3年目に入った「攻めのIT経営銘柄」、見えてきた成果と日本企業の課題:IoTやAI活用を重視(1/3 ページ)
経済産業省がIT投資に積極的に取り組む企業を選出する「攻めのIT経営銘柄」が3年目を迎えた。評価項目を変えるなど、試行錯誤を繰り返す中で見えてきた成果、そして日本企業の課題とは?
「ビジネスのデジタル化」が叫ばれる昨今、企業の経営戦略にもIoTやAIなど、最新のITをどう使うかという視点が欠かせなくなってきている。しかし、一体何から手をつければよいのか――、そんな悩みを持つ企業は少なくないだろう。
そのヒントになりそうなのが、「攻めのIT経営銘柄2017」だ。経済産業省と東京証券取引所が共同で行うこの取り組みは、2017年で3年目を迎えた。今回は、過去2回とは評価項目を変え、最新のITの活用と、それによる新たなビジネスモデルや価値創出の取り組みを重点的に評価した結果、各業種で非常にとがった挑戦をしている企業31社が選出されている。
3年間の取り組みから見えてきた日本企業の課題、そして選出した企業に共通する特徴は何か――。攻めのIT経営銘柄を担当している、経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課(※)の滝澤豪氏と大田祐史氏に聞いた。
※編集部注:取材時点では、情報処理振興課でしたが、現在は情報技術利用促進課(ITイノベーション課)に変わっています
株価と結び付けることでITを経営者の関心事に
経産省が「攻めのIT経営銘柄」の選定を始めた狙いは、日本企業のIT活用のレベルを引き上げ、“稼ぐ力”を高めることにある。その背景には、日本企業のIT投資を諸外国と比較すると、業務効率化やコスト削減という“守りのIT”への配分が多く、ITでビジネスモデルを変革したり新しい製品やサービスを生み出したりといった“攻めのIT”の割合が低いという現状がある。
卵と鶏のような関係ではあるが、守りのITが中心の企業では、IT投資に対する経営者の関心が薄く、そのような企業では、攻めのITの発想が生まれにくい。日本企業が生産性を高め、世界で戦えるだけの稼ぐ力を得るためには、経営戦略としてのIT活用、すなわち攻めのITへの転換が必要。そこで注目したのが、経営者の関心事である株価だった。
「『攻めのIT経営銘柄』を選定して公表することが、経営者の方が最も気にする株価に反映するようになれば大きな影響力があると考え、この取り組みを続けています」(滝澤氏)
実際、2016年にEC事業者向けのクラウドサービスを提供するHamee(東証マザーズ上場)が初めて「攻めのIT経営銘柄」に選定された際は、株価が急騰した。他にも、銘柄に選定されたある企業は、IT活用に対する注目が集まることで、経営のトップがIT活用についての講演を積極的に行うようになるほど、その意識が社内に浸透したとのことだ。
こうして、攻めのIT経営銘柄が、投資家に注目される取り組みであることが周知されてからは、経営者も関心を向けるようになり、「我社はなぜ応募しないのか?」「なぜ選ばれないのか?」とIR部門や情報システム部門に問うケースも増えているという。
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