News 2000年12月11日 11:59 PM 更新

Palmやケータイを飛躍的に速くする──MediaQが新グラフィックチップを発表

米MediaQが発表した「MQ-Tenerife」は,64ビットの2Dグラフィックコアに256KバイトのSRAMや周辺機器コントローラを統合した携帯端末向けのグラフィックチップ。低消費電力とパフォーマンスの両立を目指して開発された。

 米MediaQは12月11日,携帯端末向けのグラフィックチップ「MQ-Tenerife」(テネリーフ:開発コード)をアジアおよび欧州で一斉に発表した。携帯電話やPalmデバイスに搭載することで,CPUを画面描画やメモリ管理といった処理から解放し,また表示の大幅な高速化を実現するという。

 米MediaQは,S3やシーラス・ロジックといったPC用グラフィック分野出身のエンジニアらが中心となって1997年に設立したファブレスの新興チップベンダーだ。これまでに出荷した「MQ-100」および「MQ-200」のラインは,NECや日立製作所,日本ビクターといった大手国内を含む15社に採用された実績を持っている。

 今回発表されたTenerifeは,MQ-200よりも消費電力の低さにフォーカスした,小型端末向けの製品ラインだ。64ビットの2Dグラフィックコア(MQ-200は128ビット)にビデオメモリとして256KバイトのSRAM(MQ-200は2Mバイト)を内蔵し,さらに各種周辺機器のコントローラを備えた統合型グラフィックチップになっている。グラフィックコアには2Dアクセラレーション機能が搭載され,同社のベンチマークテストでは「2Dアクセラレーションを使用しない状態と比較して80倍速くなった」(同社日本法人セールスマネジャーの花崎勝彦氏)という。内部バスも64ビットで,最大384Mバイト/秒の帯域幅を誇る。

 統合された周辺機器コントローラは,FPI(フラットパネルインタフェース)やUSBのホスト&デバイス,I2Sオーディオインタフェースなど。USB経由で外部のBluetoothチップと接続することも可能だ。「エリクソンのBluetoothチップで検証中」(花崎氏)ということもあり,携帯端末のBluetooth対応を予定しているベンダーには有効なソリューションとなるかもしれない。

モジュール単位で電源をオン/オフ

 Tenerifeの持つもう1つの特長は,「DynamiQ」と呼ばれるパワーマネジメントシステムだ。これは,アクセスのないモジュールのゲート・クロックをダイナミックにオン/オフし,電力消費を抑えるというもの。例えば,CPUと2Dアクセラレーションが稼働しているときは200〜350ミリワットの電力を消費するが,画面表示のみ(LCDリフレッシュ)の場合にはFPIだけを駆動させ,消費電力を35ミリワットにまで落とすことができる。また,グラフィックコア内で稼働中のパイプライン・ステージでも,「実データのロードがないパイプライン・レジスタへのクロックを切ることが可能だ」(花崎氏)という。

 サポートする画面サイズは,16ビットカラー(6万5536色)で最大320×320ピクセル,8ビットなら640×240ピクセルまで。組み合わせるCPUは,NECのVRシリーズ,東芝のTXシリーズといったMIPS系に加え,IntelのStrongARM,MotrolaのDragonBall,日立製作所のSHシリーズと多彩だ。対応OSのリストには,Windows CE,Palm OS,EPOC,Vx-Works,Linuxと携帯機器向けメジャーOSの名前がずらりと並んでいる。

 Tenerifeには,フル機能の「MQ-1132」と周辺機器コントローラ部を省いた「MQ-1100」の2つがある。価格は,MQ-1132が1万個ロット時で12.05ドル。MQ-1100は10.95ドル。パッケージは,MQ-1132がBGA,MQ-1100はTGFPを採用している。

 なお,花崎氏によると,同社は既に「国内ベンダーを含む数社の携帯端末メーカーと交渉に入っている」という。2001年には,高速な2Dアクセラレーション機能を持ち,動画もスムーズに動くPalmデバイスや携帯電話が登場してくるはずだ。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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