News 2001年3月2日 07:44 PM 更新

広範な性能レンジをカバーする0.13μメートル版モバイルPentium III

Intelが,今年後半にも出荷する0.13μメートルプロセスのモバイルPentium III。これには,新しい電圧制御技術や「Deeper Sleep」モードの追加など,さまざまな改良が施される。

 「Intel Developers Forum Spring 2001」(IDF)の基調講演で披露されたモバイルPentium III/1GHzだが,Intelは今年後半,さらに高性能なモバイルPentium IIIをリリースする。ここで言う高性能とは,単に高クロックということではない。高いクロックでの動作と,低い電圧での低消費電力動作という2つの相反する要素をバランスさせた,広範な製品に適用できるプロセッサに仕上がるからだ。

 今回のIDFで公開された1GHzのモバイルPentium IIIは,現行製品を高クロック化したもの。動作電圧を1.7ボルトに高めることで高クロック化を果たしているが(従来は1.65ボルト),根本的には既存製品との違いはない。

 しかし,今年後半(噂では第3四半期)に発表,出荷される予定の新モバイルPentium IIIは,0.13μメートルプロセスを採用する。また,2次キャッシュメモリの強化,高さをさらに抑えたパッケージ,システムバスの高速化,「IMVP II」と呼ばれる新しい電圧制御技術,プロセッサの処理に余裕がある場合に消費電力を減らす「Deeper Sleep」モードの追加など,さまざまな改良が施される。

 2次キャッシュメモリの強化やシステムバスの高速化などは高性能化を意味しており,Deeper Sleepモードの追加とIMVP IIの実装は消費電力の削減を意味する。0.13μメートル版のモバイルPentium IIIは,さまざまな意味で従来の製品を超える製品になる。

デュアルVtプロセスでクロック向上

 Intelの0.13μメートルプロセスは,省電力とハイパワーの両立を目指して作られており,広範な性能レンジを1つの設計でカバーできる。その1つがリーク電流が増え始める電圧(Vt)だ。

 リーク電流とは,本来流れないはずの電流が,水漏れのように少しずつ流れてしまうこと。リーク電流が流れないよう,半導体には絶縁皮膜がプロセスの過程で加えられる。リーク電流は動作に関係のない無駄な電流であり,多すぎると消費電力が大きくなってしまう。このため,きちんと絶縁することがハイパフォーマンスなプロセッサを作る上で不可欠。

 ところが,低い電圧で半導体素子を駆動する場合,Vtが高すぎると同じ駆動電圧でも動作クロックを向上させにくくなる,という問題が生じる。つまり,低電圧動作と高クロック動作はトレードオフの関係にあるわけだ。低電圧での駆動は,消費電力の低減に絶大な効果を発揮するが,そのためにはハイパフォーマンスを目的とした高Vt値のプロセス設計では対応しきれない。

 そこで,Intelの0.13μメートルプロセスでは,大多数の部分を高Vt値にするものの,クリティカルパスには低Vt値の絶縁を施す「デュアルVtプロセス」と呼ばれる手法を採用した。

 これにより,高クロック周波数動作のハイエンドPentium IIIから消費電力あたりのクロック周波数を重視した超低電圧版までを同一プロセスでカバーする。

最新ACPIの機能を生かす

 0.13μメートル版モバイルPentium IIIはまた,SpeedStepの次世代版「SpeedStep Technology 2」が搭載される見込みだ。これまでもSpeedStep 2が開発されていたことは知られていたが,どの時点で搭載されるかは明らかにされてはいなかった。

 もっとも,SpeedStep 2がどのような技術かは不明だ。ただし,マイクロソフトはWindows XPで対応するACPIのバージョンを2.0にしようとしている(実際には2.0のフル実装は間に合わず,2.0の一部機能を取り込む)が,この中にはOSがプロセッサの動作状態をコントロールするための機能が多数含まれる。

 たとえば,Windows XPには,アダプティブという動作モードが用意されており,実行している処理に合わせて自動的にプロセッサの速度を変更させることが可能になる。今のところは推測にすぎないが,こうした最新ACPIの機能を生かすための機能アップになるのではないだろうか?

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[本田雅一, ITmedia]

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