PANTONE®シリーズの集大成に――「PANTONE® 6 SoftBank 200SH」の“世界最多25色”が完成するまで（2/2 ページ）

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形状に最適なカラーや質感の調整に3カ月

　こうした質感を重視したカラー展開は、端末の形状やデザインを意識したものだと河上氏と佐藤氏は言う。

　「ボディの美しい曲面形状に合わせ、それぞれの色が引き立つように質感も考慮し選択しています。例えば、淡い色はパール系、高彩度の色はメタリック系を用いるなど、個々の色が持つ雰囲気を質感で表現しています」（佐藤氏）

　例えば、テンキーのあるフィーチャーフォンなら、背面パネルとキーに使う塗料の色は異なっている。他の部分で使う塗料をキー部分に使うと、数字や文字が見にくくなることがあるからだ。また、端子カバーなど、素材の違いでも塗装の仕方が異なってくる。PANTONE® 6でソリッドカラーがないのは、メタリックやパールなど、光る素材が入っている方がボディの曲面を引き立たせるからだ。

　こうしたカラーの調整には、トータルで3カ月ほどかかるという。決めた色をモックアップに塗装する調整で約1カ月。塗装されたモデルを見ながらソフトバンクモバイルとシャープ両者で25色を決定し、量産用の塗料に置き換えるのに1カ月。さらに、実際の生産ラインで塗装してみて、しっかりと色が出るかを確認し、調整するのに1カ月かかった。

　「最後の調整が一番苦労します。ラインでは塗料の配合は決まっているので、あとは塗装の仕方の調整ですが、膜厚の違いでかなり変わります。“神様見本”（笑）という出来上がりとして目指す見本があるのですが、それに近づけるべくソフトバンクモバイルさんと一緒に確認していきます」（佐藤氏）

　「1色決めるにも、大きな机いっぱいにサンプルが何個も並ぶんです。その中から選んでいきます。量産ラインでは“神様見本”の色は出ないと言われながら、それでも調整を続けます」（河上氏）

　25色の調整に長時間かかったが、PANTONE® 6の開発期間そのものはほかの端末と同じ。それだけ、カラー調整はかなりのスピードで行われたという。もちろん、PANTONE社にも確認してもらったが、幸いにも、今までダメ出しが出たことはないそうだ。

シャープの吉田氏

　「開発陣が意気に感じて頑張ってくれたのが大きいですね。連休や夏休み期間でリカバリーしたりして、みんなが『やってやろう』という意識で取り組んでくれました」（吉田氏）

　「普通の機種ですと、カラー調整は海外でも色のサンプルを送ったり送り返したりして確認していくんです。でも、PANTONE® 6は工場に缶詰になって、しかもソフトバンクモバイルさんにも来ていただいて確認し、配送の時間を短縮しました」（佐藤氏）

　「調整に時間がかかって疲れてくると判断ができなくなります。頭をリフレッシュさせて、ちゃんと太陽光で見たときに、しっかり色が出ているかどうかを確認していました。夜遅くまで色調整していただいて、最終確認は朝、というのはよくやっていましたね（笑）」（河上氏）

曲面ガラスを引き立てる多層膜蒸着

　スマートフォンは、正面がほぼディスプレイで占められ、背面のカラーが分かりにくい部分がある。PANTONE® 6も、ホワイトとパステル系の計6色は前面の額縁部分が白く、他はすべて黒だ。前面にも背面のカラーを採用することは考えなかったのか、という質問に対し、検討したものの、「PANTONE®の歴史的な背景で、あえてこうしています」と佐藤氏は説明する。

　「フィーチャーフォンのPANTONE®シリーズには背面パネルにサブ液晶がグラフィカルにデザインされ、端末全体の色を引き立たせています。PANTONE® 6はそのスタイルを継承しています。前面のニュートラルカラーとの対比によって、背面のカラーが映えるようにデザインしました」（佐藤氏）

　さらに、PANTONE® 6のフロント部分には曲面ガラスが採用されている。そこに多層膜蒸着という特殊な加工が施されていて、光の当たり具合によってガラスの縁が光ったり表面の表情が変わったりする。正面に色を使わないのは、この多層膜蒸着と曲面ガラスの表情を生かしたいという意図もあるからだ。ちなみに、額縁が白いボディのガラス面は青っぽく光り、黒いボディの方はシルバーっぽく光るようになっている。

持ちやすいラウンド形状――孫社長からも強い要望

　PANTONE® 6は25色の多色展開に加え、側面にキーが何もなくシンプルなデザインで、角が大きく削ぎ落とされた持ちやすいラウンド形状も魅力だ。手によくなじみ、操作しやすいちょうどいいサイズだと感じる。「使いやすさ、持ちやすさはPANTONE®シリーズとしてのこだわりです」と佐藤氏は胸を張る。

　「背面のラウンド形状から正面の曲面ガラスまでがキレイにつながった、シームレスで一体感のあるデザインを目指しました。このデザインを実現できたことで、手なじみがよく、使いやすい造形になったと思います」（佐藤氏）

　背面が緩やかな曲面になっているのに加え、ディスプレイの縁も曲面になっていることで、背面のラウンド形状が正面まできれいにつながっていて一体感がある。ガラスの尖った縁で手が痛くなったり、持ちにくいと感じたりすることもない。側面には音量キーも配置されず、要素が少なく至極シンプルに仕上げられている。この無駄のない滑らかな形状については、ソフトバンクモバイル側、さらには孫社長からも強い要望があったという。

　「ラウンド形状にこだわりましたし、設計でどうしても出てしまうラインを極力なくしてほしいと、かなり強くお願いしました。PANTONE® 6では本当にシンプルな形というのを追求してしっかり実現できたと思います。社長もこの形状を気に入って、これはすごいということで、持ちやすさや形状、全体の完成度について何度かチェックがありました」（河上氏）

　「今後、技術革新があったら、また状況が変わって、もっと別な方法で薄くできるようになるかもしれません。今回はデザイン優先でこの構造になりましたが、毎回、毎シーズン、考えて検討していきます」（吉田氏）

誰でも使えるバランスの良い機能

　機能が絞られていた従来のPANTONE®シリーズと異なり、PANTONE® 6は機能が充実している部分も見逃せない。吉田氏は「バランスのいい商品に仕上がっていると思います」と評価する。

　4.5インチの液晶サイズや、動作の快適さを支えるデュアルコアCPUは「外せない部分」として、しっかり搭載。また、約1310万画素のメインカメラ、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信、防水・防塵など、必要な機能もカバーしている。しかし、過度にハイスペックにすることなく、幅広い層が満足できるスタンダードな商品としてベストセラーやロングセラーを狙える端末に仕上げた。また「どの年代の方にも使ってほしい」という思いから、各種設定を簡単にできるアプリをプリセットし、使いやすさや分かりやすさにも配慮している。

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　社内での検討に市場調査を経て絞り込まれた25色。そしてこれら25色をスマートフォンで再現するための調整――。ほかのスマートフォンよりも数倍カラー数が多いにも関わらず、従来と同じ開発期間で完成にこぎ着けたことからも、開発陣がいかに苦労したかは想像に難くない。色、質感、サイズ感、機能――すべてをバランス良くまとめたPANTONE® 6は、あらゆるユーザーが満足できる1台と言える。

　PANTONE® 6の背面パネルと端子カバーはセットで購入することもできるので、カラーを変えて楽しめる。PANTONE® 6の美しい形状を引き立てるべく、厳選され、こだわって実現された25色を、TPOに合わせて洋服を着替えるように楽しんでほしい。