現時点でベストな単焦点85mmレンズ――ソニー「FE 85mm F1.4 GM」:交換レンズ百景
ソニーが「圧倒的な解像力ととろけるようなボケ味」を掲げて開発したEマウント向けの単焦点レンズを試してみた。この写りは極上だ。α7R IIの高画素ととてもバランスがよい。
ソニーのEマウント向け最高峰レンズとなる「G MASTER」シリーズ。高解像と美しいボケの両立を目指した意欲的な製品群で、現在「FE 85mm F1.4 GM」「FE 24-70mm F2.8 GM」「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」の3本のラインアップが発表されている。今回は中望遠のFE 85mm F1.4 GMを「α7R II」で試してみた。
フィルター径は77mm、重量は約820gと、α7R IIに装着するとなかなかのサイズ感と重さである。レンズ構成は8群11枚で、XAレンズ(超高度非球面レンズ)とED(特殊低分散ガラス)レンズを3枚使用して、解像感とボケ味の美しさの両立を図っているという。もちろん各種収差や年輪ボケなどにも配慮されている。なお絞り羽根は11枚とし理想的な円形ボケを達成している。またレンズの外観も格調高く仕上げられている。燦然と輝く「G」バッジといい、指がかりがいいフォーカスリングや、クリック感をオン/オフできる絞りリング、そしてフォーカスホールドボタン、防塵防滴に配慮した構造と、価格に見合ったフォルムになっていると言っていい。
写りも極上だ。現時点でベストな単焦点85mmレンズだと断言していいくらいである。絞り開放からとてもシャープであり、その描写は立体感とコントラストに満ちている。上質でスーッと消えゆくようなボケ味は、撮っていて気持ちいいほど。なによりもα7R IIの高画素ととてもバランスが良く、大画面で仕上がりをチェックするとほれぼれするような写りを堪能できることだろう。
ポートレート撮影では「瞳AF」機能を使用してシャッターを切ったが、F1.4では瞳とまつげとでフォーカスが分かれることがあった。このように浅い深度と高画素ならではのシビアさが出てくるケースが多いので、瞳のジャストフォーカスを狙いたいのであれば、拡大表示をしてじっくりとマニュアルで合わせるのが無難かもしれない。もちろん少し絞れば画質もピークになるし、それからも逃れられるだろう。大きく重く高価格(22万5000円(税別))なレンズだが、それに見合った写りを保証してくれるレンズであると感じた。
85mmといえばやはりポートレート。このレンズの上質なボケ味がモデルと作品の深みをグッと向上させてくれる。フォーカスのピークから穏やかにボケていく様は実にいい。絞り開放でのカットだが、シャープさもしっかりと存在し、ガンガン開けて使っていけるレンズとなっている。
ポートレートだけでなく、もちろんスナップ撮影でもこのレンズは有効だ。大口径レンズの特長を生かして暗所での撮影から、被写体を背景から浮かび上がらせての描写もイケる。フォーカスはけっして高速ではないが安定しているスピードであると感じた。
境内のネコをスナップ。背景のアジサイがキレイにボケている。薄曇りの日の空気感と色合いがよく写しとられている。ジッとしているネコならば瞳にフォーカスすることが可能だが、すばしこいネコの場合だと難儀するかもしれない。
谷中の夕焼けだんだんから商店街を撮影した。F2ということもあり、商店街の看板と画面手前を歩く人との分離感がスゴい。ズーム主体のレンズシステムの中に、「勝負レンズ」として組み込むのもいいだろう。
チョイ絞りのF1.7でモデルの瞳にフォーカスしてシャッターを切った1枚。向かって左目の眼球表面とまつげの描写がリアルである。この立体感が本レンズの醍醐味だろう。またポートレートレンズだけあって、肌のトーンとボケが美しい。背景のブレンド具合も美しい。
絞り開放で両目にフォーカスを合わせるには、両方の目と等距離にポジションを取ろう。そうすれば極上のシャープさとボケ味とが手に入る。「瞳AF」で不安な場合はマニュアルフォーカスに切り替えて、拡大表示を活用してフォーカスを合わせたい。このレンズを開放で使うと、フレキシブルスポットAF枠の「SS」が欲しくなるほどだ。
G Masterシリーズは究極のレンズシリーズになることを運命づけられた製品だ。現時点でのアナウンスは3本だが、これからより多くの焦点距離や明るさのレンズが出てくることが予想される。そのどれもがこのSONY FE 85mm F1.4 GM並の写りだとしたら……。今後の展開に期待したいシリーズである。
(モデル:小林眞琴/オスカープロモーション)
(編注:本記事では一般的な撮影状態での利用を念頭に置いているため、人物撮影にレフ版などは利用しておりません)
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