Mobile:NEWS 2002年12月6日 09:10 PM 更新

“携帯のOS”に狙い定めるMicrosoft

携帯の世界でも“標準OS”が必要な時期にきている。Microsoftは、「Smartphone」と「Pocket PC Phone Edition」を武器に、携帯電話OSでもスタンダードを目指す

 “Windows”というブランドと、全世界で600万人を超えるといわれる開発者の数を武器に、Microsoftが携帯OSでもデファクトスタンダードを目指そうとしている。米Microsoftのモバイルデバイス部門のディレクターであるDerek Brown氏が来日し、携帯電話向けOSについて話を聞くことができた。

「Smartphone」と「Pocket PC Phone Edition」の違い

 Microsoftの携帯電話向けOSには、大きく分けて2つの種類がある。英Orangeが採用した「Smartphone 2002」(用語)と、米T-Mobile USAが採用した「Pocket PC Phone Edition」(用語)だ。

 どちらも“MSの携帯電話”ではあるが、2つの違いは単純だ。「Smartphone」のほうは、「まず携帯電話としていいものを。その上でデータも扱えるデバイス」(Brown氏)という位置づけ。反対に「Pocket PC Phone Edition」は「まず第1にデータのデバイス。その上で、電話もできる」(Brown氏)ものになる。

 Smartphoneにはタッチスクリーンは備えられておらず、操作も片手で行うことが前提。Pocket PC Phone Edition(Phone Edition)では、Pocket PCと同じくタッチスクリーンを備え両手で使うことになる。簡単に言ってしまえば、携帯電話にWindows CEを入れ込んだのがSmartphone、Pocket PCに電話機能を付けたのがPhone Editionとなる。


 2つのOSは、どちらもWindows CEをベースとしており、「コアOSは同じ。コードも80%が同じ。ユーザーインタフェースと入力方式が異なるだけ」(Brown氏)。開発チームも分かれていないという。

 とはいえ、Brown氏は「今後この2つが1つに統合されることはないと思う」と話す。PDAと携帯電話の機能的な境界線がなくなりつつあるが、液晶サイズや筐体のフォームファクターは、用途に応じて違ってくるという考えだ。


Smartphoneの待ち受け画面(左)、メニュー(中)、予定表(右)


NTTドコモの「P504iS」「A5101T」と並べてみた

いずれは必要になる、携帯向け汎用OS

 Smartphoneは既に英国、フランス、デンマーク、オランダ、スイスなどで販売されており、「非常にリアクションはいい。店頭では出荷待ちの状態になっている」(Brown氏)。Phone Editionのほうも、米AT&T Wireless、T-Mobile、O2などで利用でき「世界中の大手キャリアが1年以内に次々出してくると思っていい」(Brown氏)という状況だ。

 各社がMicrosoftのOSを採用する理由の1つは、加速度的に複雑になっていく携帯ソフトウェアにある。「高速なネットワークの導入で、ソフトがどんどん重くなってきている。アプリケーションを載せていくプラットフォームが求められている」(Brown氏)。

 これまでの携帯電話にもOSは載っていたが、ほとんどが独自のもの。ソフト開発が難しくなっていく中で、プラットフォームを統一し、開発効率を上げようという動きが進んでいる。Brown氏は「(Windows OSの搭載で)ソフトウェアの開発費が10分の1になるということもあり得る」と話す。

 もちろん、携帯向けの汎用OSはMicrosoft製品だけではない。携帯大手各社が出資する英Symbianの「Symbian OS」が最大のライバルとなるだろう。Symbian OSは既にNokiaなどの多数の携帯電話に搭載されている。

 Brown氏は「モバイルとインターネットが近づきつつある。Microsoftはモバイル(PDA)で経験を積んできた」と、今後携帯電話の情報端末化が進む中で有利な点を強調する。「プラットフォームを囲うエコシステムも重要な点だ。(MicrosoftのOSならば)Windowsの開発者もPDAや電話にアプリケーションを作れる。600万人の開発者がソフト開発に当たれるのが大きなポイント」(Brown氏)。

 なお、日本でのSmartphoneやPhone Editionの展開については、「日本の市場について言えば、3G(がターゲット)になる。何年か先には、(キャリアやメーカーに)提案しやすい環境になるだろう」。



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関連リンク
▼ マイクロソフト

[斎藤健二, ITmedia]

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