大事なのはアラートが“鳴ったあと” IoTを“使いものにする”実証実験:富士通フォーラム2017(2/2 ページ)
センサーが鳴っても対応できなければ意味がない――。そんなIoTの課題を解決しようと実証実験を行っている企業がある。その方法とは。
コトが起こる前に対処するには
今回の実証実験で3社が目指したのは、予兆の段階で発報するとともに、損害の拡大を未然に防ぐための仕組みを作ること。具体的には、施設にセンサーを取り付けて常時データを計測、分析し、データが閾値(しきいち)を超えた場合に、その対策が分かるマニュアルを担当者のスマートフォンに配信するシステムを開発した。
実証実験では、ビルの地下にある空調機器に異変が起こった場合の対応を想定してシステムを構築。「遠隔で設備の振動や温度を取得できるか」「取得したデータが異常の判定と発報につかえるものか」「設定した閾値を超えたときに発報できるか」の3点を検証した。
大成のビルメンテナンスの経験から、排気ファンのベルト部分の調子が悪くなると振動が起き、温度が上昇することが分かっていたため、それを発報のトリガーに設定。高速で回転する排気ファンのベルト付近に振動と温度を計測できるセンサーを設置して計測を行った。
振動については、システム側に正常値からはずれたデータが一定時間継続して届いたら、異常の予兆と見なして発報するように設定。温度は、検証しているうちにセンサーが空調の影響を受けることが分かったため、ベルトから離れた位置にもセンサーを取り付けて、2つのセンサーの温度差をチェックするようにした。
センサーデータは、常にスタッフが張り付いているのと同じ状態になるよう、10秒ごとに1回送信するよう設定。取得したデータはモバイル回線を通じて富士通のIoTプラットフォームに送られ、そこからスタディストのクラウド型マニュアル配信システムに届く。このシステム内で、届いたデータが閾値を超えたかどうかを判定し、超えた場合にマニュアルを送る仕組みを整えた。
実験の結果、振動は異常な周期が一定時間継続した場合、温度は平時から10度以上の差が続いた場合に異常の予兆であると判定できることが分かった。マニュアル配信については、機器に故障が起きなかったため、判定結果に基づく異常の状態を再現してプッシュ配信が正常に行われることを確認したという。
「今後は検証を重ねて、さまざまな設備の異常をどのようにチェックすればいいかをノウハウとしてためていくことが重要になる」(鈴木氏)
今回の結果はビルメンテナンス会社からも好評で、漏水検知や室内の過ごしやすさなど、チェックできる範囲を増やしてほしいという声が上がっているそうだ。
さまざまな予兆を検知するために
3社の実証実験は既に第2フェーズに入っており、現在は、「設備に異常が発生するまでのデータの推移」を検証する実験が始まっている。
今後は「監視対象の拡張も検討したい」と鈴木氏。センサーは、気体や液体、加重、振動、明るさなど、さまざまなものがあるので、何を検証するために、どのセンサーをどのように使えばいいかを検証していく考えだ。
「一番要望が多かったのが漏水の予兆検知。これができれば価値が上がるが、水が漏れ出てしまった後では遅いので、どうやって予兆を検知するかが課題になっている」(鈴木氏)
少子高齢化によって人手不足が深刻になる中、熟練のスタッフがいなくても緊急時の対応ができる仕組みを望んでいる業務現場は少なくない。今回のIoTの実証実験は、そんな現場を救うカギになるかもしれない。
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