オリジナリティーあふれる直角三角形のスピーカー、ピエガ「AP-1.2」:潮晴男の「旬感オーディオ」(1/2 ページ)
ワン・アンド・オンリーのリボン型ユニットを開発し、アルミのエンクロージャーを積極的に活用するピエガ。そのピエガが発売した三角形のコンパクトスピーカー「AP-1.2」は、実はレストランの“まかない飯”のようなスピーカーだった。
ワン・アンド・オンリーのリボン型ユニットを開発し、アルミのエンクロージャーを積極的に活用するピエガは、先進性とオリジナリティーあふれるスピーカーメーカーである。「AP-1.2」は、そのピエガが発売した直角三角形のニューモデルだ。
AP-1.2以前にも「AP-3」や「AS-3」という三角形のスピーカーはあったが、シングルウーファーとリボン型のツイーターを組み合わせた製品は初めて。それだけに大いに興味がそそられる。というのも、実はこのスピーカーの試作品を私は昨年ピエガを訪問した時に見つけていたからだ。残念ながらその時は試聴が叶わなかったので、あれこれと想像してしまったことを思い出す。
オーディオファンにとってピエガは話題のブランドだが、まだ未知なる人のためにその概要を紹介すると、スイス最大の都市チューリッヒに拠点を持ち1986年に創設された。スイスといえば腕時計に代表される精密機械工業が盛んなことで有名だが、このあたりは日本と事情がよく似ていて資源の産出に乏しかったからである。またアルミニウムの生産量がフランスに次いで世界第2位なのは豊富な水力発電量が後押ししている。
そうしたことも功を奏していると思うが、ピエガにはアルミのエンクロージャーを纏(まと)ったモデルが多い。アルミを使うと木製のエンクロージャーに比べ、厚みを1/5に抑えることができるからである。しかしながらアルミのままだと金属固有の振動が発生して使い物にならない。鳴きを防止するためにダンピング材が必要になるが、この材料の選択と使用量で音の活力が大きく変化するため、彼らはこの部分の開発に相当なる時間を費やし、今使っているイディケルという素材に辿り着いたのだという。
AP-1.2にもエンクロージャー内部には当然こうした材料が使われているが、このモデルは前述したように三角形というスピーカーにはあまり見られない形に仕上げられている。この形には内部の定在波を低減するという役割もあるが、一番の大きな理由はこのスピーカーが技術部門のトップでCTOでもあるクルト・ショイヒさんが卓上で使うプライベート用にこしらえたということだ。
このスピーカーを見つけたCEOのレオ・グライナーさんが、せっかくならファンのために発売しようと後押ししたため、今回めでたく日の目を見たのである。少し乱暴な例えをすれば、レストランの“まかない飯”のようなスピーカーといってもいいだろう。だから音が悪いはずはないし、当初は壁に取り付けるためのブラケットもなかったはずだが、サラウンド用にも展開できるということで、付けたままで製品化されている。
もっとも卓上に置く場合は、いささか厄介なので付属の六角レンチを使えば簡単に取り外すことができるし、付けたままにしておく場合は後ろに跳ね上げて使えば問題はない。ただしブラケットを下に敷いたまま設置すると音が軽くなるので注意したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.