「Watsonエコシステム」に注力するIBMの深謀遠慮:Weekly Memo(1/2 ページ)
グローバルで「Watsonエコシステム」の拡大に注力するIBMが、日本でもいよいよ本格的に動き始めた。この動きにはIBMの深謀遠慮が見て取れる。
ソフトバンクと共同でエコシステムづくりに本腰
「Watsonが日本でも広く活用されるように注力していきたい」
米IBMでWatson事業を推進するマイク・ローディン シニア・バイス・プレジデントは7月30日、日本IBMが開いた同事業に関する会見でこう語った。
Watsonとは、人間が話す言葉(自然言語)の意味や文脈を理解し、複雑な質問に対して適切な回答をしてくれる質問応答システムのことだ。IBMの創設者であるトーマス・J・ワトソン氏にちなんで命名された人工知能ベースのコンピュータで、同社では「コグニティブ(認知)コンピューティング」と呼んでいる。
ローディン氏によると、Watsonは現在36カ国でプロジェクトが進められ、適用業種も17分野に広がっており、エコシステムパートナーも300社を超える状況だという。
日本でも今年(2015年)2月にソフトバンクと戦略的パートナーシップを結び、Watsonの日本語対応やAPIの開発、エコシステムづくりに乗り出した。そして7月30日には両社で「Watsonエコシステムプログラム」を立ち上げ、10月1日からエコシステムパートナーの正式募集を開始するとともに、それに先駆けて初期エコシステムパートナーとして9社を選定したと、ソフトバンクが発表した。
ソフトバンクは2015年7月30〜31日に開催した法人向けイベント「SoftBank World 2015」でこの取り組みを発表。孫正義社長が注力する姿勢を示し、ローディン氏も同イベントに登壇して協業への意気込みを語るなど、両社の緊密ぶりをアピールして見せた。
ローディン氏はソフトバンクとの戦略的パートナーシップについて、「Watsonは法人向けでなく個人向けにも幅広く活用できる。ソフトバンクは、IBMが手掛けていない個人向け事業にも強みを持っており、両社が協業すればWatsonを一層広げていくことができると判断した」と語った。
また、ソフトバンクはSoftBank World 2015で、「IoT(Internet of Things)」「人工知能」「ロボット」の3つを新たな成長分野と位置付けたことを表明。例えばソフトバンクの感情認識ロボット「Pepper」にWatsonを搭載することで回答精度が上がり、店頭などで顧客情報や個々の市場に合わせた的確な受け答えができるようになるなど、さまざまな相乗効果が期待できると、IBMでは見ているようだ。
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