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» 2015年02月16日 10時00分 UPDATE

産みの親が語る「Simeji」のこれまでとこれから――純国産アプリが見た“これが世界か!” (1/2)

AndroidだけでなくiPhoneでも人気のスマホ向け日本語入力アプリ「Simeji」。たった2人で始めたプロジェクトが、世界規模のネット企業に買収され、人気アプリに成長した経緯を産みの親に聞いた。

[PR/ITmedia]
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 現在、1300万以上の累計ダウンロード数を誇る日本語入力アプリ「Simeji」。国内のスマートフォンユーザーは5000万以上と言われており、スマホユーザーの5人に1人が使っている計算になる。

 Simejiは、エンジニアの足立昌彦氏とデザイナーの矢野りん氏の2人が開発した純国産アプリで、2008年11月にAndroidスマートフォン向けにリリースされた。当時はAndroid環境に満足な日本語入力環境がなかったことから支持を集め、その後パフォーマンスの改善や機能の追加などを繰り返すことで人気アプリに成長した。

 誕生以来、足立氏、矢野氏の2人3脚で開発が進められてきたSimejiプロジェクトだったが、2011年12月にバイドゥが全事業を取得。2人もバイドゥへ入社し、引き続きSimejiに関わることとなった。バイドゥのアプリになってからは、クラウドを使って変換候補を予測する機能や、辞書に登録されている顔文字や絵文字、アスキーアートの種類などを充実させ、ファンを若年層にも広げている。2014年9月には、iOS版もリリースされ、すでに200万ダウンロードを達成。App Storeの「BEST OF 2014」にも選ばれるなど、iPhoneユーザーにとってもおなじみのアプリになりつつある。

photo 「Simeji」の特徴(出典:Simeji Webサイト)

 そのSimejiを語る上で欠かせないのが、2011年末のバイドゥへの事業移管だ。なぜSimejiはバイドゥへ買収されたのか。またバイドゥはなぜSimejiに注目したのか。Simeji誕生の経緯とバイドゥの製品になって初めて実現したこと、そして今後の展望について、Simejiの“生みの親”であり、現在はバイドゥ モバイルプロダクト事業部マネージャーを勤める矢野りん氏に話を聞いた。

自分たちのために作ったSimeji

――(聞き手、ITmedia) Simejiは現在バイドゥのプロダクトですが、誕生したころはいわゆる個人開発のアプリでした。

バイドゥ 矢野りん氏(以下、矢野氏) アプリの開発はプログラマーの足立と私の2人で行っていました。足立は現在、バイドゥを離れて自分で別の事業をやっています。まぁ、実は私の夫なんですが……。

photo 矢野氏

―― え、そうだったんですか!

矢野氏 照れ臭くてあまりいっていないんですが……。彼はもともとAndroidの開発に非常に興味を持っていました。当時の開発者向けに配布されたAndroid端末には日本語の入力環境(IME)がなく、不便なので自分用に作ったのが始まりです。IMEは非常に使用頻度が高いアプリですから、必要としている人がたくさんいるだろうということで、マーケットに公開しました。

―― 自分たちが必要だと思ったものを作ったわけですね。

矢野氏 そうです。個人開発ですから辞書の部分など日本語変換のコアの部分を自前で用意するのは難しい。そこで初期のSimejiは「Social IME」(※)をメインで使わせてもらい、その後、オープンソースのOpen Wnnも移植しました。

※ネット経由で文字変換の辞書を共有できる日本語入力ソフト。変換エンジンのAPIが公開されており、Simeji以外にも使われている

―― その後Androidスマホが普及し始めたことで、ユーザー層が開発者コミュニティ以外にも広まっていったわけですね。

矢野氏 「ここをこういう風にしたらいいんじゃないか」とTwitterでばんばんアイデアをくれたりバグ報告をしてくれたり。それに対して30分後くらいに「直しました」というやり取りをすると、めちゃ盛り上がるんです(笑)。新機能のβ版を出しました、使ってみました、◯◯がダメです、落ちます、なんていう開発を通じたコミュニケーションが三日三晩あったりして、ネットゲームをやっているのと同じような感覚です。

―― フィーチャーフォン向けアプリでは絶対にできない、ある種の遊びだったわけですね。

矢野氏 そうですね。工夫すればもっと使いやすくなるし。だから、マーケットで1位を取りたいとか、フリーミアムでうまくやりたいみたいな観点がまったく欠けていました。ただ楽しかったんです。

―― Simejiが除々に一般層に広まっていって、ユーザーさんの反応は変わってきましたか?

矢野氏 2人でやっているときにAndroid Market(現在のGoogle Play)のレビュー欄で色々いわれることは、実はそんなにありませんした。Twitterで苦情とかバグ報告がメンションが飛んでくることはありましたが、主に褒めていただいたという印象ですね。私の性格上、褒めてもらったことしか覚えていないんですけど(笑)。

―― その頃はSimejiでビジネスをしようとか、広告収入を得ようとかいう仕組みにはなっていなかったのですか?

矢野氏 全然考えていませんでした(笑)。ただ、スキン機能が搭載できるようになったときに、スキンのページに広告を差し挟めるらしいというので、広告を入れたことがあります。でも、お金をいただいても、どうしたらいいのかわからなかったので、震災直後でしたから赤十字に全部寄付しました。

―― アプリの完成度が高まるにつれて、ユーザーの希望もどんどん大きくなっていったと思いますが、どの辺から、いわゆるビジネスを意識したプロダクトになったのでしょうか。

矢野氏 米国で日本人向けに売る端末にSimejiをプリインストールしたいというお話をいただいて、端末に合わせてアプリを調整したりということをしました。お仕事として少なくないお金をいただいたりして、このころから責任の大きさを実感し始めましたね。

―― 実績ができたということですね。

矢野氏 そうするとユーザーの声の質も変わってくるんですよ。「米国に住んでいて、スマホを使っていて非常に不便だったけれど、Simejiや皆さんのおかげで日本語の入力が快適にできるようになって嬉しい」という声をいただくようになって、もっと広まったらうれしいよね、という気持ちになりました。

 最初のビジネスが米国向けの話だったので、必然的に世界中に出て行くと面白いよね……という発想にもなりました。日本語を勉強している韓国や中国、インドのユーザーからコメントをもらうこともあり、当時から日本と海外を区別して考えることはなかったですね。

―― そこからバイドゥに移るきっかけ、経緯はどういったものだったのでしょう。

矢野氏 韓国や中国の人が使って喜んでくれたりしたことで、中国というキーワードは実はわりと初期からありました。タブレットの市場として中国が熱いということも数年前からいわれていて、ハードウェアを作る地域として、恐らく中国が数年でアメリカと肩を並べるくらいになるだろうと。そのすさまじい数のタブレットにもしSimejiが入ったら、すごいことになる――と考えたことはあります。

 また当時のバイドゥに技術者の友人がいました。非常に優秀な開発者で、誰もが知っているネット企業からバイドゥに移ってすごくびっくりしたのを覚えています。ご飯に誘って「なぜバイドゥに入ったの?」という、まさにこの取材のようなことを根掘り葉掘り聞いて、「バイドゥって結構面白いよ」という答えを聞いていました。

 そうこうしているうちに、また別の友人から「バイドゥのチンさんという人がいてね」という話をしてきたんです。チンさんとは、当時バイドゥの駐日首席代表をしていたチン・カイトウという人物で、今度はその方とお会いする機会をいただいたんです。

―― ほぼ同じタイミングでバイドゥに関わっている方との接点があったんですね。会社自体にも興味があったのでしょうか。

矢野氏 数ある世界企業の1つという認識でした。私は1年間ほどタイに住んでいたことがあって、日本の外で起こることに対して恐怖感が薄いというか。日本の会社じゃないからといって、その会社がどういう規模かなどに、あまり気にしないタイプでして。

―― そこからどんな風にバイドゥとの話が進んでいったのでしょうか。

矢野氏 チンさんに2回目くらいに会ったときに、単刀直入に「売ってくれないか」と。

―― スピード感が違いますね。

矢野氏 そうですね。本気なのかな? と思っていたところに電話がかかってきて、「もしもしチャールズです」と。今度は誰だと思ったら、現在のバイドゥ駐日首席代表をしているチャールズ・チャンでした。本当に突然、電話をかけてきたんですよ。当時、足立は転職してサンフランシスコにいたんですが、そこにも突然、中国本社の人間が5人くらい来て、お昼に誘われたと。その日から3日間、ランチ、ディナーと食事攻めだったそうです。

―― きっちり詰められたわけですね(笑)。そのとき、Simejiというとんでもないものを作っていたんだな、という実感はありましたか?

矢野氏 そうですね、一瞬、びっくりしましたね。この熱意は本物だなと。交渉の経緯でもSimejiの必要性を熱心に訴えてもらえました。

―― ところでその頃はSimejiはビジネスとして成立していたんですか?

矢野氏 してませんし、しようともしていませんでした。足立も私も本業がありましたし。

―― アプリだけ売却というケースも考えられたと思いますが、お2人ともバイドゥに入社されました。

矢野氏 IT業界の買収では人材も一緒にということはよくあることですから、我々もSimejiだけを手放すことは考えませんでした。最初から開発者込みでと考えていました。

―― それだけ業界内でも注目のアプリとなっていたSimejiですが、バイドゥ以外からもお声掛けはあったのでしょうか?

矢野氏 いくつかありました。バイドゥからの話だけではあまりにも様子が分からないので、状況が適切なのかどうか、比較検討みたいなことをした方がいいんじゃないかと。そこで数社に「もしSimejiを売るといったら買いますか?」と打診したことがあります。その結果複数から「全然ありですよ」と答えていただいて、おかしくない話だと分かりました。

―― 買収が決まったときは我々もすごく意外で、いろんな声をお聞きになったと思うんですが、その反応をどう思われましたか?

矢野氏 ネガティブな反応には「なるほどね」と感じました。でも多くの人に「面白いことをやってくれましたね」と言っていただいたのはうれしかったです。バイアウトという選択自体を面白がってくれた人もいますし、アジアの経済市場的に中国の会社ということを面白がってくれた人がたくさんいたのも、ありがたかったですね。

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提供:バイドゥ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia Mobile 編集部/掲載内容有効期限:2015年3月31日

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