インタビュー
Mobile World Congress 2018:

5G商用化に向けた現状と課題は? ドコモの5G推進室 室長 中村氏が語る (1/2)

いよいよ2019年に商用サービスが始まる「5G」。その中で先導して研究開発をしているのがドコモだ。同社が取り組んでいる5Gの現状と展望を聞いた。

 スペイン・バルセロナで開催された世界最大規模のモバイル展示会「Mobile World Congress 2018」の会期中に、NTTドコモ 5G推進室 室長の中村武宏氏にインタビューする機会を得た。2019年に商用サービスが始まるといわれる「5G」。NTTドコモの取り組みの現状と課題について伺った。


NTTドコモ 先進技術研究所 5G推進室 室長 主席研究員の中村武宏氏

5Gの標準化は「ほぼまとまった」段階

―― いよいよ2019年に5Gの商用サービスが始まるといわれています。ドコモの現状について、聞かせてください。

中村氏 昨年(2017年)末に、3GPPによる5Gの標準化の仕様は一応完成しました。ですので、それに合わせて開発をどんどん進められる状況になりました。ただ、弊社の標準化関係者から聞くところによると、その仕様にはオプションが多いんです。いろいろなケースに対応するためのオプションがあるんです。そのため、どのオプションを使うかによって、うまくつながらないという問題が生じかねないので、通信事業者やベンダー間で、できるだけ整合を取らないとなりません。

 その調整作業には時間がかかりますし、いろいろな組み合わせでの試験も行わなくてはなりません。もう1つ、周波数という課題があります。これまでの議論の中で、3つの周波数帯に絞られていますが、最終的に割り当てされないと、できないこともあります。総務省は「2019年3月までに」と話していますが、2020年の導入が決まっていますし、もっと早くしていただかないと厳しいです。

―― 3つの周波数帯とは?

中村氏 3.7GHz帯、4.5GHz帯、そして28GHHz帯です。

―― 割り当てが決まらないとフィールドでの試験ができないのでしょうか?

中村氏 最終的な試験は物ができてからですが、今のところは、全てを想定して準備を進めています。

―― その「オプション」が、キャリアやメーカーよって異なりそうなのですか?

中村氏 何もしないとそうなってしまいます。ベンダーさんも、あらゆるオプションを全部試験しなくてはならなくなります。それでは時間的に厳しいですし、仮に完全に試験ができないと、導入後につながらないという問題が起きかねません。ですので、システムの安定性を確保するために、オプションはできるだけ絞っておきたいと考えています。

―― そのオプションの問題も含め、標準化の議論は昨年末で完了したのですか? 引き続き、議論は続けられるのでしょうか?

中村氏 どのオプションを使うかについては、3GPP内でやるのか、外でやるのかは分かりませんが、どこかでやらないといけないという認識です。5Gは「リリース15」という仕様を使うのですが、昨年末に完了したのは、その一部が「ノンスタンドアロン(LTEと組み合わせて5Gを運用する方法)」と呼ばれる部分です。われわれは「ノンスタンドアロン」を使うのでいいのですが、「スタンドアロン(5Gのみで運用する方法)」と呼ばれる部分は、今年(2018年)の6月頃までにまとまって、それで「リリース15」が完成します。ベンダーさんは「スタンドアロン(5Gのネットワークが独立して稼働するもの)」まで入れ込まないといけないわけです。

―― では、標準化はまだ完全ではなく「ほぼまとまった」という段階?

中村氏 そうですね。

―― そもそも5Gの電波には、どのような特性があるのでしょうか?

中村氏 実は「ミリ波」と呼ばれる高い周波数帯は扱いにくいんですよ。それを、何とか技術で克服しているんです。低い周波数に比べると、高い周波数帯はまだ空いていますし、広い帯域を取りやすいというメリットはあります。ですので、一度に大きなデータを送りやすい。でも、飛ばないんです。飛ばないし、曲がらないんです。かつては「ミリ波なんて使えるわけないだろう」と言われていたものを、今使おうとしているわけです。

―― 5Gも、3GやLTEのように、全国に広げる計画ですか?

中村氏 5Gの定義にもよりますが、LTEも当然ながら、今後もグレードアップしていきます。それも5Gの一部でもあるんです。広いエリアをカバーするには既存の周波数帯に加えて、3.7GHz帯や4.5GHz帯を活用するというのが基本路線。高い周波数帯は、日本全国というのはちょっと大変なので、マーケットニーズに従って活用し、じわじわと広げていくというイメージです。

5Gでは「遠隔操作」が重要視されている

―― ドコモは早くから5Gに取り組んでいた印象がありますが、世界的な5Gへの移行に向けて、ドコモの役割や強みはどこにあるのでしょうか?

中村氏 われわれは、オペレーターにしては珍しくR&D部門を持っています。5Gだけじゃなく1Gからずっと、長き歴史において、技術開発やシステム開発で世界をリードしてきたという自負があります。5Gも、世界がまだ「ファ」も言ってない時代から研究も着手して、技術的に先導してきましたし、エンジニアが大勢います。MWCでも、4年くらい前から5Gの展示をしていますが、技術力においても優位性を自負しています。

―― 5Gの特徴として、高速・大容量・低遅延といったことが挙げられますが、4Gに比べて具体的にどのようなメリットがありますか?

中村氏 これまでに、さまざまな業界の方々の協力を得て、いろいろなトライをしてきて、デモも行ってきました。それを通して、多くの方に「5Gはこんな感じで使えるのかなぁ」というイメージは持っていただけるようになったと思います。われわれ自身も、かなり具体的なイメージを持てるようになりました。“5Gの種”を見いだして、それをアピールできた。それがこの1年の進展です。以前よりも「こんなことに使えそうだ。楽しそうだ」 という感触があります。

―― 5Gを用いたトライアルなど、ここ1~2年の動きの中で、中村さんが特に注目されている5Gの活用法はありますか?

中村氏 遠隔操作系は、非常に重要視されているように思います。比較的新しい分野ですが、これから、もっと面白いことになりそうだなぁと。今回出展したロボットによる遠隔操作や、コマツと行っている建機の遠隔操作もそうですが、総務省など政府系の方にも興味を持っていただいています。労働者不足など、日本の社会的な問題の解決にもつながるかもしれません。遠隔診療なども社会貢献につながると認識しています。

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