News 2000年11月1日 11:19 PM 更新

「InDesign」ですべての「QuarkXpress」を置き換える──AdobeのBruce Chizen社長

米Adobeは,最新の出版デザインツール「InDesign」で「QuarkXpress」をリプレースする方針だ。そのため,価格面でも“魅力的な”製品にするという。

 米AdobeのBruce Chizen社長は,英語版の出荷を間近に控えた「InDesign」に触れ,将来はすべての「QuarkXpress」を置き換える,と自信のコメントを寄せた。InDesignはAdobeのプロ向け出版デザインツール。これまで英語版のみが出荷されていたが,次バージョンでは日本語版の提供も予定されている。


米AdobeのBruce Chizen社長

 Chizen氏は,「InDesignのクオリティには自信を持っている。将来はすべてのQuarkXpressを置き換える実力がある」と話す。既存のQuark Xpressに慣れたデザイナーたちには聞き捨てならぬ言葉かもしれない。使い慣れたツールを,そう簡単に手放すことはできないだろう。

 しかしChizen氏は「もちろん,既存のQuarkユーザーにツールの切り替えを促すのは容易なことではない。実際のところ,すべてのユーザーを獲得するには時間がかかると思うが,最初の年からある程度の成功を収めるのは間違いない」と続けた。その根拠は「InDesignは良いツールであると同時に,価格面でも魅力的な製品にするつもりだからだ。たとえば日本においても,マガジンハウスと,名は明かせないがもう1社の大手出版社が全面的にInDesignへの切り替えを決定している」(Chizen氏)。

 一方,将来的に紙ベースの媒体は減るのだろうか? との問いには「現在,Web,紙,ePaper(PDF)は均等な市場になっている。しかし,将来はWebとePaperが70%を占めるようになるだろう。デザイナーがファーストターゲットとするメディアも,紙ではなくWebになっていく」と答えた。

 ただし,紙ベースの電子出版市場が急速に萎んでしまうという意味ではない。Chizen氏は「ネットワークパブリッシングによって,市場は25%以上拡大すると考えている。その中で,WebとePaperの市場拡大が紙よりも早いということだ」と説明する。

 中でも,日本市場は同社の売り上げ全体の20%を占めており,またネットワークパブリッシングのインフラとしてワイヤレス,小型デバイスの市場でトレンドリーダーになっていることから,市場の牽引役としても期待しているようだ。ネットワークパブリッシングのプレゼンテーションにおいてChizen氏は,来年から始まるW-CDMAについて触れ,ワイヤレスでどこでも電子ドキュメントを入手できる環境が,すぐそこに来ていることをアピールした。

 しかし,日本ではワイヤレスIP接続サービスが既に多くのユーザーを獲得しているのに対して,米国では3Gへの移行タイミングも数年後と見込まれており,特に広帯域が急速に普及するという考え方には否定的な意見も多い。米国市場を主戦場とする彼らにとって,これはネットワークパブリッシング戦略の足枷とならないのだろうか。

 確かにワイヤレスIP接続の分野で,米国はかなり遅れている。しかし市場は急速に立ち上がるだろう。米国のワイヤレスキャリアは,ドイツテレコムの買収したボイスストリームが展開する戦略に刺激を受け,重い腰を上げようとしている。近いうちに変化が訪れるはずだ」と,Chizen氏は楽観的な見通しを語った。

関連記事
▼ Adobe,電子出版「第3の波」到来を宣言。出版クリエイター向けの新サービスも

[本田雅一, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.