AirH"改良で再成長狙うDDIポケット契約者数の足踏みが続くDDIポケットだが、1)エリア拡大 2)AirH"アルゴリズム変更 3)圧縮サービス全ISP対応 などでAirH"の基本機能を向上。ユーザー数を300万に戻して再成長を目指す。
定額制データ通信サービスAirH"導入から2年半。データ特化の姿勢を打ち出すことで、苦しい時期を脱したDDIポケットだが、契約者数の足踏みが続いている。 「来年上期までに法人100万、AirH"ユーザー100万。加入者を300万まで戻して再成長を」──。DDIポケットの経営企画本部長 喜久川政樹氏は、来年の目標をこう話す。
現在のPHS市場は、ユーザー層が大きく入れ替わっている最中だ。音声通信を利用していた若年層が解約する一方で、データ通信ユーザーが伸びている。
「データ通信、法人音声といった新たに創出したマーケットで契約者を伸ばしているが、個人の音声が減っているので加入者は全体で微減。売り上げは減収、ただし利益はどんどん伸びて増益」というのが、DDIポケットの現状だ。 戦略としては、法人データ通信の普及を促進させると共に、鈍化が見られる個人向けデータの再活性化を狙う。そのため、AirH"の大々的な基本性能向上に手をつけると共に、将来的には“256Kへの高速化”など機能向上の実現を目指す。
「この数年、あまりエリア拡大をやっていなかった」というDDIポケットだが、今年度は積極的にエリアを拡大し、人口カバー率95%以上を目指す。
さらにスループット対策に取り組む。“128K”とうたっていても、回線をシェアするパケット通信の特性上、混んでくるとスピードが出にくかった。このことは、「今年の2月は、イメージ的に言うと、64Kの回線交換ほどもスピードが出ていなかった」というようにDDIポケットも認識している。 PHSは、最も電波状況がいい基地局に接続するアルゴリズムを使っているが、これが特定の基地局への接続集中を招いていた。これがスピードが出にくくなった理由だ。 都心であれば、通常40個程度のアンテナを捉えることができるので、周辺の基地局に接続を分散させる新アルゴリズムを導入する。併せて、今年度中に1000局を増設し基地局の密度を上げる。
スループット対策を施した結果、大手町などでは実測20Kbpsだったものが、97Kbpsまで向上したという 基地局、アルゴリズムのほかに、データ圧縮サービスも適用範囲を拡大する。不要ヘッダを効率化したりデータを圧縮することで体感速度を2〜3倍向上させる圧縮サービスだが(2002年9月の記事参照)、これまではPRIN/DIONでしか利用できなかった。これを、12月から順次、ほとんどのISPで利用できるようネットワークを改善する。
さらに、今後のAirH"進化の方向性も示された。 ひとつは、現状32K×4チャンネルで実現している128Kパケット通信(2002年3月の記事参照)の高速化だ。基地局密度の高い場所では、8本程度のチャンネルを束ねることが可能だとDDIポケットは見ており、これにより256Kパケットを実現する。既存のインフラに大きな変更が必要ないため、効率的な方法だ。 合わせて、チャンネルあたりの速度を倍増させ、64K×4チャンネルで256Kを実現する方法も検討中だ。展示会などで何度か技術デモも行っている(7月16日の記事参照)。 「どちらか、ではなく、やれれば両方やりたい。来年度以降、早い時期に出せるよう進めている」(DDIポケット) なお1Mbpsの高度化PHSについても(10月8日の記事参照)、「ニーズを見ながら1Mも考えていきたい。安い料金でスピードを上げることにはすべてチャレンジしていきたい」と話した。
バックボーンインフラの高度化も、道が示された。 PHSの音声やデータは、基地局からISDNでNTT局舎まで引かれ、NTTの交換機を通してNTT電話網や自社IPバックボーンに流れていく。こうした一部に残っているNTTの回線や交換機を完全にバイパスする計画だ。 NTTのアクセスチャージが上がる可能性に対して防衛手段となるほか、将来的に音声もIP化することが可能となる。 今年の秋からトライアルを始め、来年くらいから大規模に導入。データトラフィックの8割程度を、自社のIPバックボーンに流す計画だ。 また、“数百グラム程度”という超小型基地局の構想も明かされた。屋内で発生する大量トラフィックに対応するためのもので、LANインタフェースで接続できる仕様とすることでオフィスへの導入を容易とする。
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