人工知能で不動産ビジネスを変える――楽天出身のベンチャー「ハウスマート」の挑戦:【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(1/4 ページ)
IT化や効率化が遅れ、ユーザーの利益を優先できない構造になってしまった不動産業界。そんなビジネスモデルを変えようと挑戦する「ハウスマート」。その代表を務める針山さんは、不動産業界を一度離れ、IT企業に勤めたことで得た経験から起業に踏み切った。
「人生で一番高かった買い物は何ですか?」 こう聞かれたら、読者の皆さんはどう答えるだろうか。
PC、腕時計、クルマ……いろいろな答えがあると思うが、「家」と答える人も多いはず。人生の多くを占めるほど長期のローンを組み、数千万ものお金を支払うケースが一般的だが、その買い物が“正しい”かどうかを知る方法は意外と少ない。
「モノを買うときに、口コミやWebでの情報を確かめてから買う人は多いと思います。しかし、家というのは、人生で最も高い買い物になるにもかかわらず、お客さまが情報を手に入れるのが、非常に難しい商品なのです」
こう話すのは、不動産ベンチャー「ハウスマート」の代表、針山昌幸さんだ。IT化が遅れている不動産業界に疑問を抱き、IT企業の楽天に転職。そして、そこで得た経験を基に会社を立ち上げた。
“ユーザー本位”になれない不動産業界のビジネス構造
針山さんが「家」に興味を持ったのは小学生のとき。当時、団地に住んでいた針山さんが、中古の一軒家に引っ越したのがきっかけだ。
「あの頃はすごく狭い家に住んでいたんですよ。家の中で飛び跳ねると、上の階からも下の階からも怒られるのがとても嫌で。そこから父親が奮起して、中古の家を買ったんですね。それがとてもうれしかったのを覚えてます。いくら家の中で跳ねても怒られない(笑)。家は単に人が住む場所であるだけではなく、人の幸せと直結しているんだと感じました」(針山さん)
その後、大学時代に不動産資格の宅建を取得した針山さんは、不動産企業に就職。仕事自体は楽しかったものの、次第に業界が抱える問題点や、非効率的な点に気付くようになった。
「他の業界がすごいスピードで進化している中で、不動産販売は、いまだに電話とFAXがコミュニケーションの中心だったり、周知の方法が広告しかなかったりと、ビジネスの手法が変わっていない部分が多いです。そのために利益率が低く、売り手と買い手が持つ情報も非対称。お客さまが欲しい物件を探すよりも、売却の依頼を受けた物件を“さばく”という性格が強い業界構造なのです」(針山さん)
例えば、この物件が5000万円だったとして、それが適正な価格なのか。過去にはどのような価格で売買されてきたのか。他の商品では簡単に手に入る情報も、不動産では調べても出てこないため、営業マンの言うことを信じるしかない。「もっと別の方法があるのではないか」――そう考えた針山さんは、楽天へと転職。そこで大きなカルチャーショックを受けたという。
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