肩の力を抜いてタッチペンを握ろう。この快適さはクセになる:「シムシティ DS」レビュー(1/2 ページ)
唐突ですが質問です。シムシティがニンテンドーDSで発売されると知った時、どう思いましたか? 「シムシティか。聞いたことあるな。でもやったことないし、難しそうだからいいや」と思った人、いますか? 本記事はそんなあなたのために存在します。
シムシティは簡単なゲームです
1000万台を突破したという、異例の大ヒット商品となったニンテンドーDS。そのラインアップに「シムシティ DS」が加わることを知って、喜んだ人は決して多くはないだろう。ただ、その大半はかつてどこかで従来作をプレイしたことのある人だったのではないか。言い換えるならば、シリーズ未体験の方は、そのニュースを聞いても、ふーん、で終わってしまったのではないかと思う。
ゲームに限らず、エンターテイメントは一定の固定層で成り立っている。いわば、ユーザーの圧倒的多数がジャンルファンなのだ。レンタルビデオを例に取れば、サスペンスが好きな人はまず最初にサスペンスをチェックするし、ホラーが嫌いな人は決してホラーを見ない。それが普通だろう。
シミュレーションゲームとなるとその敷居はさらに高くなる。何しろ、いくつものルールが組み合わさることで面白さが生まれるジャンルだけに、慣れた人でも新しいタイトルに手を出すのには二の足を踏む。筆者はこのジャンルが大好きなのだが、それでも体調が良くて時間がある日にしか新タイトルのプレイは始めない。時機が合わなくて買ったきり何ヶ月も未プレイ、ということもしばしばある。それだけにあまりプレイする気になれない、という心理はむしろ当然といえよう。
数の上では1000万台を売ったニンテンドーDSである。ユーザーの数は少なく見積もっても数百万、その中にはシムシティの名前を聞いて「これまで遊んだことはないけど、ちょっとやってみようかな」と思った人も相当数いるはずだ。だが、だいたいはその1秒後に「でも難しそうだな」という思いがわき起こって、それで終わりとなる。いかにシムシティでもシミュレーションゲームである以上、この問題は避けられない。
とすると、ここでハタと思い当たるのは、いったい本記事のようなレビューは何のためにあるのか、ということだ。「シムシティ DS」が従来作と変わらぬ楽しさに満ちていることは、ファンならすぐに分かる。はっきり言って、そうした人にはレビューはいらないだろう。シムシティの新作が出る、という情報だけで十分なのだ。またレンタルビデオを例にするなら、好きな監督の、あるいは俳優の新作が出る。気になっていたTVドラマの次期シリーズが始まる。ファンにとってはそれ以上の情報はいらない。不要ですらある。
ならば、本記事がすべきことは1つしかない。ちょっとやってみようかな、と思ったものの、即座に難しそうだな、と避けてしまった人。その方にシムシティの魅力を伝えるのだ。せっかくいつでもどこでも「シムシティ」が遊べる、という環境が生まれたのだから、もうこれは買うしかない。そう思ってくれる人が1名でも増えてくれれば。いやいやそんな弱気ではいけない。1名でも増やしてみせる。いや、まだ弱気か。売上を倍加……これはさすがに大げさか。まあ、ともかく、シムシティは楽しい。それをお分かり戴ければ最高だ。
ゲームの根本にあるのは“何が足りないか”
さて、最初に抑えるべきは何か。つい、もっともよく使うルールを覚えて、などと考えたくなるが、まあまあ。まずは発想というか、考え方から入ろう。日本で暮らしているあるイギリス人の手記を読んだ時、パチンコについて、玉を穴に入れるという基本的なルールを教えてもらえずに玉の弾き方を解説されて戸惑うという話があった。それと同じこと。まずは勝利条件を押さえるのだ。
シムシティは明確な勝ちという概念を持たないゲームだが、いちおうその概念にあたるのが「街を破綻させずに発展させる」ということ。立派な都市に成長させられれば、勝ちと考えていいだろう。では、そのために何をするのか。簡単である。建物を建てるのだ。どんな建物を。これも明確。不足を満たせばいいのだ。シムシティとは、不足を満たすゲーム。そう思ってもらえばいいだろう。
ゲームには、自由に街をつくっていくメインモードに相当する「新市長誕生」と、問題を抱えている街を復興させるクエストクリア型の「都市を救え」という2つのモードがある。いずれもプレーヤーは街に対する全権を握った市長という立場だ。市長と言われてもピンとこないかもしれないが、あまり堅く考えることはない。仕事は建物をどこに建てるか決めるだけだ。政治や行政に関する専門的な知識はいっさいいらない。
街の様子を見て、不足を見つけたら満たす。それはすべてマップの上に何かを建てるという方法で行う。ゲームはこれを繰り返して進む。では具体的にどう不足を見つけ、何を建てればいいのだろうか。
ここで一歩止まって常識を働かせてみよう。人が生きていくには衣食住がいる。そしてそれを満たすために仕事が不可欠となる。ところが「シムシティ」では、この衣食住と職はすでに満たされているのだ。そういう意味では、ゲームに登場する街の住人、通称“市民”たちは人間としての基本的な生活を保障されているのである。プレーヤーが補ってあげるのは、そのさらに先にある不足。言ってみれば、市民とはなかなかゼータクな人たちなのである。それだけにいろいろ勝手なことも言ってくる。だが、そのすべてを満たしてやる必要はない。何しろ、基本的な生活が保障された上での要求なのだ。勝手だなあ、と思えば無視してしまっても構わない。
ただ、本当にヤバイことだけは無視してはいけない。不足を満たすことは破綻を招かないという意味でもある。この点についても常識が役に立つ。現代社会で、必要最低限の衣食住が満たされたとして、それでも何が不足したら暮らしていけなくなるだろうか。
例えばライフライン。これが崩壊すれば、仮に家があり、服を持っていて、食糧を保有していてもアウトだろう。ライフラインの不備は、無視できない不足といえる。交通手段もそうだ。家がぎっしり建ち並んでいて道がない。道路は大渋滞で他の交通手段はない。これでは生活できない。警察や消防。110番と119番がなければ、あるいは回しても誰も来てくれなかったら犯罪は激増し、火事はどこまでも燃え広がってしまうだろう。これではやはり生活できない。
このへんのことを踏まえたら、頭の準備は終わり。早速、チュートリアルをプレイしてみよう。すると、最低限用意すべき設備として、エネルギー、水道、道路、警察署、消防署があることを教えてくれる。いずれも常識的かつ必要最低限。余分な施設はない。シンプルだ。しかもエネルギーは電気一本に絞られている。ガス派の人には釈然としないかもしれないが、基本ライフラインのうち1つがないので、その分気にすべきことが減る。ゲームとしては楽でいい。
必要最低限の施設を建てたら、後はどうするか。これも至ってシンプル。余った土地(マップのほとんどがこれにあたるが)を3つに区分すればいいのだ。3タイプというのは、住宅用地、商業用地、工業用地のどれか、ということ。区分けさえすれば、後は市民が勝手にやってきて、思い思いに家、商店、工場を建て始める。しばらく経つと、何となく街らしい格好になってくるだろう。
ここまでが最初にすべきことだ。これをゲームの手順に従って、具体的な指針としてまとめておくと次のような感じになる。序盤を乗り切るための大まかな指針として見ていただければいいだろう。
- マップの開けた場所を選んで道路を引く。最初は直線1本でOK。画面に映る範囲の半分くらいの距離で。海のあるマップでは海にほど近いあたりがいい。海岸線との間に少し距離を取っておくこと
- 真ん中あたりに道路に隣接して警察署と消防署を建てる。1つずつで十分
- 線からかなり離れたところに発電所を設置。これも1つで十分
- 発電所から送電線を引き、直線エリアまで延ばす。直線と10マス程度の距離まで来たら、そこでフォークの先状に分け、直線の全域に電気が届くようにする。送電線の末端は直線から5〜6マス程度の位置で止める
- 道路に沿った土地の両側を住宅、商業、工業用地に割り振る。どちらかの端に住宅地、真ん中に商業地、反対側の端に工業地という感じ。全部埋め尽くさず、ところどころに3×3マス程度の空き地を造っておく
なお、すべての作業はタッチペンで行うのだが、これが実に快適。土地の区分を広範囲に渡ってまとめて指定する場合など、タッチペンでさっとドラッグすればいいので非常に楽だ。ただ、感度がかなりいいので、電車の中など、揺れている場所でのプレイには注意したい。建設は仮にミスっても直前の指定ならばキャンセルする機能があるので最悪何とかなるが、問題は不要な施設を取り壊す時。キャンセル機能がないので(確かに取り除くたびにいちいち確認していたら煩わしくてどうしょうもないのだが)、慎重にやらないと痛い目を見ることがある。高価な建物の近くをメンテナンスする際には特に気を付けよう。電車が止まった衝撃で高価な施設を消してしまったなんて悲劇は起こしたくないもの。
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