News 2000年11月15日 10:46 PM 更新

ナショナルセミコンダクター,QNXリアルタイムプラットフォーム搭載のGeode WebPadを発表

組み込みOSというあまり表に出てこない世界でも戦争は起こっている。

 ナショナルセミコンダクタージャパンは,11月15日,「QNXリアルタイムプラットフォーム」を移植した「Geode WebPad」を公開した。

 Geode WebPadは,ナショナルセミコンダクターのx86互換チップ「Geode」を使ったインフォメーションアプライアンス(IA)のリファレンスモデル。このタブレット型のIAは,1998年の米「COMDEX/Fall」で初めて公開された。

 Geode WebPadに移植されたQNXリアルタイムプラットフォームとは,QNXソフトウェアシステムズのリアルタイムOS(RTOS)。QNXは,ウインドリバー(VxWorks)やマイクロウェアシステムズ(OS-9)などと並ぶ,組み込み用RTOSの大手だ。QNXのRTOSは,3ComのIA「Audrey」に採用されており,PalmからCiscoのルータまでさまざまな機器への搭載が噂されている(10月20日の記事を参照)。

 ナショナルセミコンダクターのIAグループマーケティング副参事である渡辺敏弘氏は,QNXを採用した理由として,「20年にわたるx86でのRTOSでの実績を重視した」と話している。

 QNXリアルタイムプラットフォームは,マイクロカーネルを採用したQNX Neutrino RTOSをベースとした開発環境だ。

 マイクロカーネルベースのNeutrinoは,システムまで含めてそれぞれのアプリケーションが独立したメモリ空間で動作する。これによって,高い信頼性が得られ,モジュール単位で起動/停止ができるため,ダイナミックにシステム構成の変更が可能になるという。QNXのテクニカルマネージャの山中勝氏は「(開発中に)必要とするモジュール部分だけリスタートすればいいので,システムのリブートが不要」と,開発効率の高さを誇る。

 また,ファイルサービスやシステムサービス,ネットワークサービスが,マイクロカーネルから独立しているため,ネットワーク透過型のシステム構成の作成が容易だという。「ダイレクトファンクションコールに比べると,オーバーヘッドが多少起きる」が,ネットワーク透過型のシステムを作る場合,カーネルからネットワーク先のアプリケーションやサービスに直接アクセスできるため「通常のミドルウェアを介すのに比べたら速い」(山中氏)

 さらにLinux同様,POSIXに準拠している。「Linuxで開発された資産などを持ってきてもほとんど動く」(山中氏)

 GUIとしては,「Photon microGUI」という製品が組み込み可能だ。「日本語環境はバックスのVJEに対応している」(山中氏)

 開発セットはUSBとIEEE 802.11bの無線LANをサポートし,Voyagerと呼ばれるWebブラウザ,Macromedia Flash,RealAudio,PDFビューワなども含まれる。

 信頼性やメンテナンスの面から,コアコンポーネントのみソースは非公開だ。ほかの部分はソースを公開する。商用以外の利用は無償。「Get.qnx」からダウンロードできる。

 これまでx86に的を絞ってきた同社だが,「これからは水平展開していく」という。x86に加え,PowerPC,MIPS,SH4,そして期待されていたARMへの対応も果たした。組み込み用という目立たぬ場所にあって,QNXは大きな飛躍を果たすかもしれない。

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[斎藤健二, ITmedia]

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