“電話”が安価で身近な聴力検査機にネット接続機能やアプリケーション機能の搭載は、いつの間にかか携帯電話を安価で身近なコンピュータに進化させた。着メロ音源チップを使って、聴力検査機を作り、聴力低下や難聴のユーザーのデジタルデバイドを解消しようという研究が行われている
携帯電話が、最も普及した安価な携帯型コンピュータであることは疑いない。大阪で4月24日から開催されているシンポジウム「ケータイ・カーナビの利用性と人間工学」の中で、携帯電話を聴力検査のためのオージオメータとして利用する方法が話された。 産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門の中村則雄氏は、聴力検査の難しさが聴力低下および難聴の早期発見を遅らせているとして、簡易な聴力検査機の必要性を指摘する。「簡便な検査機が必要だ。体温計のように普及するといい」(中村氏)。
中村氏が開発した試作機は、携帯電話の着信メロディ用の音源を使って検査に使う音を出すというものだ。NTTドコモの「N504i」を使い、着メロ用のFM音源チップ(ヤマハ製)を使って検査音を出し、制御やデータの管理などをiアプリ(Java)で行う。 性能検証を行ったところ、変調・ビブラートをなくし2組オペレータ(2オペ)の振幅パラメータを並列接続させることで純音を作成できた。「FM音源によって、安定した音質が得られた」(中村氏)。 出力周波数は「着メロは音階なので、少々ずれるが、誤差範囲」。携帯電話によってはFM音源を搭載しておらず、PCM音源だけのものもあるが「ADPCM音源向けにデータを作ってみたが、大きなメモリ容量になってしまう。携帯電話の性能アップ待ち」だという。 目指したのは選別目的のJIS規格タイプ4に当たるもの。規定されている最少音圧レベルの10dBHLは満たしていないが、1000Hz・30dBと4000Hz・25dBは呈示できており、難聴のスクリーニングには問題ないという。
オージオメータと携帯電話の音源部分の比較。医療用のオージオメータとよく似た機能が、既に携帯電話には搭載されている
Javaアプリケーションを使うことで、サーバと連携した自動検査ソフトウェアの構築が行えた
中村氏が目指すのは、「普段は携帯電話、必要となれば検査機」という世界だ。 携帯電話を使ったモバイルオージオメータで聴力検査を行った結果を、電子カルテとしてホームサーバ上に保存。このデータを元に、テレビゲームやPC、カーナビ、キオスク端末などが発する音声を補正できる世界を目指す。「携帯自身で聴力を検査する。それに合わせてさまざまな機器で音質を補正してあげる」(中村氏)。 携帯電話を利用することで、専用の製品を買うことなく、インターネットと連携したシステムが構築できる。着メロ用として進化してきた音源チップが、iアプリやネット接続と組み合わさることで、デジタルデバイドの解消にも役立つ可能性さえ出てきた。
単なるコミュニケーションツールから、デジタルデバイドの解消にも役立つIT機器へ。急速な進化を遂げた携帯電話の活用方法は、ここまで広がる
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