Mobile:NEWS 2003年4月28日 06:06 PM 更新

QVGA画面が、画像のクオリティ劣化をもたらす?

505iに標準搭載されるQVGA液晶。画素数にして従来の3倍以上になっているにもかかわらず、ダウンロードできるファイル容量は2倍にしかなっていない。「505iは急速に画質が落ち込む領域に入っている」と富士写真フイルムは警鐘を鳴らす

 ハイエンド携帯電話のメインディスプレイは、今後のきなみQVGA対応(240×320ピクセル)となる(4月10日の記事参照)。象徴的なのは、NTTドコモの「505iシリーズ」だ。全機種にQVGA対応液晶を搭載し、従来よりはるかに高精細な表示を特徴とする(4月8日の記事参照)。

 ところが、そこに表示する画像のクオリティは単純に“美しくなった”と言い切れない。ダウンロードできる画像のファイルサイズに制限があるからだ。

505iは急速に画質が落ち込む領域に

 「確かにキャッシュは倍になったが、画面の情報量は倍ではない。従来と同じやり方でやると、かなり画質は悪くなる」。富士写真フイルムの電子映像事業部開発部技術主席 兼営業部新規ビジネス統括主席の羽田典久氏は、そう話す。

 従来主流の132×176ピクセルのディスプレイに比べると、QVGAの画素数は約3.3倍。しかし、ダウンロード可能なファイルサイズ制限は、10Kバイトから20Kバイトへと2倍にしかなっていない。

 JPEGの画質を見る際に、気をつけなくてはいけないのはビットレートだ。羽田氏によると、画質はビットレートにリニアに比例するわけではなく、ある一定のビットレートから下は急激に画質の劣化が進むという。特に、解像度が低い場合はビットレートの影響が顕著に出る。

 「急速に画質が落ち込む領域に、505iシリーズは入ってしまっている」(羽田氏)。


富士写真フイルムの資料より

解像度\ファイルサイズ10Kバイト20Kバイト
132×176約3.53bpp約7.05bpp
240×320約1.07bpp約2.13bpp
bpp=Bit Per Pixel

画質向上のためには、より厳密なビットレートコントロールが必要に

 では505iシリーズで、どのようにしたらより高品質な画像を生成できるのか。1つは、制限である20Kバイトにできる限り近づけることだ。「かなり精密なビットレートコントロールが必要になる」と羽田氏。

 同社は「Keitai Picture」という携帯電話向けの画像変換サービスを手がけているが、ここに厳密なビットレートコントロールの技術が生かされているのだという。

 「デジタルカメラの登場初期、富士写以外は、1つのメディアに(撮影した画像が)何枚入るのか分からなかった。しかし我々はフィルムメーカー。1枚のメディアに何枚入るのか、保証したかった」。

 従来とは異なり、505iでは“どうやってその画像を変換するか”で品質が大きく変わることに危惧しながらも、「難しい課題を与えてもらったので、培ってきた技術の出番ができた」と羽田氏は話す。


単に圧縮率を指定するだけでは、元画像の違いによりできあがるファイルサイズは異なってくる。低ビットレート時には、いかに限界のサイズに近づけるかが画質を左右する


ビットーレートコントロールだけでなく、余分な高周波成分やノイズを抑えるフィルタが画質に大きく影響する

 同社では、QVGA液晶の普及に伴い、小さな画像をできるだけ美しく拡大する技術も近々提供する予定だ。例えば、iショット(S)で撮影した画像は、505iシリーズで閲覧した場合、非常に小さく見えてしまう。「せっかく画面が大きくなっているのに、表示が小さいままではもったいない」(羽田氏)。


毛糸のボケ具合や、肌や背景の色合いの滑らかさに注目してほしい。低ビットレートの画像を拡大する際にも、利用するツールによって画質が大きく変化する

 QVGA液晶の搭載は、単に画像が精細になった──だけのことを意味していない。3倍になった画素数に対して、ファイルサイズは2倍。もともとビットレートを抑えてあるだけに、作り方によって画質が大きく変動する。505i向けに美しい画像を提供するのは、難度の高いテクニックが必要になってきそうだ。



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関連リンク
▼ 富士写真フイルム
▼ 富士写真フイルム Keitai Picture

[斎藤健二, ITmedia]

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