“お腹”の具合から過敏性腸症候群を診断する「おなかナビ」――東北大、医学研究用アプリで病態解明へ
東北大学は、突然の下痢や便秘などの症状を伴う「過敏性腸症候群」の可能性を診断するアプリ「おなかナビ」を開発した。アプリを通して一般の研究賛同者からデータを集め、過敏性腸症候群の発症メカニズムの解明に取り組む。
東北大学は2018年1月26日、「過敏性腸症候群」の可能性を測定できるiPhoneアプリ「おなかナビ」をリリースし、アプリを通して過敏性腸症候群の神経活動に関する調査を開始すると発表した。同アプリは、既に「App Store」で提供されている。
過敏性腸症候群は、腹痛や下痢、便秘といった症状を繰り返す疾患。国内に約800万人前後いると推定され、ストレスとの関連も指摘されているが、採血検査や消化管内視鏡検査、腹部画像検査などで異常が見つからないため、適切な治療の機会が失われやすいという。また、日常生活の中で突然起こるため、医療機関での診察データを得られるケースは少なく、症状発生の詳しいメカニズムは分かっていない。
今回、東北大学大学院の医学系研究科行動医学分野の研究グループは、過敏性腸症候群の症状の日常生活における発生メカニズムを明らかにするため、情報科学研究科のグループと共同で同アプリを開発。開発には、医学研究のためのデータ収集アプリを開発できるAppleの医学研究用ソフトウェアフレームワーク「Apple ResearchKit」を利用した。
同アプリでは、世界基準に沿った過敏性腸症候群の症状についてのアンケートや、下痢や便秘などの病態に関連するとされている自律神経活動の測定を受け、記録できる。ユーザーは、アプリの利用を通して研究に参加することで、自身で過敏性腸症候群の可能性を調べられるメリットがある。
過敏性腸症候群の疑いがある場合は、同アプリの記録を医療機関での受診の際に主治医に見せることで、円滑な診療の手助けとなることも期待できるという。
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