News 2000年8月11日 09:17 PM 更新

利用者拡大の準備を着々と進める東京めたりっく通信

設立から丸1年を迎えた東京めたりっく通信。節目を迎えた同社は,ISPへの回線提供やDIYサービスをテコに,利用者数の大幅拡大を目指す。また,最大7MbpsのADSLサービスも検討中だという。

 NTT東西地域会社をはじめとするDSL事業者の乱立,ISDNの常時接続サービス,CATV事業者の台頭と,この1年で日本のインターネット接続環境は大きく変化した。常に,その先頭をきって走り続けていた通信ベンチャー,東京めたりっく通信も7月に設立1周年を迎えている。大手事業者が相次いで参入する通信業界において,ベンチャー企業の優位な点は,小規模であるがゆえの経営スピードだ。同社は,第3者割当増資によって60億円の資金を調達し,そのほとんどをサービスのための設備投資に回す方針を明らかにした。同社のサービスロードマップとDSL事業の現状について,東京めたりっく通信の副社長兼CEO,平野剛氏に話を聞いた。

ZDNN 7月に今年度中に東京23区全域にサービスを拡充すると発表しましたが,進捗状況はいかがですか?

平野 年内に23区内100局はすべてサービス可能になります。募集は9月から順次始めますが,現在それぞれの日程を調査しているところです。予定通り,各局5000回線を提供できるでしょう。ただ,今年はここまでで精一杯ですね。23区以外の関東圏については,来年が中心になります。

ZDNN 関東圏では,どのような地域が対象になるのですか?

平野 まず,横浜,立川,千葉あたりにブロードバンドアクセスサーバを設置する拠点を置き,その周囲にある電話局へサービスを広げる予定です。来年中に,順次サービスを開始できるでしょう。

 また,八王子のように,その地域のサービス希望者がまるで地域活動のように集まり,サービスを希望するケースもあります。こうした要望に応えるため,Webサイト上で専用のページを開く予定があります。八王子の場合は1000人程度が集まっており,こちらは今年中にサービスができそうです。

ZDNN サービスの信頼性向上という点では,どのようなアプローチをしていますか?

平野 システムの2重化はほぼ終えました。法人の需要にも十分に対応できるようになっています。

 実は,4月にSDSL(Symmetric Digital Subscriber Line)サービスを発表して,こちらは6月頃までは実験サービスのようなつもりでいたのですが,予想外に重要な業務に弊社のサービスを利用するケースが多かったのです。例えば,東証の株価をリアルタイムにWeb配信するサービスがありますが,そうしたケースにもわれわれのサービスが利用されています。それに応えられる体制を作りました。また,モデム(スプリッタ)のバージョンも上がり,信頼性の向上につながっています。

ZDNN 実際のサービス利用者は,どの程度の数になっているのでしょう。

平野 SDSLは,先週の段階で37件です,今週中には40件を超えるでしょう。また,ADSLのほうは1000件ほどです。そのうち,法人は1割程度です。

ZDNN サービス開始からの時間を考えると,かなり少ないように見えますが……。

平野 これまでのペースは遅かったのですが,6月末の「高速デジタルアクセス推進協議会」最終報告などによって,環境は変わりました。今後は,サービスの導入も加速するはずです。また,回線の開通はアウトソースしているのですが,現在は最大で300人/日程度の人員を動員できるようになりました。計算上は,1日で1000件を処理可能です。

ZDNN ZDNNの読者からは,「導入工事のとき,都合の悪い時間を指定された」といった声が聞かれました。サービス/サポート体制には変化がありますか?

平野 確かに,申し込みが殺到した時には,とんでもない時間を指定されるといったこともあったようです。現在は,サービスレベルの改善を目指して,アウトソース先との契約を見直しているところです。例えば,現在は土日の工事は受けていませんが,今後は若干の割り増し料金をいただくことで可能になる見込みです。そして,DIYを進めることで,より効率的に作業が進むようになります。

ZDNN ユーザー獲得のために,今後展開するサービスを教えてください。

平野 ISDNからの乗り換えキャンペーンなどを展開します。また,7月末に郵政省から認可を得て,ISP向けにDSL回線を足回りとして提供することができるようになりました。こちらは,今月末か,9月の始めには正式に発表できるでしょう。

 今秋には,端末の売り切りもできるようになります。現在のDIYサービスでは,配線を東京めたりっくが行い,ユーザーができるのはPCの設定程度だったのですが,ユーザーによる配線など,よりDIYに近いサービスが提供できることになります。ユーザーコストの低減はもとより,加入者の増加スピードを向上させることになるでしょう。

 ただし,これには事業者とショップの連携が不可欠です。地区毎に適応するモデムの仕様などが異なりますから。こうした問題に対処するため,事業者間でのルール作りも必要になります。「スペクトラムマネジメント」と呼ばれていますが,端末の売り切りが始まるころには,業界団体が作られることになるでしょう。

ZDNN ADSLのスピードは上がりますか?

平野 現在はAnnex AとAnnex Cの両方を提供していますが,秋頃にはAnnex Hを導入します。上り/下りとも2Mbps程度のスピードが出ますし,ISDNの干渉に強いという特性がありますので,将来的にはこれが主流になるでしょう。既に,プラネックス・コミュニケーションズなど一部の機器メーカーと交渉を進めています。

 また,フルレートDMTのAnnex Cといったサービスも検討しています。こちらは,7Mbps程度のスピードが出る見込みです。

東京めたりっく通信より,創業1周年の記念扇子をいただきました。シンボルマークの「め」が大きく書かれたものと,「TMC」の2パターン。「電車の中で広げれば,車内の視線を独り占め」(同社)のお洒落な扇子です。セットで5名の方にプレゼントします。電子メールのサブジェクトに「プレゼント希望」と明記して,こちら(zdnn@softbank.co.jp)まで御応募ください。住所と氏名もお忘れなく。
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[聞き手:芹澤隆徳, ITmedia]

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