News | 2001年4月26日 11:59 PM 更新 |
先日,マイクロソフトはWindows XP日本語版のベータ2の出荷を発表した。日本語版ベータ2のビルド番号である「2462」は,WinHEC 2001で配布された英語版と同じもので,先月の終わりに完成し,今月の13日からMSDN(Microsoft Developer Network)会員向けのサーバからダウンロード可能になっていた。
ベータ2の速報レビューは,WinHEC期間中にお伝えしたが,ざっとエンドユーザー向けの機能をリストアップしただけでも,次のような項目が思い浮かぶ。
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Windows XPのホワイトペーパーを眺めると,ほかにも多くの改良が行われているようだが,ざっと使ってみて良くなったと感じる部分だけでも,これだけある。
これらについては,英語版を元にした記事で既に明らかになっているので,ここでは日本語対応に関してレポートする。
英語版ベータ2の速報で,日本語フォントには「ClearType」が機能しないと書いたが,これは間違いだった。機能していないように見えるが,実際には機能している。ただし,いくつかの原因により「機能していないように見える」だけだ。
ClearTypeは,サブピクセルレンダリングと呼ばれるフォントレンダリング技術の一種で,液晶パネルでWindows上の1ピクセルと液晶パネル上の1ピクセルが1対1で対応していることを利用してフォント品質を上げる技術だ。液晶パネルでは通常,3つの液晶シャッターにRGBを割り当て,正方形の1ピクセルになるように作られている。サブピクセルレンダリングでは,ピクセル同士の境目を液晶シャッター単位でコントロールすることで,水平方向の解像度を3倍に拡張する。
類似技術には,米Adobeが「eBook Reader」に実装している「CoolType」などがあり,マイクロソフトも電子ブックリーダ向けの技術としてClearTypeを開発した。低い解像度でも美しく,かつ読みやすい文字の表現を実現するClearTypeは,PCの画面表示用フォントレンダリング技術としても使いやすい。
Windows XPのClearTypeは,これまでにも搭載されていたアンチエイリアス処理と切り替えることで動作し,“これまでフォントスムージングが行われてきた文字すべてをサブピクセルレンダリングで描画”する。ここでダブルクオートしたところが重要だ。裏返して考えれば,アンチエイリアス処理が行われない文字はClearType処理も行われない。
Windowsにバンドルされ,スクリーンフォントとして指定されているアウトラインフォントは,小さい文字でもデザインが荒れないように,ビットマップフォントも埋め込まれ,小サイズで利用されている。また,スクリーンフォントとして利用されることを意識したフォントには,特定サイズ以下ではスムージングが行われないように指定するフラグが埋め込まれていることが多い。
欧文フォントにも,小さいサイズではビットマップフォントが使われるようになっているものもあるが,Windows XPのTrueTypeフォントでは,きちんとClearTypeが働くように設定されているようだ。しかし,MS明朝やMSゴシックなどは,スムージングされない。複雑な漢字をスムージングしてしまうと,文字がボケて視認性が落ちてしまうためである。
試しに小さい文字でもスムージングがかかる日本語フォントを使うと,ClearTypeが機能していることが分かる。また,MS明朝などもサイズを大きくすれば動作を確認できるはずだ。ただし,その効果は欧文フォントと比較すると小さい。
ClearTypeは原理上,横方向の解像度しか拡張できないため,縦方向のベクトル成分が多い欧文フォントには有効性の度合いが高いが,あらゆる方向のベクトルが均等に存在する日本語フォントではその度合いが下がるため。
試しにワープロソフトなどで長体をかけ,縦長のデザインにしてみると,ClearTypeが日本語フォントでも効いていることがハッキリと分かる。しかし,字画が多く複雑なデザインであることも含め,そのままでは日本語で有効に機能させることが難しいという点を考えれば,実装されていないも同然ではあるが。
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ClearTypeは,液晶ディスプレイ上でフォントの水平解像度を3倍に拡張し,小さい文字の視認性を大幅にアップさせる |
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日本語でもClearTypeは利用できる。小さい文字でもスムージングが有効になるフォントを選んで長体をかけてみた |
こうして記事を書いている私自身,Windows XPの機能には比較的満足している。Windows 2000で不満に感じていた部分がかなり改善され,追加された機能も実用的なものが多い。メモリ消費に関しても,デスクトップPCならば(メモリ価格を考えて)それほど不満には感じていない(もっともノートPCでメモリ上限が低い場合には,満足して動作しない場合もあるだろうが)。従来のPCではなく,今現在のPC以降を支えるOSという視点で見れば,重さも致し方ないといったところか。ベータ2の段階では最低128Mバイト,快適な動作には192Mバイト以上が必要だった。
ただ,日本語版をはじめて使ったとき,あまりに画面デザインが悪いのに閉口した。なぜかスタートボタンの幅が英語版より広く,下に青い帯があったり,タスクトレイに無理に曜日表示がレイアウトされていたり……。さらに文字サイズが英語版と異なるためだろう。全体のバランスが崩れてしまっている。
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英語版と比べると文字サイズのバランスなど,デザインが今ひとつしっくりこない |
文字の違いから,英語版と同じにデザインバランスにすることが難しいのは分かる。これまでも,日本語Windowsに付きまとってきた問題であり,何年もの間,それを許容してきた。しかし,今回は歴代の日本語Windowsの中でも,かつての「Windows 3.0」(3.1ではない)に匹敵するほど英語版と日本語版の差があるように感じた。
もっとも,まだ製品版というわけではない。まだ改善される余地はあるだろう。どのような評価がフィードバックされているかは知る由もないが,この秋のリリースに向けて改善を望みたい。
なお,日本語版には存在しなかった機能を2つ紹介しておきたい。ひとつはMSN専用クライアントの「MSN Explorer」,もうひとつは「TV for Windows」の最新版だ。両者とも,以前から日本語版の開発は行われておらず,Windows XPにも同梱されないものと考えられる。
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