“ダメ会議”を変えるコツ 「終了時に2つ確認せよ」:榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』
「“ダメ会議”を変える7つのコツ」で紹介した「終了時に2つ確認せよ」のポイントを解説します。これで、起こりがちな“認識のズレ”が防げるはずです。
この記事は榊巻亮氏のブログ「榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』」より転載、編集しています。
前回「“ダメ会議”を変える7つのコツ」で、「会議の4つのフェーズ」と「会議を変える7つのコツ」の全体像を紹介した。
今回から、7つのコツを1つずつ解説していきたい。目からウロコが落ちるような派手さはないが、どれもこれも、地に足がついた“本当に必要なこと”ばかりだ。
基本動作1:終了時に「決まったこと」「やるべきこと」を確認せよ
会議が終わってから、「結局何が決まったんだっけ?」「うーん、なんかモヤモヤするなぁ」と感じたことがあるはずだ。混沌とした会議ではよく起こることだ。何かを決めるための会議でこんな状態になったら致命的だ。
ではどうすればよいか? 答えはシンプルだ。会議終了時に、「決まったこと」と「やるべきこと」を確認すればいい。ただこれだけ。普通に考えると至極当然のことだが、多くの会議では全く実施されていない。
「なんだ、そんなことかよ……」と思ったそこのあなた。この記事はあなたのような人のためにある。
「決まったこととやるべきことを確認する」。言われれば当たり前のことだが、ちゃんとやっている会議は驚くほど少ない。やった方がいいのは自明なはずなのに、なぜか実施されない。もはや会議をなめているとしか思えないが、確認することの有用性、重要性をきちんと理解してもらいたい。
なぜ普段、確認ができないのか? 大きな理由の1つは、「そんなことイチイチ確認して、お前聞いてなかったのか?」などといわれるのが嫌だからだ。しかし、
- 話を聞いてなかった人がいるかもしれない
- 決まったことを勘違いしている人がいるかもしれない
- 決まったことを忘れてしまった人がいるかもしれない(実際にかなりの確率でいる)
最後に決まったことを確認するだけで、会議の結論を誤解なく全員に染み渡らせることができる。確認するのは自分のためではなく、その場にいる全員のためにするのだと考えてもらいたい。
ポイント1:極力「下手」に出ること
とはいえ、会議の終わりに発言するのはちょっとハードルがある。若手は特に。そんなときは手を上げてこう言えばいい。
「私の理解が合っているか確認させてもらいたいんですが……。今日決まったことは、これとこれで、やるべきことはこれ、という認識で合ってますか?」
これくらいなら、会議の末席に座っている若手だって発言できるハズだ。「決まったことがあやふやですよね?」とか、「何も決まってないじゃないですか」といった上から目線はだめだ。とにかく主催者のプライドを傷つけないように。少しおばかなふりをして確認するくらいでちょうどいい。あとは度胸の問題。これで「黙ってろ!」と上司に怒られるようなら、その会社は辞めたほうがいい。
ポイント2:「決まってないこと」も合わせて確認する
決まったことの裏には、決まってないことや次回の会議で決めることもあるはずだ。これも合わせて確認すると抜け漏れがなくなる。むしろ決まっていないことの方が重要であることもあるだろう。「決まったことはコレ、決まってないことはコレ」と確認するだけだ。
ポイント3:やるべきことは「担当者」と「期限」を合わせて確認する
やるべきことが決まっていても、この2つが決まっていることはまれ。しかし、これが不明確だとやるべきことは実行されない。「誰が、いつまでにやるか?」。必ず確認しよう。
ある会議での実話
ちょっと実例を。とあるプロジェクトでのこと。そろそろ会議も終わろうかというタイミングでこんなことが起こった。私の隣には、最若手のメンバーT氏(26歳)が座っていた。彼は熱心にメモを取っていた。
私:(Tさんのノートをちらっとのぞき込んで、小声で)「あれ? 決まったことメモしているんですね」
T:「(小声で)ええ、ちょっと自信ない部分もあるんですけど……。一応自分のメモとして」
私:「ほほう。じゃあ思い切って、“決まったこと”を確認しちゃいましょうよ。自信がない部分もあるんでしょ?」
T:「ええ? この場で?! 無理ですよ……」
私:「大丈夫、大丈夫。あ、皆さんすみません。だいぶいろんな議論をしてきたので、最後にTさんから決まったことを確認してもらいたいんですが、いいでしょうか?」
他の参加者:「おー? いいよ。T、確認してみな」
T:「すみません……。じゃあ確認させてください。決まったことはxxと△△。保留になっているのは□□、だと思うんですが。合ってますか?」
他の参加者:「うん。合ってるよ」「え? △△は決まってないでしょ? 継続議論って理解だったけど?」「何言ってんだよ、さっき話してたじゃないか」「ちょっと待ってよ、そもそも、今日決まったことを誰がやるか、決めてないじゃないか」
――この後しばらく全員で“決まったこと”を再確認し、会議は終了した。全員が出て行った会議室でTさんは、頭をかきながら言った。
T:「結局、私の理解で合ってましたね。ほっとしました。でも、榊巻さんヒドイですよー」
私:「ふふふ。それにしてもモメましたね。確認してよかったですね」
T:「確かにそうですね。度胸はいるけど、毎回確認した方がいいんでしょうね」
私:「ですね。さすが期待のエース! 次回も確認お願いしますね」
面白いことに、こんなことがしょっちゅう起こる。
だまされたと思って、試しに5つ程度の会議で決まったことと、やるべきことを確認してみてほしい。経験上、半分くらいは確認したときにモメるだろう。それだけ人の理解はあやふやなものだし、そもそも“決まりきっていないこと”も多いのだ。2時間の会議で、最後にたった30秒確認するだけだ。これで認識のズレが解消できるなら安い物だろう。
これだけのことではあるが、実行しようと思うとけっこう度胸がいる。でもやった方が絶対によいのは、誰が見ても明らかだ。こうした積み重ねが確実に会議の質を変えていくのである。逆に言うと、この程度が徹底できないなら他に何をやってもダメだ。
著者プロフィル:榊巻亮
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 コンサルタント。一級建築士。
「現場を変えられるコンサルタント」を目指し、金融・通信・運送など幅広い業界で業務改革、新サービス立ち上げ、プロジェクトを通じた人材育成などに携わる。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援。詳しいプロフィルはこちら。
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