パッケージ版の「Watson」登場、拡販目指す2つの施策:導入期間と費用が3分の2に
日本IBMが「IBM Watson」関連ソリューションのパッケージ化を発表。各業界や業務に向けた45種類を用意しており、導入期間や費用が従来の3分の2程度になるという。営業の工数を減らして、拡販を目指す狙いもうかがえる。
「2016年に市場が立ち上がった。今年はさらにアクセルを踏んでいく」
日本IBMがWatson拡販に本腰だ。同社は9月27日、「IBM Watson」をパッケージ化したサービスを10月11日から提供すると発表した。数々の事例から得たノウハウを生かし、導入期間や費用を減らすとともに、販売しやすい仕組みとルートを構築することで、拡販を目指す。
パッケージ化したソリューションは45種類。日本IBMが16種類、ソフトバンクが29種類を用意しており、コールセンター用のチャットボットや工場での検品支援など、対象とする業界や業務は多岐にわたる。これらのサービスは1つのカタログにまとめられ、解決する課題や機能の紹介、技術検証や本番環境構築までの期間と参考価格を把握できる。
同日行われた発表会では、同社のワトソン事業部長の吉崎敏文氏がパッケージの例を紹介した。例えば、IBMのチャットbotをベースに、SNSなどの外部サイトからユーザーの性格や趣向をつかみ、レコメンドに反映する「チャットボットを活用した新しい顧客接点ソリューション」では、技術検証が2カ月で1000万円から(税別、以下同)、本番仕様の開発は3カ月で2000万円からだ。
この金額に、Watsonを利用するためのIBM Cloudの料金(月額7万円から)、そしてAIのチューニングを行うメンテナンスによる費用がランニングコストとしてかかる形だ。吉崎氏は「ソリューションにもよるが、既存の導入方法と比べ、期間やコストは3分の2程度になる見込み」だと話す。
販売しやすい仕組みとともに販路も拡大する。これまではソフトバンク経由でのみ販売していた日本語版Watsonを、約200社あるというIBMのパートナー企業も取り扱えるようにした。膨らむ実需に対して、供給を追い付かせるのが主な狙いだ。「デリバリーへのリソースがひっ迫しており、国内で不足しているといわれるAI技術者を早めに囲い込みたい。得意分野が異なるパートナー同士の連携も進めばいいと思っている」(吉崎氏)
同社のIBMクラウド事業本部長の三澤智光氏は「私見だが、Watsonはビジネスのサポートに特化した製品として、業務で実利用されている唯一のAIだと考えている。2017年春時点で200社以上に導入されており、今後も数百社単位で増えていく見込みだ」と自信を見せる。
営業に必要な工数を減らし、販路を一気に拡大する――日本におけるWatsonの販売戦略は次のステージに入ったと見ることもできるだろう。
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