News 2000年11月2日 08:04 PM 更新

デジタルTVではPCが主役?─NEC西垣社長

TBSの放送技術展示会「Media Parade 2000」最終日は,NECの西垣社長と,米Microsoftのバイスプレジデントである古川享氏が講演した。


NEC代表取締役社長,西垣浩司氏

 東京放送(TBS)の放送技術展示会「Media Parade 2000」最終日の11月2日は,NECの西垣浩司社長が基調講演を行った。西垣社長は,「TVのデジタル化で全メディアのデジタル化が完了する」としたうえで,「双方向時代のデジタルTVはPCが主役」との見解を示した。米Microsoftのバイスプレジデントである古川享氏は,音楽プロデューサーの松任谷正隆氏と共に登場。メディアの進化とそれに伴う表現方法の変化を対話形式で語った。

 「デジタル放送時代のNECの取り組み」と題された西垣社長の講演では,TVメディアを「最後までアナログで残った」と表現。各種メディアがデジタル化していく中でTVの出遅れを強調した。

 西垣氏は,IT革命を3段階で捉えている。まず第1の波はインターネットがメインフレーム主体であったころだ。そして現状は「IT革命は第2の波の上にある」とし,「あくまで音声用のインフラ(電話線)の上に築かれたインターネット環境」と表現する。これが,インターネット用に築かれたインフラの上に乗るようになったときに,第3の波である「I Society」がやってくるという。

 I Societyでは,個人と組織との力関係や,マーケットが変化し,政治の変化,さらには哲学の必要性まであると西垣氏は語り,「I Societyに向けて最後のランナーがデジタル放送だ」とした。また,2003年に始まる地上波デジタル放送に関しては,携帯電話などの端末での受信を考え,「携帯を持っていれば野球もその場で見られる」と期待を表した。

 ポストPCという言葉が盛んに聞かれる昨今だが,西垣社長はデジタルTV時代にもPCは大きな役割を果たすという。その理由として,デジタルTVの特徴の1つである情報の双方向性を挙げる。大画面高精細な映像を楽しむにはリビングルームは適しているものの「高度な双方向性を活かすにはリビングでは無理」,また双方向性メディアはパーソナルなもの,と述べ,インタラクティブなデジタル放送こそ,パーソナルなPCで見るようになる,という見解を示した。

 NECでは,以前からPCでTVを録画/視聴するための拡張カードやUSB機器を販売しており,10月16日にはTVの録画/再生機能を内蔵した「VALUESTAR E/T」シリーズも発売している。また,先日の「WORLD PC EXPO」ではPC用のBSデジタルハイビジョンチューナーカードも参考展示しており,TVをPCに取り込もうとする同社の姿勢を明確にしたものといえよう。

 講演では,「デジタル放送時代の TV in PC」として,実際に双方向なデジタルTVとPCとの連携例を挙げ,インタラクティブ性のほかに,アプリケーションとの連携や画像検索/編集といった面でPCが有効だという。


競馬中継を例に,馬券投票や予想ソフトとの連携も考えられる,とPC上でTVを見る利点が強調された

インターネットはのぞき穴!?

 米Microsoftのバイスプレジデントである古川享氏の講演では,スペシャルゲストとして松任谷正隆氏が登場。松任谷氏は,メディアの進化とそれに伴う表現方法の変化に興味を持っているという。


ソニーのネットワークウォークマンを片手に,未来の音楽のあり方を語る,米Microsoftのバイスプレジデント古川享氏と,松任谷正隆氏

 「21世紀のメディア像〜デジタル放送からブロードバンドへ」というタイトルの元,デジタル放送とインターネットの融合というトピックから講演は始まった。古川氏は,下りの24Mbpsという速度に比べ,上りが2400bpsというのはあまりに遅すぎる,と現状のデジタル放送の方式を非難しながらも,デジタル放送のポイントは双方向性にあるとし,インターネットを意識させないインタラクティブなTV放送が重要だと語った。

 ブロードバンドインターネットに関しては,音楽プロデューサーである松任谷氏に古川氏が質問。実際にホームページも開設している松任谷氏だが,56Kbps程度の低速なインターネット環境に関しては,「まだ未完成な感じ。未完成という面白さがあった」という。現在のインターネット上でのライブなどは「作品ではなくのぞき穴感覚」で製作できたとのことだが,ブロードバンドインターネットが普及してきたら,インターネットライブは簡単にはやれなくなるという。「今後,(ブロードバンドでは)しっかりとした作品を提供しないとプロとしてのプライドが許さない」(松任谷氏)。

 インターネット上の音楽に関しては,「昔は大金持ちが自分のために楽師を雇って演奏したもの。今も一人ひとりのために演奏ができるようになるといいな」とのこと。自分の放送局が欲しい,と語ったこともあるという松任谷氏。インターネットは個人放送局となり得るのだろうか?

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関連リンク
▼ Media Parade 2000
▼ NEC 121ware.com

[斎藤健二, ITmedia]

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