News 2001年4月6日 10:28 PM 更新

FTTHの速さ実感。思えば,遠くまで来たものだ……(2)

 まずISPについてだが,3月末の段階でNTT東FTTH・普通メニュー対応のプロバイダはたった4社。3月下旬までは5社だったが,高負荷に耐えられず(?)1社がサービスをやめた(NTTサイトを参照)。

 友人にこれら4社のリストを示し意見を求めると,ほとんどは「ネットワーク的な接続の有利さはDION」という。しかし同社は郵送による申し込み(ほかの2社も同様)が必要だった。しかも申し込み後に初めて,一週間程度の事務手続き期間を要することが判明。待ちきれない筆者は,オンラインで手軽に契約できて,すぐに使えるISPを探し,So-netとも契約することにした。

 FTTH・普通メニューでは同時に2つのISPと同時接続が可能なので,複数ISPと契約するのは負荷分散の観点からも意味がある。契約を済ませ,早速テストしてみた。経路としては,次のようになる。

筆者宅 → FTTH → NTT地域IP網 → So-net → KDD LABのFTP

 上記の条件で,ブラウザを経由してCD-ROMイメージをftp getするテストを行った。高速な国内ミラーサイトとして名高い同サイトから,約650Mバイトの容量を一気に落とす。この時の実測速度は4.5Mbpsであった。つまり570Kバイト/秒弱という計算になる。この速度だと1枚のCD-ROMイメージをダウンロードするのに20分も掛からずに終わる。これは劇的な速さだ。

 速さを実感するために分かりやすい例を挙げる。CD-ROMの基本転送速度は150Kバイト/秒だ。これを等倍速と呼ぶ。4倍速CDでは600Kバイト/秒。つまり光の速さは,4倍速CD-Rでこのイメージ・ファイルをCD-Rに焼き付ける時間と,ほぼ同じということ。思えば,遠くまで来たものだ……。

 この時,ISPがDIONだったならば,同社はKDDI系ゆえにKDD LABへはネットワーク的に近く,更に高速になっただろうし,ひいてはほかへの迷惑も少ないと予想される。それ以外にもAsahi-netをISPとして選択する道もある。同社FTPサイトも海外のミラーサイトとして有名だからだ。FTTHの高速さを生かすためには,目的に応じてISPを選択することが更に重要となってくる。

 考えてみれば1年近く前から筆者が契約しているNTTのADSL接続サービス(下り512Kbps)だと,同様の作業に3時間ちょっとが必要だった。それでもOCNエコノミー(128Kbps)を契約している人が「混んでると一日かかっても終わらないことも」と書いているのを見ると,ADSLは天国だと感じたものだ。それが光ならば20分で終わってしまう。

今すぐここに

 インターネット利用者にはそれぞれの利用法があるだろう。ある人はメールとWebしか使わないかもしれない。またある人は,どんなに速くなってもストリーム系は利用しないと明言する。VoIPで電話替わりが主な用途の人もいる。筆者のようにPC UNIXのCD-ROMイメージを毎週のようにGETしている者もいる。

 さまざまな要望があるのだから,さまざまなサービスが全国で必要だ。筆者はたまたま運がよく,この場所に住んでいたから,先んじて光ファイバーを安価に敷設できた。だけど必要なのは,全国どこにいても速度と値段に応じた適切な回線の選択が可能になることだ。高速な環境を本当に必要としている人は全人口の数%だとしても,その中から,誰もが想像もしていなかったサービスをインターネット上に提供する人間が,どこからともなく立ち現れる。振り返ればそういうものだ。例えば,今では誰もが知っている,Webや「Napster」「Gnutella」のように。

 高速なネットワーク環境の中では「高速さを生かしたビデオ・コンテンツの充実」が必要だと浮かれたように誰もがいう。しかし,実はコンテンツなるものはビデオの垂れ流しだけではない。常時接続・高速ネットワーク環境の充実こそが先なのであり,高速環境が一般化された中から自然に育ってくる「サービス」こそが重要だ。そのためにも,無目的といわれても,とにかく高速ネットワーク環境の整備が必要だ。問題はその後に,自然に解決することは歴史が教えている。Webがない時代にHTMLを作った人間の意図は,暴論以外の何モノでもなかった。井戸を掘った人間を越えて育つ,次の世代を迎えるためにも,今すぐここに,高速環境の整備が必要だ。

特色あるISPの出現を

 現在はまだ,FTTHに対応したISPの絶対数は少ない。ISPの上流回線を圧迫することが必至だからだ。FTTH以外のユーザーに迷惑を掛けることを憂慮するむきもある。だったらFTTHに対応しないISPも当然あっていい。遅いならば遅いで,それぞれの特徴を出していけばいいからだ。ストリーム系コンテンツをそろえることが高速時代のISPではない。

 それよりも,フレッツISDN/ADSLなどでよく見かける「固定IPアドレス」を提供するISPが現状では皆無なことが残念だ。固定IPアドレスはVoIPに必要だし,DNSサーバ構築には必須だ。そうじゃないと高速さを生かし切れないこともある。固定IPアドレス提供だけでなく,未来のために色々な特徴を打ち出すISPの出現を強く望む。

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