番号ポータビリティ導入は“前提”の方向へ「番号案内でいいのでは」という主張の目立った第2回の研究会から一転、番号ポータビリティ研究会第3回では、番号ポータビリティ導入は前提──という流れになってきた。社会全体の便益を考えた場合、おそらくメリットのほうが大きいことも後押ししている。
「番号ポータビリティを行うか、行わないか、という議論から、“いつかは行うんだ”と携帯事業者の覚悟が決まった、という印象」(構成員の一人、インボイスの木村氏)──。総務省主催の携帯電話番号ポータビリティ研究会第3回の内容は、まさにこの表現がぴったり来る。
第2回の研究会(11月25日の記事参照)は、900億〜1800億円程度(総務省試算)と見積もられる番号ポータビリティ(MNP)のコストをかけなくても、番号案内などで利用者のニーズを満たされるという携帯キャリア側の主張と、MNPを行うのが前提という総務省や各有識者の議論がすれ違った。 今回、論点は、通信キャリアの投資額ではなく社会全体が受ける便益がどうなるかに移ってきた。 ざっくりとした試算だが、本荘事務所の本荘修二氏が挙げた数字は面白い。本荘氏は、MNPがないことにより、ユーザーがさまざまな埋没コストを負担していることを指摘した。 MNPなしでキャリア変更していたユーザーは、名刺やレターヘッドなどの刷り直し、新番号の通知の手間がかかる。電話がかかってこなくなるコストや、かけてもつながらないことでの印象悪化もコストだ。 相手の番号が変わることで、発信者側もコストを負担することになる。アドレス帳やデータベースの更新、番号案内を聞いてかけ直す手間、連絡先が分からなくなるコストなどだ。 MNPがなかったため、キャリアを変更しなかったユーザーは、価格や質、エリア、サービス、選択できる端末が限定されるなどのコストを支払っている。 「MNP欠落によるコストがいろいろある。およそ年間1000万人程度が(キャリアを)スイッチしている。一人あたりのコストが1000円と仮定しても年間100億円。埋没コストとしてかかっているものだけで数百億円ある」(本荘氏) MNPがないことによるユーザーの不便を換算すれば、1000億円程度の設備投資は、社会全体で見れば十分にペイするという理屈である。
さらに前回の携帯キャリアの意見を受けての反論も相次いだ。アジアネットワーク研究所の会津泉氏は、三つのポイントを挙げてMNPを擁護する。
さらにアクセスメディアインターナショナルが独自に行ったMNPに関する調査結果を示し、キャリア4社合同のアンケート調査結果と異なり、ユーザーの47%がMNPの利用意向があるとした。「アンケートの母数や聞き方によって意向が変わる可能性がある」(会津氏)
これらの議論を受けて、携帯キャリア側の態度も軟化してきた。「少し皆さん誤解している。(MNP投資によって)損するから嫌だといっているのではなく、(MNP投資額)1000億円が無駄か無駄じゃないかを議論したい。(MNPに)抵抗するために言っているのではない。(MNPの)成果を出すために言っている」(ドコモ) そもそもMNP導入に積極的だったボーダフォンを除き、携帯キャリア3社はほぼ同様の考えだ。「利便性に合う投資かどうか、それを見極めたい」(KDDI) MNP投資の意味があるかどうかは、ユーザーニーズと共に、社会全体の便益がどのくらいあるかが判断の基準となる。どの程度の規模の分析になるかは決まらなかったが、データを揃えた上で、「何らかの計算はやったほうがいい」(研究会座長の斎藤東京大学名誉教授)。 そして基本的にはMNPをやるという前提で──という総務省の意向もあり、次回以降の研究会ではMNP導入を前提とした議論に進む見通しだ。 ただし、「MNP導入は前提とするが、先に番号案内など投資額の小さな施策を行い、その上でMNP導入時期を検討する」という、“2段階導入説”もツーカーが積極的に主張している。“MNPをやる”ということは、取りあえずの了解事項となりそうだが、その時期についてはまだまだ揉めそうだ。
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