「天才を殺す凡人」から考える 大企業でイノベーションが起きないメカニズム(2/3 ページ)
パラダイムシフトの時代、社内変革の必要に迫られている企業が増えている。しかし、変革を主導する人が道半ばで“殺されて”しまうことも少なくない。変革の火を消さないために企業ができることとは。
大企業でイノベーションが起きない理由
そして最近、これは「大企業で、イノベーションが起きないメカニズム」と全く同じだと気付いた。つまり、大企業でイノベーションが起きない理由も「3つの軸を1つのKPI(Key Performance Indicator)で測るから」なのだ。
かつて大企業で働いていたとき、経理財務スタッフとして「社内のイノベーションコンテスト」に関わっていたことがある。そのときに、強烈な違和感を覚えた理由が、今、スタートアップに移って分かった。
革新的な事業というのは、既存のKPIでは「絶対に測れないもの」なのだ。
全ての偉大なビジネスは「作って→拡大され→金を生み出す」というプロセスにのっとっているが、適したKPIはそれぞれ異なる。そのうち、「拡大」と「金を生む」のフェーズのKPIは、分かりやすい。
拡大は「事業KPI」で見られるし、金を生むフェーズは「財務上のKPI」で計ることができる。経営学の発展によって、プロセスが十分に科学されてきた功績だ。
問題は「創造性」である。
言い換えれば、問題は「天才か、どうか」を、指標で測る方法がないことである。
創造性の“間接的な”測り方
結論をいうと「創造性」は、直接観測することはできない。そもそも創造的なものとは「既存の枠組みに当てはまらない」ため、フレームが存在しないからだ。
しかし、ある方法を使えば、“間接的”には観測することができる。それが「反発の量」である。
これはAirbnbの例が分かりやすい。AirbnbやUberは、サービスがリリースされたときに社会から「強烈な反発」をくらった。あるいは、優れた芸術には、“ある種の「恐さ」が必要”といわれることからも分かる。つまり、凡人の感情を観測すれば、「創造性」が間接的に観測可能なのである。
これをビジネス文脈でいうと、こうだ。
本来、企業は、破壊的なイノベーションを起こすには「反発の量(と深さ)」をKPIに置くべきであるが、普通、これはできない。なぜなら、大企業は「多くの凡人(=普通の人)によって支えられているビジネス」だからだ。反発の量をKPIに置き、加速させることは、自分の会社をつぶすリスクになる。これが、破壊的イノベーションの理論(クレイトン・クリステンセン)を人間力学から解説した構造になる。
では、どうすればいいのか? どう天才を守ればいいのか?
というのも、本来、3者は協働できるケースも多い。コミュニケーションの「軸」は異なっても、「実は言っていることは同じ」であることは“実に”多い。となると「コミュニケーションの断絶による、天才の死」は不幸でしかない。
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