目指したのは本物のサッカー――選手視点だとサッカーゲームはここまで変わる「LoveFOOTBALL 青き戦士たちの軌跡」レビュー(3/3 ページ)

» 2006年06月12日 15時00分 公開
[小城由都,ITmedia]
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成長させる楽しみ、記者会見やロッカールームでの一幕

 試合に勝利すると、選手を成長させることができる。通常2ポイント、動きがよければ3ポイント得ることができ、「オフェンス」、「キック」、「ラン」、「フィジカル」、「ディフェンス」、「ゴールキーパー」の6項目に振り分けることができる。ここで強くした日本代表の選手は記録され、次に再び日本代表ストーリーをプレイすると、強くなった選手データが持ち越される。同じ選手を何度もプレイして強くしていっても良いし、全員でプレイして、代表の力を底上げしても良い。時には代表チーム同士で紅白戦が行われ、そこで選手の課題が浮き彫りにされることもある。

photophoto 良い試合展開をすれば、試合後に選手の能力をあげるポイントを受け取ることができる。これで徐々に代表選手を強くしていくのだ。そして、ときには試合に課題が与えられることも。このノルマをクリアすると、代表ポイントが大幅にアップする

 雰囲気を盛り上げてくれるそのほかの要素として、記者会見やインタビュー、ロッカールームでのチームメイトとの会話などがある。試合終了後、必ずインタビュアーにマイクを向けられ、用意された三択から回答するのである。時には“僕でいいのかな…”といった弱気な発言をすることもできるが、基本的には“周囲のフォローのおかげです! 僕の仕事が評価されてうれしいです!!”なんて答え続けていたいものだ。

 ロッカールームでは、選手同士でちょっとした会話がある。しかし、戦術の見直しや、次はこんなことをやってみないか、といった提案はなく、“今回の試合は厳しかったな”などの感想だけで終始する。欲を言えば、やはり戦術についての話し合いや、監督に全員で直訴する、といったイベントもほしかった気がする。また、個人的な感想ではあるが、関西弁を話す選手が多い現在の日本代表だが、全員が標準語になっていた。このあたりはきっと少しは議論の的になったのだろうが、できれば、関西弁の選手は関西弁でしゃべってほしかったと感じた。

photophoto 試合前や試合後の記者会見は、日本代表のどの選手を相手がマークしているのかが良く分かる。試合後のコメントは3択で、強気にも弱気にも発言できるようになっている

試合の臨場感から学ぶサッカーはすごい

 それにしても本作の臨場感たるや、筆舌に尽くしがたい。1人の選手を動かすだけだから、余裕をもってレーダーを見ることができるのでは、と思うだろう。それがまったく逆なのだ。1人の選手のみを動かしていると、考えなければならないことが莫大に増える。

 今の自分の位置は? 自分の周囲の相手選手は? ボールは奪われそうにない? それとも50/50? マークしなければならない選手は今どこにいる? もし自分にパスがきたらどこにパスを出す? パスを要求するには、どこに走りこめば良い? こんなことを、選手を動かしている間中、ずっと考えていなければならないのだ。レーダーをじっくり見ている余裕なんてない。

 つまり、このシーンでは周囲はどう動くのか、ここでボールを奪わないと相手はどうつないでくるのか、といったことを、頭の中で想像しなければ、とても追いつかなくなるのだ。以前、元日本代表のある選手がこんなことを言っていた。

“テレビのような俯瞰(ふかん)でピッチを眺められたら、試合を簡単に支配できる。その全体像を頭の中で想像できるのが、本当の司令塔だ”

 LoveFOOTBALLをプレイしていると、この言葉の重さが身にしみる。われわれはテレビ中継で斜め上からの視点で試合を観戦している。すると、スペースがあったり、フリーな選手がいたりするのを簡単に見つけることができ、なぜそこにボールを放り込まないのか、と歯ぎしりする思いを抱く。しかしピッチに立っている選手から見える風景は、LoveFOOTBALLのようなシーンなのである。そこから、アナタは俯瞰(ふかん)画面をイメージできるだろうか。できるのならば、サッカーの、司令塔の素質は十分にあるだろう。

 正直なところ、本作にはいろいろと課題も多い。しかし、枝葉の問題点をひとつひとつあげつらうよりも、ゲーム自体が目指した理想の高さ、そしてかなりの割合でその理想を達成していることを評価したい。

 個人的にはサッカー番組の司会でおなじみの、スパイスの利いた小粋な解説をする倉敷保雄アナウンサーがお気に入り。オモシロトークが楽しくて仕方ない。宮澤ミッシェル氏の掛け合いも、かなり辛口だが、そのあたりは実際にゲームをプレイして確かめてもらいたい。

Love FOOTBALL 青き戦士たちの軌跡
対応機種Xbox 360
メーカーバンダイナムコゲームス
ジャンルアクションサッカーゲーム
発売日発売中
価格7140円(税込)
(C)2006 NBGI
"adidas, the 3-Bars and Teamgeist are registered trademarks/trade marks of the adidas-Salomon group, used with permission"the use of real player names and likenesses isauthorised by FIFPro and its member associations.
(C)1996 JFA
(C)2002 JFA.MAX
※これらの日本代表選手の画像はゲーム内CGによるものです。


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