「Watsonエコシステム」に注力するIBMの深謀遠慮:Weekly Memo(2/2 ページ)
グローバルで「Watsonエコシステム」の拡大に注力するIBMが、日本でもいよいよ本格的に動き始めた。この動きにはIBMの深謀遠慮が見て取れる。
「データをビジネス価値に変換するエンジン」へ
両社が共同で展開するWatsonエコシステムでは、日本で利用可能なAPIを提供することにより、日本の起業家や開発者でもWatsonのアプリケーションを開発できるようになる。今後は法人向けだけでなく個人向けでもWatsonの活用を進める構えだ。
ただ、このWatsonエコシステムにおいて、グローバルおよび今回日本で初期に選定されたパートナーの顔ぶれを見ると、IBMの明らかな意図を感じる。グローバルでの主要なパートナーについては、ローディン氏が会見で示した図をご覧いただきたい。
また、日本での初期パートナーは、伊藤忠テクノソリューションズ、カラフル・ボード、クレスコ、ジェナ、シグマクシス、ビッグデータロボ、FiNC、ブレインパッド、ロココの9社だ。
これらの企業の顔ぶれを見て気づくのは、まだあまり名は知られていないが、ビッグデータ活用などの分野では存在感を増しつつある新興企業が多いことだ。実際、ローディン氏もグローバルでのパートナーをいくつか紹介する中で、このパートナーはこんなユニークなことをやっていると楽しげに説明していた。
IBMはこうしたパートナーに何を求めているのか。それはまさしく、Watsonを活用した新しいビジネスアイデアである。このパートナーはこんなユニークなことをやっていると説明したローディン氏が、そのたびに「こんな発想はIBMだと思いもつかない」と話していたことからもそれが見て取れる。
では、パートナーはIBMに何を期待しているのか。この点については、初期パートナーに名を連ねるブレインパッドの草野隆史代表取締役が、エンドースメントの中でこう語っている。
「Watsonが提供する高度な自然言語処理能力は、データをビジネスにおける価値へと変換する新たなエンジンになると期待している」
つまり、Watsonは「データをビジネス価値に変換するエンジン」になり得るというわけだ。
IBMの最終的なターゲットもこの点にあるのは明らかだ。だからこそ、Watsonを活用した新しいビジネスアイデアを具現化してくれる新興企業とパートナーシップを組み、その連携効果を最大限生かせるようなWatsonエコシステムづくりに注力しているのだと見て取れる。まさにIBMの深謀遠慮を見た思いである。
関連記事
- 松岡功の「Weekly Memo」バックナンバー一覧(2008年開始)
- IBMの「Watson」が“作った”料理はうまいのか? 実際に食べてみた
IBMのスーパーコンピュータ「Watson」で未知のレシピを考案する「Chef Watson」アプリをご存じだろうか。Chef Watsonが提案したレシピで一流シェフが料理を作るというイベントがIBMで行われた。本当においしい料理になるのか、食べてみた。 - WatsonとSiriは“化学反応”を起こすか
IBMが人工知能技術「Watson」を活用した分析サービスを発表した。先頃提携したAppleの音声認識技術「Siri」と組み合わせれば、新たな“化学反応”が起きるかもしれない。 - IBM、「Apple Watch」などのヘルスビッグデータ部門「Watson Health」立ち上げ
IBMが、AppleのHealthKitおよびResearchKit採用アプリがiPhoneやApple Watchユーザーから集めたヘルスケア関連データを「Health Cloud」に保存し「Watson」で解析できるようにするサービス部門「Watson Health」を立ち上げた。 - みずほ銀行のコールセンターがIBMの“人工知能”を導入する理由
IBMのスーパーコンピュータ「Watson」をビジネスに活用する動きが日本でも始まっている。みずほ銀行がコールセンターにWatsonを活用した新システムを構築することを発表したが、そのメリットと狙いはどこにあるのか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.