今どき“USBもクラウドストレージも使えない会社”なんて……:半径300メートルのIT(1/2 ページ)
セキュリティを高めれば高めるほど、現場の利便性が損なわれてしまう――。そんな業務現場とIT部門の不毛な戦いを終わらせる方法はあるのでしょうか……。
皆さんは「隣の人にちょっとしたファイルを渡したい」というとき、どのようにしてファイルを渡していますか。iPhoneを使っているわが家では、無線経由でデータをやりとりできるAirDropを使っています。
今や妻も、この方法を使うようになりました。私のiPhoneのほうが高画質な写真が撮れるため、妻はごはんや猫の写真を撮影する時に私のiPhoneを奪って撮影し、自分のiPhoneに無線で送っているのです。近くにあるiOS/macOS端末を指定してファイルやデータのやりとりができるもの便利なところ。Android同士なら、NFCを使った「Androidビーム」も便利ですね。
ビジネスになったとたんに制限される「便利なあの機能」
他にもPC同士のファイルのやりとりなら、クラウドを使った「Dropbox」や「OneDrive」などのクラウドストレージを使うこともできるでしょう。私自身も編集部との原稿のやりとりはメール添付ではなく、Evernoteのノートで共有しています。
このように、個人ならさまざまな手段が用意されていますが、こと「会社」で使うとなると、選択肢が減るどころか“選択肢がない”ということも多いでしょう。
例えば「USBメモリ」。かなり前から「危険だから禁止」というポリシーで運用している企業が多いのではないでしょうか。USBメモリ自体を使えない企業もあるでしょうし、「使うな」というおふれが出ていて、「情シスに見つかると怒られる」という企業もあるでしょう。
でも、その場合の「代替手段」が用意されていないことが多く、実は、こっそりとUSBメモリが使われている企業が多いのが実情のようです。
難しいのは、情報システム部門と利用者(従業員)のそれぞれでメリットとデメリットが相反するという点です。情報システム部門としては、ほんの少しでもウイルスがはびこる可能性があるUSBメモリは“禁止したほうがいい”と考えるでしょうし、利用者はちょっとしたファイルのやりとりならばまだしも、1Gバイトくらいある動画や写真のファイルを隣のPCに移すときに、USBメモリ以外の方法がないことも多々あるでしょう。
こういった「リスクがあるから便利だけれど禁止」という施策は、得てして利用者が「利便性を落とさず、かつ情報システム部から見えない方法を探る」という「地下に潜る」方向に進みがちです。恐らくこの勝負は、人数も多くスキルも高い「利用者」側のほうが勝ってしまうので、結局、社内に隠れたIT(いわゆる「シャドーIT」)がはびこる最悪の状況につながってしまいます。
関連記事
- 「半径300メートルのIT」記事一覧
- ウチの情シスはアルファブロガー!? cloudpackのシンジ流「情シスPDCA」
「パスワードの定期変更は無駄だし、もはやパスワードなんて覚える気もない」「シングルサインオン? やめとけやめとけwww」――。IT企業の一情シスが、自社の取り組みを赤裸々に出しまくるようになったのはなぜか。 - 簡単? めんどう? OS別面白ページをすぐ隣の人に伝える方法
ちょっと面白いコンテンツをみんなでシェアしたいときに、LINEなどがなければ意外と大変かもしれません。そんな時に便利な使い方(?)をご紹介します。 - 日本企業をひそかに襲う「シャドーIT」の脅威
個人所有デバイスやクラウドサービスを仕事で“勝手”に使う「シャドーIT」が広がりつつある。その背景やリスクとは? シャドーIT事情に詳しいデジタルアーツの一條敦氏に解説してもらった。 - シャドーITの先にある「シャドーデータ」という問題
クラウドセキュリティサービス会社のElasticaは、企業が把握していない従業員の勝手なIT利用ではデバイスやサービスだけでなく、そこで扱われるデータの危険性も高まっていると指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.