3年目に入った「攻めのIT経営銘柄」、見えてきた成果と日本企業の課題:IoTやAI活用を重視(2/3 ページ)
経済産業省がIT投資に積極的に取り組む企業を選出する「攻めのIT経営銘柄」が3年目を迎えた。評価項目を変えるなど、試行錯誤を繰り返す中で見えてきた成果、そして日本企業の課題とは?
2017年版では、ROEとの相関関係がより鮮明に
「攻めのIT経営銘柄」は、東京証券取引所上場の国内企業約3500社を対象にアンケート調査を行い、33ある業種ごとに評価の高い1〜2社を選定する(評価の高い企業がなければ、1社も選定されない業種もある)。アンケートに回答する企業は回を重ねるごとに増え、今回は382社。回答の質も上がってきているそうで、2015年の開始当初は18業種からしか選ばれなかったものが、今回は23業種まで広がった。
2017年度版の特徴として、担当者が強調するのが、評価の内容が企業の「稼ぐ力」をより反映するようになったという点だ。アンケートでは、企業が取り組むべき視点として5つの軸を示し、攻めのITに関する質問項目が構成されているが、各項目に掲げられた取り組みを行い「好成績である企業ほどROEが高い」という相関関係が明確に表れた。滝澤氏は「当初、われわれが意図していたことが、3回目にしてかなりの部分で実現できた」と語る。
最新テクノロジーの活用を重点的に評価する方向へ
他にも2017年版の特徴として、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどの新たな技術を活用し、新事業や価値を創出するようなIT活用をより重点的に評価した点がある。その変化の経緯について、大田氏はこう説明する。
「2015年に取り組みを始めたときは、企業価値の向上や稼ぐ力につながるものであれば何でも、という感じで、攻めのITの定義がまだ抽象的であり、質問項目も“意識”を問うものが多かったように思います。
今回、経産省という立場から『企業が目指すべきもの』は何か? ということを再度議論し、政府の成長戦略にもある、“最新技術による新しい価値の創造”という点を重点的に評価しようと決め、選定委員会の皆さんにアンケート内容を検討いただきました。質問項目も意識よりも、実際の行動を問うものを増やしています」(大田氏)
結果として、今回の「攻めのIT経営銘柄」では、IoTとデータ分析技術で鉄道の故障箇所の予測などを行う東日本旅客鉄道、ビッグデータとAIによる投資信託に乗り出したヤフー、ビットコインによるガス料金支払いや、LINEによる機器販売システムを開発した日本瓦斯(ニチガス)など、先進的な取り組みをする企業が選ばれた。
「2年前はまだ『攻めのIT』という言葉自体が普及していなかったように思いますし、IoTという言葉も出てきたばかりだったので、いきなり今回のような取り組みを求めても、ついてこられる企業は少なかったかもしれません。そういう意味では、一段ステップを上がることができたのではないかと思います」(大田氏)
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