した。
果たしてマイクロソフトはAIのビジネス活用において、IBMと真っ向から勝負するのか。勝算はあるのか。単刀直入に聞いてみたところ、洪氏は「IBMと比べて当社の強みは2つある」として、次のように答えた。
「まず1つは、コグニティブ技術としてカバーしている領域が幅広く深いことだ。IBMも“知識”や“言語”、“音声”については高い技術力を持ち、それらがWatsonに反映されていると認識している。だが一方で、“視覚”や“検索”はあまり手掛けていない。それに対し、当社はそれら5つの領域を全てカバーし、それぞれに掘り下げた研究開発を行っている」
「もう1つは、コグニティブ技術を普及させるうえでのアプローチが違うことだ。IBMは基本的に個々の顧客企業に対して、ソリューションとして提供する形だと認識している。一方、当社はあくまでプラットフォームベンダーとして、要素技術をAPIで誰でも使えるようにする。このアプローチのほうが幅広く利用してもらえるようになると確信している」
そう語った洪氏は、マイクロソフトが最も強みとする領域として“視覚”を挙げ、その1つとして、図2に示した画像に映っているさまざまな対象物のそれぞれの状況をリアルタイムに把握・分析できる画像認識技術について説明した。これは例えば、車の自動運転や監視カメラなどに活用できるという。
また、この画像認識分野においては、「多くの研究機関や競合企業も適用しているImageNetというベンチマークで、2015年12月に当社の技術がどこよりも認識能力で優れているとの認証を得た」とも。この結果を同社のコグニティブサービス展開の弾みにしたい考えだ。
さて、洪氏によると、手掛ける技術範囲とアプローチが異なるというIBMとの戦いはどう進展するか。コグニティブという言葉そのものの“認知”に苦労してきたIBMとしては、マイクロソフトが言葉遣いにおいて“仲間”になったことを歓迎する面もありそうだ。
5月24日には、日本マイクロソフトが都内ホテルで開催する開発者・IT技術者向けの自社イベント「de:code 2016」で、米国本社CEOのサティア・ナデラ氏が来日して基調講演を行う予定だ。その中で同氏が自らマイクロソフトコグニティブサービスについて、日本で初披露する可能性がある。
一方、5月25、26日には、日本IBMが都内ホテルで「ようこそ、コグニティブ時代へ」をテーマに顧客向けの自社イベント「IBM Watson Summit 2016」を開催する予定だ。“コグニティブ仲間”になったマイクロソフトのサービスに対して言及するかどうか。両イベントとも注目しておきたい。
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